「ぶぉ」
学校にいく途中に、硬い何かに跳ね飛ばされて地面を転がる。
「すいません」
可愛らしい女の子の声がするが、今は全身に走る痛みでそれどころではなかった。
「すいません」
それでも女の子は声をかけてくる、もしかしたらこの女の子がぶつかったのかもと一瞬思ったが、いくら男子高生にしては小柄な僕とはいえ、女の子が飛ばす事はできないだろう。
「すいません、いま無様な声をあげて悶絶しているチビで幸薄いそこの方」
えっ なんで悪口言われないといけないの?
「あっ やっとこっち向いてくれました」
可愛らしい声の女の子は、人形の様に切り揃えているかの様な髪、整った顔のパーツがバランスよく配置されていた、痛みを忘れ息を飲むような造形で有ったが、それすらも些細な事で右腕が半分なかったのだ。
「ロケットパンチした右腕が見当たらないのですが知りませんか?」
どうやら、先程までの痛みの原因は、信じ難いことに彼女のロケットパンチが原因らしい。
彼女は僕の近くに転がっていた自分の右腕を拾い右腕を装着した、どうやら本当にロボットのようだ。
「僕に当たったんだけど それ」
「よし 命中」
なんでガッツポーズしているんだよ、謝るとかあるだろう。
「危ないだろ、下手したら死んじゃうぞ」
「その場合、揉み消します」
こわっ 何その考え、もう関わらずに学校に行こう、まったく酷い目にあった。
「えいっ」
可愛らしい声が背後から聞こえた途端に、また背中への衝撃とともに転がった。
「よし 命中」
「今明らかに狙ったでしょ」
痛む背中の元凶となった彼女を睨みつけるが、彼女は気にもとめずに右腕を付け直しながら答えている。
「はい」
「なんで狙ったのさ」
「口封じです」
一目散に逃げ出した、わき目もふらずダッシュで、逃げようとしたが、ロケットパンチを振り切ることが出来ずに、また当たってしまう。
痛みに悶えていると彼女は鼻歌でも歌っているかのようにゆったりとゆっくりと近づいてくる。
「逃げないで下さいよ」
「喋ったりしないから、君がロボットとか喋ったりしないから許してください」
「口封じは冗談です」
「本当に?」
「えぇ ロケットパンチを当てたのはコミニケーションの一種です」
「はははっ」
随分と斬新なコミニケーションだ、かわいた笑い声しか出てこない。
「自己紹介をしましょう、私はとある会社が極秘に開発した、もてない男共の救済措置のため作られたコミニケーション用ロボットのロボ子です」
「あぁええと、僕の名前は」
自己紹介しようとすると、ロボ子は心配無用とばかりにクビを振って静止した。
「大丈夫です、貴方の名前を覚える容量が勿体無いので此方でモルモットと登録しました」
「それは明らかに実験体としかみてないね」
「まぁ細かいこと気にしてはハゲますよ」
さっきコミニケーション用ロボットとか言っていたクセに人の話を聞く気は無いようだ。
「実は実験に協力をしてほしいのです」
そういいながら確実に腕をこちらに向けてきている。
「わかった、協力するからロケットパンチを打とうとするのはやめて」
こうして強制的にロボ子の実験に協力することになり、僕は学校を休むことになった。
「それではデータをとるためデートをしましょう」
「わかった」
「初デートが無機物って悲しくないですか?」
おい、 勝手に初デートと決めつけないでほしいが、事実上これが僕の初デートとなると思うと物悲しい。
「減点です。」
ロボ子は急にロケットパンチを飛ばし、僕はまた吹っ飛ばされた。
「そこは、彼氏なら可愛いロボ子とデートが出来て嬉しいとかあるでしょう、優しさが足りません」
「君もね」
どこの世界にロケットパンチでデート中に彼氏を吹っ飛ばす彼女がいるんだよ。
「じゃあ次は手を繋ぎます」
「わかったよ」
手の温もりはやはりない、普通に彼女を見る限り人間にしか見えないのだが、身体の作りは似せてもロボットなんだ。
「胸小さいですから流石にミサイルは出ませんよ」
「そんなこと微塵も考えていないから」
あと、大きかったらミサイル搭載してるみたいな言い方やめてね、普通ロケットパンチとか胸からミサイルでる彼女なんていないから。
「減点です 私は胸が小さい事とミサイル搭載していないことに悩んでいるんですからフォローしてください」
「前半はともかく後半はどうフォローしろというのさ」
「婚約したら立派なミサイル買ってあげるねとかですかね」
減点対象の行動をとる度に、容赦ないロケットパンチが飛んできては吹っ飛びを繰り返していきながらもデートは続いていった。
「これで、大分データが集まりました」
「そう それは良かったね」
何度もロケットパンチの痛みに耐えたかいがあると言うものだ。
「最後はキスして終了ですよ」
「えっ」
「やっぱり、ロボットとはファーストキスはイヤですか?」
「いや そうじゃなくて、やっぱり恥ずかしいというか」
見た目は可愛いい女の子の姿をしている、例えロボットとわかっていても、恥ずかしさと妙な抵抗感がでてしまう。
流されるままに今日一日付き合ってきたけど、このまましてはいけないという思いがまだ僕の中に残っている。
「やれやれ、しょうがないですね」
「ちょ」
彼女のほうからキスをしてくるとは思っておらずビックリしてほうけていると、今日一日の中で一番のロケットパンチが飛んできた。
「やれやれ減点です、女の子のほうからさせるなんてダメですね」
ロボ子は落ちている右腕を拾い上げ再び装着する。
「そうだね 次からは気をつけるよ」
「えいっ」
もう一発再度ロケットパンチが僕に当たる。
「いまのは、照れ隠しですよ それじゃあ次楽しみにしておきます」
あぁ うん次ね 本当に何を思って口走ったのか、ロボ子がまぁ嬉しそうだったしまぁいいか。
それから数ヶ月後ロケットパンチを浴びながらもロボ子と付き合うことになった。
「ところで、胸からミサイルはいつになれば可能になりますか」
「勘弁してください」
「甲斐性なしですね、減点です」
今日もロケットパンチは僕に向かって飛んでくる。
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