元気溌剌
 田辺紀香はいつも元気がいい、大学の講義もアルバイトも家に帰っても友達と遊ぶ時もだ。
 元気がいい、それでバイト先のコンビニの店長は彼女に尋ねた。
「いつも元気がいいね」
「健康には自信があります」
「どうしてそんなにいつも元気なのかな」
 尋ねたのはこのことだった。
「一体」
「はい、まずは毎朝走って」
「身体を動かしてるんだ」
「それでシャワーを浴びて」
 ランニングの後でというのだ。
「一日をはじめています」
「そうしているんだ」
「五時に起きて」
 毎朝というのだ。
「まずは準備体操をして」
「走ってだね」
「シャワーも浴びて」
「一日をはじめているんだ」
「そうしています」
「それだけかい?」
 店長は紀香の朝を聞いてから彼女にさらに尋ねた。
「それだけで毎日元気なのかい?」
「あとはちゃんと寝てちゃんと食べる」
「三食だね」
「はい、朝昼晩しっかりと」
 このことも話した。
「そうしてます」
「成程ね、しっかりとした生活だね」
「いつもそうしています」
「それでそんなに健康なのかな」
「そうだと思います」 
 紀香は店長に笑顔で話した。
「私としましては」
「そうなんだ。ただね」
「ただ?」
「それにしても元気だね」
 日常の生活だけが理由でないというのだ。
「もっと理由がありそうだ」
「いえ、別に」
「ないんだ」
「はい、私としましては」
「そうなんだ」
「本当にそれだけですよ」
 そこは断る紀香だった。
「私は」
「だったら俺もやってみようかな」
「毎朝早く起きてですか」
「この仕事時間は不定期だから」
 コンビニはというのだ、二十四時間営業だからだ。
「けれど出勤前はね」
「走ってシャワーを浴びて」
「それで三食しっかり食べてね」
 実は最近そちらがいい加減だった、しかも深酒でもあった。
「そうしていこうかな」
「そうするといいと思いますよ」
「不健康だとよくないしね」
 それだけでというのだ。
「それじゃあ」
「はい、是非」
 こうしてだ、店長も毎日走り三食しっかりと食べて睡眠も摂る様になった。するとだった。
 確かに見違える様に健康になった、だが。
 紀香を見てだ、彼はまた言った。
「元気になって何よりだけれどな」
「それでもですか」
「紀香ちゃん程じゃないよ」
 こう言うのだった。
「それはね」
「そうですか」
「紀香ちゃんみたいに元気になるには」
 どうもという口調で言っていく。
「もっと理由があるのかな」
「いえ、本当にです」
「生活だね」
「それだけですよ」
 笑って言うのだった。
「本当に」
「そうなのかな」
「はい、じゃあ今日も頑張って」
「うん、仕事をね」
「やりましょう」
 紀香は笑顔のままだった、それでだった。店長を引っ張る形で頑張っていく。それは大学でも同じでだ。
 積極的に講義を受けてキャンバスライフを楽しんでいた。それで図書館で新聞を読みつつ言うのだった。
「これからよ、阪神も」
「五ゲーム離れてるけれど」
「カープとね」
「貫禄負けって感じだったけれど」
「それでもなの?」
「まだういけるっていうの?」
「まだ六月じゃない」 
 だからだとだ、笑って言うのだった。
「だからね」
「まだなの?」
「阪神いけるの?」
「十月まで充分時間あるから」
「それでなの」
「若手出て来てるし」
 まずはこのことを言うのだった。
「若手だったら夏も乗り切られるじゃない」
「地獄のロードも」
「それもなの」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「安心していいわ。それに二位じゃない」
「まあね」
「五ゲーム開いてても二位よ」
「腐ってもね」
「だったらクライマックスにも出られるから」
 肝心のそれにもというのだ。
「例え優勝出来なくてもよ」
「大丈夫」
「そこで勝てる」
「そうだっていうの」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「だからね」
「諦めない」
「そういうことね」
「阪神はまだまだこれから」
「ペナントは長いってことね」
「そうよ、優勝出来なくてもシリーズに出られるでしょ」
 この望みもあるというのだ。
「さっきも話したけれど」
「クライマックスで勝てばいい」
「希望はある」
「だからっていうのね」
「終わったって思うのはクライマックス次第よ」
 そこで負ければというのだ。
「それまでは大丈夫よ」
「ううん、ポジティブね」
「かなり前向きね」
「紀香ちゃんらしいけれど」
「その前向きさ凄いわ」
「いつも笑ってるし」
「笑顔だしね」
 見ればその通りだ、紀香はいつも明るい笑顔だ。その笑顔でいつも前向きでいるのだ。
 その笑顔を見てだ、友人達も言うのだ。
「笑う門には、よね」
「そうそう、福来たる」
「笑うと心も弾んでね」
「健康になるっていうし」
「その分余計に健康なんじゃないの?」 
 こう言うのだった。
「紀香ちゃんって」
「いつも運動して清潔にしてちゃんと食べて寝て」
「それに加えてだからね」
「健康なのも道理」
「そうよね」
 友人達はわかっていた、そして店長もだった。
 紀香を見ているうちに気付いてだ、彼女に言った。
「俺も笑うか」
「はい、どんな時もですね」
「紀香ちゃんをよく見てわかったよ、まずはね」
「笑うことですね」
「スポーツと生活習慣に加えて」
 そしてというのだ。
「笑うこと、明るいことがね」
「健康の第一歩ですか」
「元気になる秘訣だよ、だから笑うよ」
 これからは今よりずっと、というのだ。こう言って明るい笑顔で仕事に向かった。そのいつも笑顔でいて元気な紀香と共に。


元気溌剌   完


                 2017・6・29

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