第三章:空の書、理の書――7

          ☆  ☆  ☆

 この後に及んで何を言うか。
 心内を正直に言葉に認めたら、その一文となるだろう。

「テロ活動をしていない? アンタたち、ちゃんとファレグ隊に牙を剥いていたじゃないか。サラマンダーの力を借りて」

 だから、政は正直に吐露した。
 あのとき、自分たちが〝改竄詠唱〟を発動しなければ、確実に彼らはファレグ隊を撃ち落としていたのだから。

「そりゃあ、そうだろう。あいつら、コール・ファレグ・アームズを複数ぶっ放そうとしたんだぞ? 牽制でもしなけりゃ闘志は萎えねえよ」

 頭をガシガシと掻きむしり、鬱陶しげに哲也が言う。

 ……それは、確かに……。

 同意できる。もちろん、争いを肯定はできないが、戦略兵器にも親しい武装を対人戦に持ち込んだのだ。
 事実、こちらがまず止めようと決めたのは、ファレグ隊の方だし、彼らの並々ならぬ戦意は、肉弾戦に持ち込もうとした執念からも、伝わっている。
 自分自身、肌で感じたのだから。

「それはともかくだ。発端となったテロ。あれに、俺たちは加わってねえ」

 件のテロとは、三番地の火災のことだ。人伝に聞いたことだが、噂になるくらいだから、結構な規模だったのだろう。

「つっても、信じてくれって方が難しいのかも知れねえ。フィロの空の書を用いれば、放火も逃走も容易だからな。……だが、言っとく。俺たちがやったってのは、完全なるデマだ」
「あたしたちは、普通に過ごしていただけ。……信じて」

 哲也の弁明を補強するように、フィロも小声で訴えかけてくる。
 彼女の声色には、どこか幼さが残っていて、擁護したくなる響きを持っていた。

「でも、悪いんだが、オレには理由が見えてしまうんだ。哲也、アンタは魔導司書の保護団体に属してるんだろ?」

 ならば、テロ活動も正当化できるのではないだろうか?
 魔導司書は追われる存在で、保護団体と言うことは、その実状を変えたいから存在している筈だ。

「テロならば、世間に声高に訴えかけることが可能。そんな意見か? まあ妥当だろうな。ただし、重大な勘違いが含まれてんぞ?」
 そもそも、
「保護団体は、魔導司書を匿うために活動してんだ。良いか? ここ重要だぞ? で尋ね返すが、テロ活動は妥当な手段か?」

 哲也の台詞は全うで、何時の間にか自分の中にあった、既成概念と名付けられたメッキが剥がれるようだった。

 彼らに取って、テロ活動はデメリットだ。そう気付いたから。

「そんな訳ねえよな? だろ? 魔導司書の存在を知られたくねえから、活動してんだ。テロなんか起こしてみろ。私たち、魔導司書ですって、主張しているみてえじゃねえか」
「だが、報復って考えはないか?」

 理屈では、利点などない。が、人間は感情の生き物だ。これまで追われ続けて、我慢が限界に達したと言う……

「それは、あり得ませんよ。政」

 答えたのは、同じ立場であるドグマだった。

「ワタシたちは、古来より狙われ続けた存在です。だから、追われ続けるなんて日常茶飯事なんですよ。今更、波風立ててもリスクにしかなりません」

 彼女が言うなら、一般人の自分は否定できない。魔導司書である、ドグマの生の声なのだから。

 ならば、残るただ一つの疑問は、

「じゃあ、テロリストは別にいるってことか?」
「いや、それなら、まだ生易しくて助かるんだが、事情はもっと複雑で、問題はもっと難解だ。――黒幕さんはな? 俺たちをテロリストに仕立て上げることが目的なんだよ」

blackletter
グループ名

blackletter

作者

虹元喜多朗

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