部員勧誘に
 玉川早百合は歌留多部に所属している、二年生になったばかりであり当面の課題に直面していた。
 その課題は他ならぬ歌留多部のことであり彼女は他の部員達と一緒に歌留多部の部室、部活を行うその場所で部長にこんなことを言われていた。
「うちの部活の人数わかっているわね」
「五人です」
 早百合が部長に答えた。
「二年生が三人で三年生が二人」
「じゃあわかるわね」
「一年生は最低でも二人ですね」
 早百合は難しい顔になって部長に答えた。
「欲しいところですね」
「そう、私とね」 
 部長は自分と同じ三年生である副部長を観つつ早百合に話した、見れば部員は全員女子である。
「副部長の分ね」
「お二人が引退されてからも」
「部員は必要よ」
「五人ですね」
「若し五人いないと」
「同好会に格下げですね」
「そうなりかねないから」
 だからだというのだ。
「ここはね」
「一年生の子をですね」
「男の子でもいいけれど」
 それでもというのだ。
「来ないでしょうね」
「歌留多部には」
「うちの部活伝統的に女の子の部活だから」
「そうですよね」
「だからね」
 さらに言う部長だった。
「ここは何としてもよ」
「二人ゲットですね」
「そうしていきましょう、勿論部の紹介や勧誘を頑張るけれど」
 それでもというのだ。
「それで二人来るかどうか」
「うちマイナーですからね」
「実際のところ」
 早百合以外の部員達もここで言ってきた。
「そこをどうするか」
「二人ゲットするにしても」
「ええ、その二人が問題よ」
 副部長も言う。
「どうして引っ張って来るのかが」
「私にしても入部の理由は」
 ここで早百合がまた話した。
「何かたまたま」
「たまたまだったのね」
「歌留多の漫画を読んでいて」
 それでというのだ。
「あっ、いいかなって思って」
「それでだったわね」
「入りましたし」
「私もです」
「私もでした」
 他の二年生の娘達もだった。
「主人公が奇麗でストーリーも面白くて」
「それで、でした」
「そうよね、うち歌留多以外に百人一首やトランプもするけれど」
 つまりカード全般である、ただし花札はヤクザっぽいという理由で顧問の先生が止めているし部員達もそちらへの興味はない。
「それでもね」
「あの漫画で今年は来るか」
「頼りにするのは」
「ちょっと危険ですね」
「ええ、私もそう思うわ」 
 部長は早百合に答えた。
「私達自身でのアピールね」
「それをするべきですね」
「歌留多でも百人一首でもトランプでも」
 カードで何でもというのだ。
「アピールしていく?」
「だったら」
 早百合は自分の席から部長に言った。
「トランプで手品とか」
「出来るの?手品」
「いえ、出来ないです」
「だったら意味ないじゃない」
「そうですよね」
「派手なアピールよ」
「ううん、歌留多に立ち戻って考えますと」
 早百合は部長にあらためて話した。
「日本ですよね」
「言うまでもなくね」
「じゃあ日本をアピールしますか?」
 勧誘の時にというのだ。
「勿論部活の紹介の時も」
「思いきり和風でいくの」
「そうしますか?」
「具体的にはどうするのよ」 
 部長は提案した早百合に眉を顰めさせて尋ねた。
「日本でいくにしても」
「具体的にはですか」
「そう、どうするのよ」
「そうですね、平安時代ですか」
 歌留多だからとだ、早百合は部長に提案した。
「皆で平安時代の服を着て」
「十二単とか」
「私が読んだ漫画は主人公着物着てましたけれど」
 そこをというのだ。
「思い切ってです」
「平安貴族でいくの」
「はい、貴族でいきましょう」
 こう部長に言う、それも強気で。
「五人全員で十二単着て」
「紹介なの」
「これインパクトあるし注目されますから」
「二人位は来てくれる」
「そうかも知れないですよね」
「うち生徒数多いしね」  
 その中でのマイナー部だ、マイナー部にはマイナー部の苦労があるが早百合達は今その苦労を実感しているのだ。
「だったらね」
「はい、二人位は興味を持って」
「わかったわ、じゃあ十二単は」
 肝心のその服はとだ、部長が早百合に話した。
「幸い演劇部が持ってるでしょうし」
「あそこ凄い服持ってますしね」
「十二単っていっても実は」
「絹じゃないですね」
「麻とか薄い木綿で作ってるから」
 そうした生地を使ってというのだ。
「色は派手でも」
「実際の十二単とは違いますか」
「だってあれ絹でしょ」
「高いですよね」
「そんな高い服高校の演劇部にないから」
 部費の関係でだ。
「ましてあそこ半分コスプレ同好会だし」
「服を作れる部員も多くて」
「そういうのも出来るけれど」
 それでもというのだ。
「流石に絹は無理よ」
「麻とか綿の十二単ですね」
「ちょっとあっちの部長にお願いしてね」
 そうしてというのだ。
「十二単借りてくるわね」
「お願いします」
「借りれなかったらその時また何とかするから」 
 十二単でなくてもというのだ。
「とにかくね」
「はい、日本文化を表に出して」
「勧誘と紹介していくわよ」
「わかりました」
 早百合だけでなく他の部員達も頷いてだった、そのうえで。
 歌留多部の面々は一学期の部の勧誘や紹介に十二単を着て出ることになった、そうして新入生達を誘うのだが。
 一年生の子達は早百合達を見て彼女達に驚きながら尋ねた。
「あの、それ十二単ですよね」
「歌留多部ってそれ着て部活するんですか?」
「大会とかにも出るんですか?」
「そうなんですか?」
「それはないから」 
 早百合が一年生達に笑って話した。
「流石にね」
「やっぱりそうですよね」
「いつも十二単はないですよね」
「幾ら何でも」
「それは」
「ないから、ただ歌留多部はね」
 ここからだ、早百合は一年生達に歌留多部について説明していった。部長も他の部員達もそこに加わって。
 そうして勧誘も紹介も頑張った、するとだった。
 その努力が実って二人の一年生を部員と出来た、部長はこのことに会心の笑みになってこう言った。
「まさにね」
「ドンピシャですね」
「二人ゲット出来たわ」
 こう早百合に話した、部室でまだ部活がはじまっていない時に二人だけ先に入ったので彼女にそうしたのだ。
「早百合ちゃんのアイディアのお陰よ」
「それはどうも」
「何でもやってみるものね」
「十二単って目立ちますからね」
「ええ、やっぱり勧誘もね」 
 そして紹介もだ。
「何といってもね」
「インパクトですね」
「それで目立って」
 そしてというのだ。
「そこからってことね」
「話をしていくことですね」
「何でもね、今年はこれで二人ゲット出来たし」
「来年もですね」
「こうしていく?」
 部長は早百合に自分が引退して卒業してからのことを尋ねた。
「そうしていく?」
「そうですね、部活を続ける為には」
「やっぱりね」
「部員が必要ですから」
 最低限の人数がというのだ。
「だからですね」
「そう、来年もね」
 注目されてそこから部員を確保する為にだ。
「十二単を着ていくべきかしらね」
「そうですね、それと」
「何といってもね」
「部の雰囲気ね」
「それが悪いと」
 どうしてもとだ、早百合も部長に話した。
「折角入ってくれた子も」
「辞めるからね」
「和やかで穏やかで」
「いじめとかもないね」
「そうした部活にしていきましょう」
「そうしていきましょう、そっちもね」
「頑張っていきましょう」
 早百合は部長にこのことも話した、そしてだった。
 部の雰囲気のことも部長と話していった、部員の勧誘だけでなくその雰囲気のこともしっかりと考えている彼女だった。


部員勧誘に   完


                2017・8・27

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