昨日と変わらぬ通学路。
こちらを見て、ひそひそと話を立てている生徒たちも、昨日と変わらない光景だ。
しかし、自分の隣にはセーラー服を身に纏い、頬を朱がさしている少女が歩を並べている。
「がっ、学園では、あたしが燐慟様を、お護りしますので、あ、安心してください」
「……………」
「何人たりとも、燐慟様には手を出させませんので」
「……………」
「ふ、ふつつか者ではありますが、この命に換えても、燐慟様をお護りし…………いひゃい!?」
その少女の頬を引っ張ると、ようやく言葉の窓を閉じたようで、手を離してやる。
「うるさいし、重い。俺の身は俺で護る。お前は自分の心配だけしていろ。ここは──戦場だ」
すると、先ほどまでの表情とはうって変わって、いつになく真面目な顔のユリ。
どうやら、理解したらしい。
「……あ、燐慟様──」
「お、リンドウじゃん。おはよう、ってその子誰?」
突然、左から声が降り注いだ。
聞き覚えのある声。
──蓮だ
そちらに視線を向ければ、悪戯を思い付いた子どものように、にやりと蓮が笑い、
「あぁ! もしかして彼女?」
馴れ馴れしく肩に手を回してくる。
「かっ、彼女だなんて、そんな……!!」
ユリが、ひきちぎれんばかりに両手をブンブンと振って否定するが、その顔は熟れたトマトのように赤い。
ちらちらとこちらを見てくるが、無視
浮かれるな、と言ったばかりであることもあり、殴りたい衝動に駆られるが何とか抑え、心のなかで、平和バカめと罵っておく。
「俺に話しかけるなと言ったはずだ」
「つれないなぁ、リンドウは」
「あの、燐慟様……こちらは……?」
「知らねェ。警察にでも通報しとけ」
まとわりつく腕を振りほどき、歩を早める。
「んだよー。お前、昨日僕が言ったこと忘れちゃったの?」
思わず、足が止まる。
根が生えたように動けなくなっていた。
振り向けないまま、近づいてくる足音をただ聞いているしかない。
また肩に手を回すと、耳元で蓮が囁くように言った。
「お前がノアの操者だってコト、父上に言ってもいいんだよ?」
状況を理解できていないユリが、そんな2人を見て慌てふためいている姿が、頭をよぎる。
いや、実際そうなのだが。
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