02：『初夜』

　俺は一日たりとも、あの日の事を忘れた事は無い。
　たとえ忘れていたとしても、一日の終わりに必ず思い出す。
　俺には夜が訪れないのだから、嫌でも思い出してしまう。
　まぁ、俺が承諾した事だからしょうがないのだが...
　それより、あの血だらけの男が言ってた『時が来たら』とは、何時その時が来るんだよ。


　俺には夜が来ない。正確には、夜を知らないと言った方がいいのだろうか？
　夜が来る前に、俺は眠りに落ちてしまう。家族曰く、俺は一度寝ると熟睡していて何があっても絶対に起きないという。
　全く意味が分からない限りだ。寝てる時に大きな地震でもあったら、俺は死んでしまうじゃあないか...
　まさか家族に、寝てる俺を担いで逃げてくれなんて言えないし...
　まぁ、そんな事はどうでもいいか。
　
　でも、この体に色々と疑問は有る。
　何をしていても気づくとベットで朝を迎えている。宿題をしていようと、外に居ようと、気づけば朝だ。
　しかも、ちゃんとやることはやっているんだ。全くこの体は何だっていうんだよ。
　まぁ、やることはやってあるから、宿題とかに関しては便利な限りである。
　だから俺は、部活にも入らずに学校が終わったら家まで直行する。友達ともほとんど外で遊んだ事は無い。
　部活なんて面倒くさいから、こんな体じゃあなくとも入ってはいなかっただろうが...

　今日も家まで直進コース。俺はこの体のお陰なのか、超が付くほど規則正しいのである。
　起床し、身支度を済まして朝食。その後は登校。
　学校が終わると、学校の近くに有る文房具店の前に居る猫を眺めて（これはどうでも良い）家まで直進。家に着くなり入浴を先に済まし夕食を取り、歯を磨き部屋に戻り、宿題に手を付けたり付けなかったり（やらなくても朝には終わっているから）後はテレビを少々見て寝る!!

　どうだ!!　これが俺の一日だ!!　the普通!!

　まぁ、こんな規則正しい高校生なんて何処にいるだろうか。ってのは強がりで、本当はもうちょっと遊びたいんだが...まっ、しょうがのない事ですよ。何度も言いますがこの私には夜というものが無いのですから。

　っと、今日も規則正しく一日が終わろうとしていますよ。
　では皆さんおやすみなさい（zzZZ）


​......ん？　......何事？　......揺れてる？　......床が？
......床じゃ......

　ない!! 俺だ!! 俺が揺れてる!!
　
　なっ何なんだここは?!　夜ですか?!　ねぇ、これが夜というやつですか?!
　真暗で何も見えないのですが!!

　とりあえず電気電気!! って?! えーー?!
お前誰だよ?!

　初めての夜という体験。
　そして、俺の横で寝ている小動物の様な女の子。

　そうか...これが初夜というやつか。

　って!! じゃなくて!! この状況はなんなんですか?!

　「おい!! お前!! お・き・ろ!! つーかお前誰だよ!! 何でこんな所で寝てんだよ!! おーい」

　「んんー？ お休みなさい」

　「お休みじゃ無ーーい!! 起きろ!! お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・す!! 」
　
　「本当に何なの灯夜？　寝てんだから起こさないでよ」

　ちょっと待てよ!!　こいつ今、灯夜って言ったよな?!　何でこいつが俺の名前を知ってるんだ?!

　「おい!!　お前は何で俺の事知ってんだよ？」

　「何でって...灯夜どうしたの？　いっつも一緒に居るじゃん」

　「待てよ!!　俺がお前といつも一緒だと?!　待て待て待ってくれ!!　お前は誰だ？　誰なんだ?!」

　「誰って...水瀬 美月(みなせ みつき) だよ。どうしたの灯夜？　急に騒ぎ出してさ」

　「水瀬？　美月？　はぁ？　誰だよ?!」

　「灯夜酷いよ!! 私を忘れるなて!! 今日の仕事は終わったんだからもう寝ようよ」

　「仕事？　何の事だよ?!」

　「ん?!　今は何時なの?!　2時32分!! えっ?! 灯夜なんで起きてるの?! もっもしかして、その時が来たって事なの?!　灯夜?!」

　「だから何の事だよ?!」

　「やばい!! どうしようどうしよう」
　
　こいつ何言ってんだよ？
　
　ってまさかその時って？ あの男の言っていた...

　と、いう事は...この小動物みたいな女...あいつの娘なのか?!