今はいつなのか、と考えることはいつごろからやめただろうか。
治らない病気だと直接言われたわけではないが、治らないことは昔から分かっていた。
毎日同じ時間に看護師に起こされ、毎日似たような食事を摂り、毎日ほとんど同じ時間に診察し、毎日同じ医者の諦めた顔を見て、また毎日同じ時間に眠る。
私はいつからロボットになってしまったのか、そんなことを少し前までは思っていた。
しかし、今はなにも考えない。思考を放棄し、ただ毎日の作業をこなしていく。
よく小説やドラマでは、なにかいいものが実はあったりするが、私に至福を与えてくれるものは生憎この病室にはなにもない。
窓はあるものの、そこから見える景色はただの荒地。
市が開拓する計画があったが、予算のオーバーによって中止となった。
今年で私は15歳になるが、学校には行ったことがないし、友達もいない。家族は稀にしか来ないから、顔はあまり覚えていない。
私は今なんのために生きているのか、自問自答をしようとしても、 答えなんてでない。
なんのために生きて、なんのために私は死ぬのか。
考える価値は皆無。最早私は税金を削るだけの鬱陶しい存在。
そんな言葉をひたすら胸に刻み込む。
なぜ、私は生まれてきたのか、最期はいつ訪れるのか。
答えはでないと分かっていても、私は探していた。
チュンチュンと、雀の鳴き声が聞こえる。
窓を見ると、雀が窓に止まってこちらを見つめる。
こんなところに何をしにきたのか、そう思いながら鼻で笑う。
差し詰め、私に最期を告げに来た死神の体現者と言ったところか。
初めて自問自答に成功した私は、バカバカしさを感じながら自分と雀を嘲笑う。
すると雀は、目的を遂げたように何処かへと飛び立った。
そして私は眠りにつき、最期が訪れるのを、雀の鳴き声が響くこの病室のベッドの上で待った。
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