曙光が理想郷を照らすと言う。
後光だけが差し、姿形が見えない
その幻影の様な主人は言う。
「もう何も苦悩する必要は無い。
全ては我が名の下に解放されるのだ」
彼等は傅き、自らの心臓を明渡した。
「許しの水で、血塗れの手を洗い流して」と……。
順列に加わり、彼等は蟻に成る。
曲がりくねった足跡を指差しては嘲笑い、
順列から外れる者を切り捨てる。
ああ、顔無き主人よ。
俺は鎖に繋がれた侭で蝶を眺め続けるのならば、
痩せ扱けた野良犬で居たい。
ああ、陰無き先導者よ。
俺は貴様に与えられた美食よりも、
漁り出した残飯を選ぶ事を……。
蟻よ、自分の物でも無い荷物に押し潰されて
息絶えるが良い。
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