合理的な博士
山林の奥には深々と小さな家が一軒建っていた。
小家の中には更に地下室があり、そこは小鳥の鳴き声すら通さないほど
静まり返っていた。
その地下室の中にはN博士が黙々と実験を重ねていた。
ある日の事、博士はコーヒーを飲みながら独り言を呟いていた。
「この世の生物と言う者は全く合理的じゃない。恋愛という下らない事をしている暇があるのならば、その時間を一分でも多く勉強や労働に費やせば良い。
結婚なんてもってのほか、最終的にお互いが醜くなり下らない生涯を過ごすだけ、子供が欲しいのなら適当に子作りだけをしていれば良いだけの事。アナログがなんだ、下らん、この世は合理的である事だけが正しい、合理性こそ全てなのだ!」
コーヒーを一杯飲み干したところで、N博士はある理論を形成した。
「そもそも生物が存在する事自体が合理的じゃないのだ、つまりこの世の生物を全てロボットへと取り替えれば良いではないか!」
博士は設計図を書き出し、研究に取り組んだ。
そして二年が経ったある日、とうとう一体のロボットが完成された。
「出来た…出来たぞ!これこそが私の理想としていたロボット。
こいつはロボットでありながらもロボットを作り上げる、こいつさえいればやがて人類は支配され、地球の生物全てがロボットへと取り替えられるはずだ!」
N博士はにんまりと笑いながらロボットのスイッチへと手を付けた、スイッチを入れ、ロボットはガタガタと動き出す。
「さあ!お前は私よりも合理的だ!ロボットを作り上げ、全生物をロボットへ取り替えるのだ!」
スイッチを入れ、ロボットはガタガタと動き出す。
「ワカリマシタエヌハカセ、イノママニ…」
ロボットは金づちを持ち運び、博士の元へと向かう。
「寄せ!私は殺さないように作ったはずだ、私が不良品を作ったとでも言うのか」
ロボットはただ黙々と、金づちで博士の頭を叩き続けた。
三年の月日が経ち、人類は全て滅び、あちこちがロボットだらけになっていた。
そして山林の奥にある小家の地下には二体のロボットが黙々と研究に励んでいた。
その一体はかつてのN博士とは一変し、全身が全て機械で構成されていた。
「ゴウリテキコソスベテ…ゴウリテキコソスベテ…」
N博士には意思などなく、ただ黙々と合理性に従いロボットを作り続けている。
「エヌハカセ…キョウデジンルイハ…スベテロボットヘトトリカエラレマシタ。
コノヨノセイブツヲスベテロボットへトリカエル…ソレガモットモゴウリテキニ…ロボットヲツクルコトナコトノデス…」