「ふぁあああ! しまった!」
 間抜けな声が出た。
「出力計算エラー、照射範囲計算エラー、透過率計算エラー!!」
 どうやらしたたかに飲んだ二日酔いの頭で入力作業をしたのがよくなかったらしい。
「停止ボタン無効、目標ロックぅ?」
 『これ』は私が作った世紀の大発明、生物細胞の表面屈折率を変化させ、物質に透過性を持たせる……ぶっちゃけて言えば『透明生物作成光線装置』なのだ。
 マウスによる実験も成功を収め、昨夜は共同研究者であるミネギシと祝杯を交わしたところだった。今日はさらに大きな動物での実験を行う予定だったのだが、その前にちょっとしたいたずら心を、私はおこしてしまったのだ。
――照射範囲を限定的に狭めれば、体の一部分だけを透明にすることも可能ではないのだろうか?
 こういうときに自分の体を実験体として差し出すことすら躊躇しないのは、これはもう、実験者の性というものなので仕方ない。
 かくして私はこの照射装置に身を投じたのだが……
「らめぇぇえええええ!」
 レンゲラム光の白い光があたりに散った。
 かくして私は二日酔いの代償として、『半透明人間』に成り果てたのである。



アザとー
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