実家が実家で
駒川かすみは中学生だ、しかし中学生だが働いている。それはどうしてかというと。
「お家がカラオケボックスだと大変ね」
「部活もしてるしね」
友人達が学校でそのかすみに言う、かすみは黒髪をショートにしたあどけない感じの娘だ。スタイルはすらりとしている。
そのかすみにだ、彼女達は言うのだった。尚かすみの部活はテニス部で選手でもある。
「休日にアルバイトしてるんでしょ」
「お店で」
「そうなの、ただね」
かすみは自分の席から友人達に答えた。
「ちゃんと勉強のことは考えてくれてるから」
「だからいいのね」
「かすみちゃんそんなに成績悪くないしね」
「普通位でね」
「特によくもないけれど」
「高校位は出ていないとってね」
かすみはこうも言った。
「お父さん達も言ってるし」
「それでなのね」
「かすみちゃんお勉強もしてるのね」
「ちゃんと」
「そうなの、ただ本当にね」
それでもと言うのだった。
「うちは何かとね」
「繁盛してて」
「それでなのね」
「忙しい」
「そうなのね」
「多分高校卒業したら」
大学までは考えていない、高校を卒業したら就職するつもりだ。
「実家で働くわ」
「そのまま就職ね」
「そうなるのね」
「多分ね、お店継ぐかどうかまではわからないけれど」
他の兄弟達とのこともあってだ。
「それでもね」
「将来はっていうのね」
「実家に勤める」
「そうなるのね」
「だから多分ね、お店のお仕事は」
カラオケボックスのそれはというと。結構大きなカラオケボックスをしていて家の収入もいい。
「わかってるから」
「子供の頃からしてるから」
「だからなのね」
「ええ、お料理を出してお掃除もして」
そうしたこともというのだ。
「勿論接客もね」
「何でもしてるから」
「昔から」
「だから慣れてるのね」
「そのつもりだから」
それでというのだ。
「やっていけると思うわ」
「それは何よりね」
「じゃあこれからも頑張ってね」
「カラオケボックスの方も」
「部活も勉強もね」
「そうしてくわ」
かすみはこう答えた、そしてだった。
実際に学校の生活だけでなく実家の仕事も頑張っていた、その彼女にだ。
文化祭の時だ、友人達は彼女にこう言ってきた。
「うちのクラスも出しものするけれど」
「カラオケ喫茶しない?」
「そっちに」
「何でカラオケかっていうとね」
「やっぱりね」
「わかるわよ、うちがカラオケボックスだからよね」
かすみは友人達に笑って返した。
「だからよね」
「そう、カラオケの機械とかもすぐ手に入るし」
「曲も出せるし」
「カラオケのこと知ってるし」
「だからね」
それでというのだ。
「かすみちゃんの協力が期待出来るから」
「それも全面的にね」
「それでなの」
「どうかしら」
「そうね、普通の喫茶店なら」
それならとだ、かすみも言った。中学の文化祭で喫茶店はいささか早いと思うが三年生なのでいいかもとも思いつつ。
「ありきたりでね」
「他のクラスもやりそうだから」
「ここはカラオケにしようって思ったの」
「そう思ってよ」
「かすみちゃんもいるしってことで」
「それでどう?」
「かすみちゃんとしては」
「いいと思うわ、じゃあ機械実家から持って来るし」
その店からとだ、かすみは賛成の意見を述べつつ友人達に言った。
「お店のこともね」
「色々とよね」
「お話してくれるのね」
「そうしてくれるのね」
「そうさせてもらうわ、じゃあね」
当のかすみが賛成してだ、おおよそ決まった。
クラスは文化祭の出しものでカラオケ喫茶をすることになった、これで正式に決まってだった。
かすみが用意をして具体的にどうするか話した、カラオケボックスのことだが喫茶店でも同じと思ってアドバイスをした。
そしてだ、文化祭の日にだ。
喫茶店を開いたがここでだった。
クラスメイト達は彼女のアドバイスを受けてだ、こう言った。
「凄いね」
「細かいところまで色々と」
「何かと教えてくれて」
「助かるよ」
「流石家がカラオケボックスだな」
「わかりやすいよ」
「まあお家のことなら」
それならと言うのだった。
「知ってるからね」
「そうだよね、じゃあね」
「お店開きましょう」
「繁盛させていこう」
「それも楽しく」
クラスメイト達は笑顔で話してだった、そのうえで。
店をはじめた、するとだった。
昼までは順調でだ、賑やかにいったが。
ふとだ、調理場で騒ぎが起こった、その騒ぎは。
「うわっ、生クリームないわよ」
「切れた?」
「そうなった?」
「生クリーム使ったお料理の注文多かったから」
「使いきった?」
「大丈夫よ」
ここでだ、かすみが調理場に来て困っているクラスメイト達に言った。
「私が持って来てるから」
「えっ、そうなの」
「生クリーム持って来てくれてたの」
「そうなの」
「もうなの」
「そう、もうね」
「生クリームはよく使うから」
カラオケボックスのお客さん達の注文から得ている知識だ。
「だからね」
「多めになの」
「用意してくれてたの」
「そうだったの」
「実家から持って来てたから」
だからだというのだ。
「安心して、すぐに出すわ」
「有り難う」
「正直助かるわ」
「なくて一瞬まずいって思ったけれど」
「あるならね」
「本当に助かるわ」
「他にも注文されやすいの持ってきてるから」
生クリーム以外も用意していたというのだ。
「だからね」
「注文が多くても」
「安心していいの」
「かすみちゃんが用意してるから」
「そうなの、だから安心してね」
にこりと笑ってだ、そのうえでだった。
かすみは生クリームを出してだ、クラスの難は逃れられた。そして他にも困った客が来てもだった。
かすみは手慣れた対応でことを済ませたり他にもトラブルが起きても即座に対応してだった。
店は円滑にかつ順調に動き文化祭を楽しく過ごせた、そしてだった。
文化祭が終わってからだ、クラスメイト達はかすみに笑顔でお礼を言った。しかしかすみは笑ってこう返した。
「うちじゃ普通だから」
「お店のことだから」
「そうだっていうの」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「気にしないで、それでね」
「それで?」
「それでっていうと」
「いや、文化祭平和に終わったから」
ハッピーエンドと言っていい結末だったからだというのだ。
「皆で打ち上げしない?」
「ああ、そうか」
「じゃあ打ち上げする?」
「そうする?」
「そうしましょう」
こう言うのだった。
「今からね」
「よし、じゃあね」
「かすみちゃんのお家でしましょう」
「そうだよな、カラオケ喫茶だったし」
「かすみちゃんのお陰だし」
「それならだよな」
「じゃあうち来て」
かすみは店に客が来るならとだ、笑顔で応えた。
「それで賑やかに楽しんで」
「よし、今からな」
「かすみちゃんのお家行きましょう」
「そうしましょう」
「これからな」
クラスメイト達も笑顔で応えてだ、そしてだった。
かすみは皆と一緒に自分の家の店であるカラオケボックスで打ち上げをした、ここでもかすみが士気っていたが普段は働いているその店で客として入って楽しんだ。それは悪くないものだった。
実家が実家で 完
2017・7・25
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