年下キラーの指輪
 昭和里香は通っている大学のキャンバスの中で困った顔になって友人達に話していた。その話すことはというと。
「昨日近所の中学生の子に告白されたの」
「えっ、また?」
「また告白されたの」
「年下の子に」
「そうなの」
 友人達にそうだと答える。
「これで五度目よ」
「年下の子からの告白ってね」
「里香ちゃんって年下の子に好かれるのね」
「この前は高校生で今度は中学生」
「一度小学生ってのもあったわよね」
「どうしてかしら」
 里香は困った顔のまま言った。
「私年下の子から告白されるのかしら」
「奇麗だからでしょ」
 友人の一人がまずこう言った。
「里香ちゃん美人だもん」
「そうそう、私達から見てもね」
「お嬢様的なね」
「そんな美人さんよね」
「目鼻立ち整ってて」
「楚々としててね」
「しかもね」
 別の友人が言ってきた。
「そのスタイル」
「いつも露出少ない服だから目立たないけれどね」
「実は胸大きいし」
「しかもくびれもある」
「スタイルも抜群だから」
「そのことも大きいわよね」
「さらにね」
 友人達は里香が年下の子にもてる要素をさらに話した。
「性格もね」
「優しくておっとりしてて」
「母性があるって感じなのよね」
「だからね」
「性格のこともあって」
 顔やスタイルだけでなく、というのだ。
「それでよ」
「服装だってお姉さん的で」
「そうしたことが好きな子にもてるのよ」
「もう告白せずにいられない」
「そんな感じじゃないの?」
「里香ちゃんに告白する子って」
「そうなのかしら、けれど」
 告白される当人の言葉だ。
「私はね」
「もう彼氏いるしね」
「だからね」
「その気持ちに応えられないわよね」
「どうしても」
「ちょっとね」
 実際にとだ、里香は困った顔のまま話した。
「だからね」
「それでよね」
「告白されても困るわよね」
「その気持ちに応えられないから」
「里香ちゃん浮気もしないし」
「そうした性格でもないし」
「告白されなかったら」
 最初からというのだ。
「いいのに」
「それ贅沢ではあるわね」
「そうそう、どんどん告白されるのが悩みって」
「私滅多にないし」
「私もよ」
「まあ告白されてね」
 彼氏がいない状態でだ。
「何処が駄目そこが駄目とか言ってね」
「相手を恥かかせる感じで振る娘いるけれど」
「そんなことしたらね」
「もう次から相手来ないからね」
「誰も告白しなくなるからね」
「自分もそうなるって思ってね」
「男の子の方からね」
 そのケースも話すのだった。
「けれど里香ちゃんはね」
「御免なさい、だからね」
「応えられない理由ちゃんと話すから」
「彼氏がいるからって」
「相手を傷付けない様にするから」
「それもいいのよ」
「相手を傷付ける様な娘じゃないから」
 里香は性格的にそうしたこともしない、断るにしても相手の気持ちを考えて断るのだ。そうした人間なのだ。
 そしてだ、それがなのだ。
「性格に出るから」
「それも皆見るから」
「余計にいいのよ」
「年下の子達もわかるから」
「それでよ」
「じゃああれかしら」
 ここでこう言った里香だった。
「思いきり性格悪くしたらいいの?」
「それが表に出てっていうのね」
「もう相手が近寄らなくなる」
「それこそ誰も」
「そうなるかもっていうのね」
「そうかしら」
 こう友人達に尋ねた。
「今皆の話を聞いて思ったけれど」
「どうかしらね」
「性格って表に出るしね」
「それが評判にもなるし」
「相手もその噂聞くし」
「それで告白するかも考えるしね」
「好きになるかどうかも」
 友人達もこう話をした。
「相手も馬鹿じゃなかったらね」
「告白する人の性格も見るし」
「それで好きになるから」
「里香ちゃんもそれは同じで」
「若し里香ちゃんの性格が悪かったら」
「告白減る?」
「そうなる?」
 こう考えた、だが。
 里香本人にだ、彼女達はどうかという顔で尋ねた。
「けれど里香ちゃん性格悪くなれる?」
「相手を傷付けられる?」
「告白してきた子の心を踏み躙る様なこと出来る?」
「そんなこと出来る?」
「それは」
 そう言われるとだ、里香は。
 困った顔のその色をさらに濃くさせてこう言った。
「私には」
「そうでしょ、里香ちゃんには出来ないわよ」
「そこが里香ちゃんのいいところだけれどね」
「他の人に酷いことを平気でする様な娘じゃない」
「そのことはね」
「けれど告白されるのが困るなら」
「何とかしないとね」
「その何とかがね」
 どうしてもというのだ。
「私としてもね」
「わからないのね」
「今は」
「そうなのね」
「どうしたらいいかしら」
 こう言うのだった。
「本当に」
「ううん、そうね」
「何かで相手に告白出来ない様にする」
「最初からね」
「そうすればいいけれど」
「具体的にどうするかよね」 
 友人達も考え込んだ、そして。
 彼女達の一人がだ、ふと思いついてこんなことを言った。
「指輪したらどう?」
「あっ、結婚指輪ね」
「そう、それね」
 指輪は指輪でもというのだ。
「それしたら?」
「左手の薬指にね」
「わかるわよね」
「ええ、結婚している風に見せたら」
「それだけで違うわよ」
 そうなるというのだ。
「それでいつも彼氏に指輪貰ったって言ってれば」
「結婚指輪イコールで」
「彼氏がいるってわかるから」
「彼氏がいるのは嘘じゃないし」
「だからね」
 それでというのだ。
「やってみたら?」
「そうね」
 里香も考える顔になって頷いた。
「それじゃあ」
「よし、じゃあね」
「告白されない為に」
「ここはよ」
「指輪をね」
「するのよ」
 左手の薬指にというのだ。
「そうしましょう」
「それじゃあ」
 里香も頷いた、こうしてだった。
 実際に指輪をした、左手の薬指に。そしてその指輪を彼氏から貰ったといつも言っているとだ。
「もうね」
「いなくなったね」
「告白する子が」
「そうなのね」
「ええ」
 そうだというのだ。
「指輪ってわかるのね」
「まあね」
「それで彼氏から貰ったって言ってたらね」
「自然とね」
「告白する人がいなくなるわ」
「そうなるわよ」
「中学生や高校生の子も」
 里香はほっとした顔で友人達に話す、大学のキャンバスの中にある中庭の中に腰を下ろして話している。
「わかるのね」
「まあ常識?」
「左手の薬指の指輪は結婚指輪って」
「しかもそこで彼氏がって言ったら」
「もうね」
「それこそだからね」
「これはってなるから」
 里香には既に相手がいるとわかるからだというのだ。
「声かけなくなるわよ」
「そんなものよ」
「まあとにかくこれでね」
「里香ちゃんも一安心ね」
「平和になったわね」
「ええ、何か自然にね」
 その指輪を観つつだ、里香はこうも言った。
「告白されていたから」
「それに応えられないから」
「告白されても困るし」
「だったら最初から告白されない様にする」
「それがベストだからね」
「その為の指輪ね、じゃあこれからも」
 里香は今も指輪を見ている、そうしつつ話していく、
「指輪していくわ」
「そうした方がいいわ」
「告白されて困るのならね」
「最初から告白されない様にする」
「その為の工夫も必要よ」
 皆で里香に話す、そしてだった。
 里香はずっと指輪を付けて告白されることを避けていった、だがその指輪をプレゼントしてくれた彼と将来本当に結婚することになるとは思っていなかった、そこまでは彼女の思いが至ることではなかった。


年下キラーの指輪   完


               2017・8・27

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