Ⅲ―ⅵ はじめてのみるく
「で、ですが…っ!」
彼女たちの声もむなしく、歩き続けるキュリオはひときわ美しい重厚感のある扉を軽く押しのけると振り返りもせず扉を閉めた。彼が女性を愛でる対象として見ていないのは今も昔も変わらないが、城に仕えて間もない侍女などは淡い期待や恋心を持つ者も少なくない。だが、そんな期待はすぐに意味の為さないものであることを身を以て知る事となる。
取り残された女官たちはどうすることも出来ず、心配そうに扉をただ見つめていた――――
―――キュリオは月明かりに照らされた静かな室内をみまわし、寝台から一番離れているキャンドルに小さな灯りをともす。
なるべく音を立てぬよう、そっとベッドの端に腰掛ける。
そして、己の体の重みでわずかに揺れたベッドにはっとして…慌てたように小さな赤ん坊の顔をのぞき見た。