空は青く澄み渡り、雲ひとつない快晴。車窓から見る光景は、あっという間に変化していく。

 私は列車に乗っている。私のいる車両は、様々な年齢の人たちがいたが、その中でも若者が一番多かった。その次に老人、中年、といった感じだ。子供はあまり乗っていなかった。全員自国人のようだ。

 列車は出発してからいくつかの駅を通過していった。その途中で、ゆっくりと進んでいた区域もあれば、速く通り抜けた区域もあった。もう数駅通過すれば終点だ。今は早く着きたいのだろう。運転手も焦っているのか、今のスピードは今までで一番速い。

 やがて、一つ駅を通過して高架に入った。列車の行く手を阻む踏み切りは終点までもう一つもない。停まる駅もカーブも、もうない。列車は追い上げるようにスピードを上げていく。随分と急ぐものだと、私は思った。

 終点の一つ前の駅を通過する直前で、ふと列車が速さをだんだんと落としていき、終いには止まってしまった。何だろう、何がおこったのかと、乗客がざわめく。私は、運転席まで行ってみた。すると、何だ、そういうことか。運転手がこと切れているではないか。道理で列車が止まるわけだ。

 私は乗客にわけを説明した。すると、自分ならば運転ができると、名乗り出る者が一人いた。だが、私の元に行く過程で、人々に押し潰されて、とうとう私にたどり着くことができなかった。

 暫くして、乗客の一部が、ツルハシやら何やらを持ち出した。何をするのかと思ったら、彼らは列車を破壊し始めた。それに動かされて、乗客が次々に列車の破壊を始めた。私や何人かの人が、止めるように呼びかけたが、まるで意味はなかった。天井が崩された。空は、いつの間にか真っ黒になっていた。周りの景色を見てみると、列車が止まった時から動いていないはずなのに、別の風景に見えてならなかった。

 やがて、列車が車輪まで破壊し尽くされたとき、私は列車に手をかけた人々の姿を見て、愕然となった。彼らは、私の国の人によく似た、全く異なる国の人々だったのだ。

黒井稲妻
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黒井稲妻

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