Ⅳ―ⅶ 動き始めた感情
階段を行くキュリオは赤ん坊に余計な振動を与えぬよう、ゆっくりと足をすすめる。ふと、この広い階段を彼女がひとりで下れるようになるのはいつだろう…と、思い描いている自分に驚いた。
「…一体私はどうしてしまったんだ?」
ミルクをあげ、胸に抱くことに幸せを感じ…共にひとつの景色を見たいと願う。
そして彼女の成長した姿を想像し、隣で微笑んでいる己の姿を容易に想像できる。
そんなことを考えているうちに、月の光が燦々(さんさん)と降り注ぐ中庭に面した通路にたどりつく。
ここからでも見える色彩豊かな花の園。それらを囲むのは淡く輝く悠久の城。見事なコントラストはまるで額縁に飾られている絵画のようだ。そして穏やかな風が吹けば優しい花の香りと花びらが舞い、悠久の地を駆け抜ける。