再会

「大変だったよね~え・・・あの時は・・・どうなるのかと・・心臓が・・口から出そうに成って・・・」美菜子がその時の事を思い出し、今又その時の緊迫した状況が、よみ返った様に興奮した表情で、話始めた。

「そうよ・・わたしは・・鉛を飲まされた様で 何も喉を通るら無かったもの・・・・!」

それは、噂の元である美菜子の頼みを、聞き入れた事からあの騒動が始まった。

「彩子先生・・・お願いが有ります・・・・」思いつめた様に、美菜子が口を開いた。
「な~にィ~・・・真剣な顔・・・そんなに重要な願いなの・・・?」
「・・・・・」次の言葉をためらっているのだろう、どんな願いなのか、何の願いなのか、彩子を苛つかせる程何時も、ハッキリ言う美菜子らしくない。
「なァ~に・・あなたらしく無いわね~・・・どうしたの・・・話してみなさい・・・・・・」
「そんなに 言い難い願いなの・・・?・・・言えない 程の事なら・・・最初から聞かない事にするわ・・・!」
彩子の性分から言い出せ無い願なら、聞くまでも無かった。
美菜子がにげきらないのは、きっと受け入れて貰えない、叱られるかもしれないとの思いが有った。

「お願いします・・・ツヨシのモデルに成ってやって下さい・・・・!!」
膝の上でスカートを両手で握りしめ、目をつぶり、怒鳴られることを覚悟しての必死の思いで頼み込んだ。
彩子の返事が返って来ない、それが驚いて返事が無いのか、怒りからか美菜子は、恐る恐る彩子の顔を見上げた。

「モデルて・・・ヌードて、言う事・・・・?」呆気無い程、彩子は冷静だった。
「でも・・・この間 拒否されたのよ・・・美菜ちゃんも 知ってるでしょう・・・?」
「自分の絵を 美菜ちゃんの絵だと言って 嘘まで付いて・・・?」
そんなに冷静に答えられるとは思わなかった、美菜子は気が抜けてしまった。

絵の勉強をしてきた彩子に取って、授業で女性のヌードは勿論、男性のヌードも、何回も繰り返し描いてきた、ヌードと言うものにそれ程特別な意識は無かった。

世に出ている有名画家は勿論、絵を描く事を趣味にしている者、その殆どとは言え無いものの描きたいと思うテーマの一つには違いは無い、それは二千年の昔からの永遠も美のテーマでもある筈、そう彩子は思っている。
それ程、抵抗の有る事では無かった。
それよりも、ツヨシの絵を見た時、これ程の絵を納得出来無いと言う、ツヨシには、納得できる絵を描いて欲しいと思うように成っていた。

それは納得のいく、彩子自身の絵を描いて欲しいと思う、気持ちと混同していたのかも知れない。
彩子はそんな思いが湧いて繰る度に心の中で「ツヨシの才能を伸ばしてやりたい」のだと、打ち消していた。

「一度 ツヨシ君と話をしてみるわ・・・純粋にヌードを描きたいのか・・・?」
「でも・・・?・・美菜ちゃん・・大丈夫なの・・?」
「ど・・どう言う・・い・・?・・意味ですか・・・・!!」
「ツヨシ君が・・・わたしの・・ヌードを描いても・・・??・・」
「別に・・・ただ・・ツヨシには 絵を描く事しか取り柄が無いから・・・幼稚園の頃のあの楽しそうに絵を描く、ツヨシに  戻って欲しい・・・ただそれだけです・・・」美菜子の本心だった。
「取り得が無いは・・!!・・言い過ぎじゃ~あ・・無いの・・・!!」彩子は、その言葉に対し、なぜか面白くは無かった。
「そう・・じゃ~・・ツヨシ君と美菜ちゃんの間には 男と女と言う感情は無いと言うことね・・?」
「男と女と言う・・・?・・感情か~ァ・・・?・・・無いです・・・?・・無い・・」
当時の会話を、昨日の事の様に、思い出していた。

彩子に取っても、ツヨシの絵い対する才能を感じている、しかも年下の高校生で有る。
その才能を、伸ばしたい、その思いは、確かに強いものだった、そして、日に日にその思いは、強く増していた。

「今に成ったら 何故あんなに 一生懸命だったのか解らないけど・・?・・」美菜子が首を傾げた。
「ママ・・・本当にツヨシ・・・の事・・何とも思って居なかったの・・・??」実花が問いかけた。
「実花・・・あなたが・・ツヨシは・・・駄目よ・・・」
「だって・・・話の流れから わたしだけが・・ツヨシさんは・・変でしょう・・?」
「変じゃ無いわ・・・??・・年上で祖かも未だ有った事も無い人なんだから・・・?」
美菜子は、そう言いながら、初めてリビングの壁に掛けてある、 ” 白いブラウスを着た ビーナス ” に目が止まった。

「あの~・・・?・・・あの絵は あの時の ツヨシノ絵・・・?では・・・・何故・・?・・此処に・・・?」
話に夢中だったのだろう、とっくに気が付いて居ると思われたが、今気が付いたらしい。
「ママ・・・?・・鈍いね~・・!・・彩子先生の 旦那さんが描いた絵・・・と言う事は・・・・?」
「エ~エッ・・・!・・じゃ~ァ・・・ツヨシが彩子先生の・・・・?」
「美奈ちゃん・・・ごめんね・・・」
「ごめんね・・・て・・?・・意味が解らないけど・・・・?」
「ママ・・・本当にツヨシの事 何とも思って無かったの・・・?」
「そうよ・・・パパと出会った時と 全然と違ったもの・・・ドキドキ感て・・・言うか・・・・??・・」
「毎日・・会いたい・・今 合いたい・・そんな思いは ツヨシには感じなかった 其処にいて当たり前・・見たいな・?」
「実花ちゃん・・?・・ボーイフレンド居るの・・・?」
「居るの~ォ・・?・・は・・失礼ですよ・・・アイドルの様な可愛い・・実花に対して・・・!・・」
「アイドルの様に・・可愛いて・・・・?」彩子が、茶目っ気タップリの意地悪そうな顔をして、問い変えした。
「でも~・・?・・実花ちゃん・・ママにそっくりよ・・・?・・・」イタズラぽく付け加えた。
「・・・??・・どういう意味ですか・・・??・・ママに似て・・て・・・?・・・」
「そうですよ・・・!・・わたしに似ていたら・・可愛く無い見たいじゃ無いですか・・・・」
「まあまあ・・二人とも・・可愛いと言う事よ・・・!・・」

「あれから直ぐに 彩子先生は 学校を辞めたし・・・ツヨシも止めると言い出すし・・!・・大変だった・・!!」
それから、彩子は、絵画教室を始めた。
ツヨシは、その絵画教室を手伝いながら、神河 龍三郎の弟子と成った。
彩子が駅前で、絵画教室生徒募集のビラを配っている処に、突然現れ無言で彩子の持つビラを取り、配り始めたと言う事だった。

「又 いい加減な事を言って 配ったのでは・・?・・得意の・・・募集詐欺・・・!」
「いいえ・・・真面目に配っていたわ・・・ペコペコ頭を下げて・・感動しちゃったもの・・・・!」
「・・・へ~ぇ・・・それで・・・?」実花がわかった様な顔をして、頷いていた。
「真面目に・・・ツヨシはホントにいい加減ですよ・・・あの時・・会議室を出た途端・・ ” 裸の王様 作戦成功 ” て  言ったんですから・・・・・?」
「裸の王様作戦 成功・・・?・・でも・・その通りの結果だったわね~ぇ・・・神河先生のお蔭・・・かな・・?」
「ツヨシは わたし達があんなに心配しているのに・・・・おとぎ話で乗り切れる・・・その発想がバカなのよ・・・!」
「・・・失礼ね・・・わたしの・・・ダンナを・・バカ呼ばわり・・・・?」
「・・・ごめんなさい・・・つい・・・!!!」こんな事を、言われている事は、ツヨシは夢にも思っていないだろう。
「もういちいち 引っかかるのは 辞めましょう・・・疲れるわ~ァ・・・・!」

「メガネ君・・・今 どうしているのかしら・・・・?」
「美奈ちゃん・・・メガネ君なら 推理作家に成るんだって 頑張ってるわ・・・!・・」
「時々 ダンナのスケッチ旅行に付いて言ってるわ・・・!」
「・・推理作家か・・・?もしかしたら 売れない画家とその助手が難事件を解決する・・?そんな 小説が出るかも・」 実花が真面目な顔をしてそう言うと、彩子も美菜子も大笑いをしながら。
「ちょっと・・・売れない画家て・・・ダンナの事・・・失礼ね・・・実花ちゃん・・・」
「いちいち引っかからない様に・・と・・言ったには 彩子先生ですよ・・・・」
「でも・・・あの二人の方が 事件を起こしそうね~エ・・・・ハッハッハ・・・」
「納得・・ナットク・・・・!!」
「きっと二人とも・・・くしゃみしているかも・・・・ハッハッハ・・」

「ツヨシ・・帰って来るのですか・・・?・・携帯電話持ってるんでしょう・・・?」
「持ってるけど・・・?・・電源切ってるのよ・・ダンナから用事が有れば かかって来るけど・・・?」
「・・・それが・・・芸術家・・と言う者か・・・・?・・・ママなら 耐えられないわね~・・・?」
「・・・そう・・・愛しているからね・・・・?」
「そうじゃ無くて・・・絵を描いている時・・邪魔されたく無い・・と言う事よ・・・集中している時に・・?」
「・・そうよ・・・逆に愛しているから・・そっとしておきたいのよ~ヨ・・・」
「ママは 愛していると言うよりも・・・干渉しすぎなのよ・・・?」
「・・ま・・・そういう愛の形も・・・有ると言う事ね・・・?」
「・・ま・・そういう事で・・・・!!」

そんな話に夢中に成っている時。
「・・・オオイ~・・・帰ったぞ・・・・」玄関で声がした。
「・・・入れよ・・・」どうやら、お客の様である。
「・・・かぎも掛けないで・・物騒ですよ・・先輩・・・?」
「相変らず君は 固いね~ぇ・・・」
「固い・・・柔らかいお問題じゃ~・・無くて・・・おお~ォ・・・推理小説に出て来そうな・・小さな可愛い洋館・・   ですか~ァ・・」

そんな、話声と、足音が近づいてくる。
   ” ガチャ ” ドアノブあ、回る音がした。
       
            おしまい


元野 敏
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