悩みは肩凝り
 本町麗子は巨乳である、そしてその巨乳故に彼女にとってはわりかし深刻な悩みを抱えている。
「肩がまたね」
「凝ってるのね」
「そうなのね」
「ほら、今夏でしょ」
 この暑い季節だからとだ、麗子は学校で友人達に話した。キャンバスの中にある喫茶店で紅茶を飲みながら話していた。
「夏は薄着になるでしょ」
「麗子の服装って露出低めだけれどね」
「夏でもね」
「薄着にはなってるからね」
「今だって」
 白いロングのワンピースだ、勿論半袖である。服の生地はさらさらでかなり薄い。
「それで、なのね」
「しかもあちこちで冷房が効いていて」
「身体が冷えて」
「それで肩が凝るのね」
「まだ冬の方がましな感じなのよ」
 麗子にしてみればそうだというのだ。
「冬は身体あっためるから、厚着もして」
「そうよね」
「身体が冷えるって最初からわかってるからね」
「厚着して身体も温めて」
「熱いものも食べて」
 好物の鶏鍋なり八宝菜なりをだ、他には生姜を入れた葛湯もよく飲む。他には今はアイスティーを飲んでいるがホットティーやホットミルクを飲む。
「そうしてよね」
「身体を温めていくから」
「それでよね」
「肩凝りはまだましなのね」
「私としてはね、ヨガやストレッチをしても」
 麗子がその肩凝り解消にしているものだ。
「それでもね」
「肩が凝って」
「それで困ってるのね」
「夏場は」
「どうしたらいいかしら、暑いのは事実だし」
 麗子にしてもだ。
「お店とかの冷房は止めるなって言えないしね」
「ちょっとね」
「それは無理よね」
「自分の都合だけでそうしろとか」
「我儘もいいところよ」
「そう、だから言えないし」
 それでとだ、理恵子は困った顔のまま話す。
「困ってるのよ」
「難しい問題ね」
「確かに夏って結構身体冷えるのよね」
「冷房のせいで」
「かえってね」
 友人達も言う、特に大阪は人が多くしかも熱気が篭る傾向があるせいか他の街より暑い。東京と比べてもだ。
 それでだ、友人達も麗子に言う。
「難しいわね」
「この問題については」
「身体が冷えるからね」
「どうしても肩も凝るわね」
「ヨガやストレッチをしてる分かなりましになってるけれど」
 それでもというのだ。
「凝るものは凝ってて」
「今もなのね」
「肩が凝ってて」
「それで苦しいのね」
「そうなの、何かいいことないかしら」
 肩凝り解消のそれはというのだ。
「一体ね」
「ううん、そうね」
「私達もそう言われると」
「どうしていいかわからないわ」
「ちょっとね」
 ヨガやストレッチをしても解消出来ないならというのだ、それでだった。
 友人達も返事に困った、それで麗子は暫く夏の肩凝りに悩んでいた。その中で家にいた時にだ。
 母親にだ、こんなことを言われた。
「あっ、今日お風呂だから」
「シャワーじゃないの?」
 実は麗子はシャワー派だ、これは夏でも冬でも変わらない。
「今日は」
「そうよ、お父さんが入りたいっていうから」
「またどうしてなのよ」
「最近腰の調子がよくないらしくて」
 それでというのだ。
「お風呂で温めて」
「腰をなおしたいの」
「そうらしいから」
 だからだというのだ。
「お風呂だから」
「そうなの」
「麗子もよかったら入ってね」 
 こうも言った。
「いいわね」
「別にいいわよ」 
 麗子は最初は断った。
「私いつもシャワーだしね」
「そうだったわね、けれどね」
「気が向いたら?」
「入りなさい、腰にいいのは確かだから」
「温めるから」
「身体は冷やすより温める方がいいのよ」
 それでというのだ。
「だからね」
「私もなの」
「入りなさい、言ったけれど身体は温める方がよくて」
「ひょっとして肩にも」
「いいわよ」
 その肩凝りにもというのだ、麗子が悩んでいる。
「それもいいから」
「それじゃあ」
「そう、よかったら入ってね」
「そうしようかしら」
 麗子はこの時は軽く返しただけだった、そして。
 風呂場に入った時にだ、浴槽に湯が入っているのを見てだった。
 シャワー派でも母の言葉を受けてだ、それでだった。
 実際に入ってみた、そうして夏だがあえて汗が出るまでに身体を温めてみるとこれがだった。
 肩凝りがかなりましになっていた、それで次の日の朝母に目を輝かせて言った。
「肩かなりましよ」
「そうでしょ」
「ええ、もうね」
「あんたいつもシャワーでしょ」
 夏も冬もとだ、母も言う。
「それはね」
「身体が温まらなくて」
「その分肩も凝るのよ」
「そうだったのね」
「だから。肩凝りがましになりたいなら」
 麗子の望み通りにだ、そうなりたいならというのだ。
「お風呂にも入りなさい」
「これからそうするわね」
 何しろ肩凝りに悩んでいる身だ、それならだった。
 麗子に選択肢はなかった、それで母にこう答えた。
「今日もこれからもお風呂にするわ」
「そうしなさい、何度も言うけれど身体は冷やさない」
「肩凝りが嫌なら」
「そうした方がいいのよ」
 ヨガやストレッチで動かしてほぐすだけでなく、というのだ。
「そうしてよ、いいわね」
「ええ、肩凝り解消していくわ」
 完全にそうすることが無理でもましにしていきたい、自分のその願いを話してだった。
 麗子はこの時からシャワー派から風呂派になった、すると肩凝りは以前よりも遥かにましになった。湯舟に入るか入らないかだけでここまで変わるのかと驚きそうしつつも喜びながら。


悩みは肩凝り   完


              2017・7・26

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