誰もいない、車も通らない道の横断歩道を歩いているとまるでこの時間が自分だけのような気になる。
王様のように堂々とあるいったっていいし、忍者のようにひっそりと歩いても誰にも文句はいわれない。
「何をしているの高田」
「あぁ水村」
でも実際は堂々とわたろうが、ひっそりと渡っていようが時間は自分だけのものではなく、誰もかれもこの時間を過ごしているという事だ。
「コンビ二に立ち読みに行くところ」
「好きだねぇコンビ二」
「水村は塾が好きだねぇ」
隣の家のそのまた隣、さらに数軒すぎてもう一つオマケの家に住んでいるご近所で同い年の水村は、昨今の受験戦争と言う名の大事な大事なイベントのために高校1年生だというのに準備に余念がない。
もっといえば、今通っている近隣でも有数の進学校に進むために中学1年から準備している。
これが将来を見据えるということなのだろうか、同じ高校生として見習うべきところだろう。
「コンビ二って何か面白いのあるの」
「面白いものは少ないけど、時間はつぶせるよ」
「勉強すればいいのに」
「いやぁ面白い冗談もいえるなぁ水村は」
勉強の面白さが分からないのに、時間をつぶすだけのために勉強するなんて片腹痛いというものだろう。
「そう?楽しいよ勉強」
「それはできる奴の台詞だな」
「私勉強できるし」
「うん、そうだった」
コンビニに近付けば近付くほど足は重くなり、歩く速度は遅くなるような気がしてくるが、水村が先にたつということはないので本当に気のせいなのだろう。
「水村もコンビニ寄る?」
すこしだけ間があったが、水村は首をふる。
「ううん帰るよ」
「そっか送ろうか?」
「悪いよ」
コンビニにつく頃には水村と二人きりであるいた夜道も終る。
いつも夜道で会ったときに繰り返される会話、それ以上たずねるのもなにか違うような気がするのでそれ以上も聞けず、水村もじゃあねというだけで帰っていた。
コンビニの前に突っ立っているのも変なので、コンビニの中へと入り目当てのコンビニの雑誌をぺらぺらとめくりながら、時間をつぶしたあと炭酸飲料をかって自分の家へと帰ろうとコンビニをでる。
ふとケイタイの時計をみると水村と別れて数分もたっていない事に気づく、水村の家の方向みる。
走れば、いや走らなくても早足でいけば水村に追いつけるかもしれない。
ただ追いついたところでかける言葉などおもいつくはずもなく、そう考えたことで一層寂しさがこみ上げてくる。
その寂しさを流し込むように炭酸を飲み、来た道を一人夜道を帰る。
コンビニの光りが遠くなり、水村の影も遠くなるが、また誰も通らないような夜の道で水村と並んで歩ける時間は明日もあさってもとりあえずは続くのだから。
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