雨の降る日に
今思えば、彼女はあのとき既に死を予見していたのかもしれない。だからこそさみしげな笑顔を見せて、初めて俺を褒めた。それに対して俺は彼女に何もしてやれなかった。一緒に死ぬこともできなかった。今もこうして彼女に褒められた煙草を吹かしている。いつ撮ったか忘れた写真もずっと傍にある。彼女は俺の全てだった。良くも悪くもそうだったと思う。ただ、あのとき食事に誘っていなかったら今でも学校に行っていたかもしれない。
全てはあるがままに。
煙草の最後の灰が崩れた。
長い夢だった気がしたが、煙草一本吸い終わる時間のことだったらしい。
置かれた写真を見て、少し口角を上げると、俺は煙草を灰皿で押し潰した。