女子の学級委員
北花田美紀は通っている中学のクラスでクラス委員を務めている、この中学では男子もクラス委員を出すので二人でしているが。
美紀は男子のクラス委員にだ、いつもこう言っていた。
「あれ私がやっておいたから」
「えっ、もう?」
「ええ、やっておいたから」
こう言うのだった。
「安心してね」
「いつも早いね」
「だって気になったらね」
その時点でというのだ。
「やらずにいられない性分だから」
「それでなんだ」
「だからね」
それでというのだ。
「気にしないでね」
「僕もクラス委員だけれど」
男子の方は美紀に申し訳ない顔で返した。
「けれどね」
「何もしてないって?」
「そうなってるから」
「いいのよ、私が自分からやってるから」
「だからなんだ」
「気にしないでね」
一切という返事だった。
「こうしたことは」
「そうなんだ」
「じゃあね、そっちはお願いね」
「あれは簡単な仕事だけれど」
美紀がした方がきつい仕事だった、実際に。
「それでもなんだ」
「ええ、気にしないでね」
こう言ってだ、美紀はクラス委員の仕事を自分からしていっていた。だがこうしたことをするのは自分だけだと思っていた。
しかしある日だ、女子のクラス委員達が集まってそのうえでクラスの用事のことを話しているとだった。
美紀は驚いてだ、こう言った。
「あれっ、皆なの」
「そうみたいね」
「クラス委員って女の子の方が動いてるわね」
「それも自分からね」
「そうしてるのね」
「どうも」
「そうね、何か仕事があると」
クラス委員のそれがとだ、美紀は言った。
「せずにいられないわね」
「不思議とね」
「見て見ぬふりって出来なくてね」
「自分から動いて」
「それで終わらせちゃうのよね」
「しかもきついお仕事の方がね」
美紀はこうも言った。
「そうしたくなるわね」
「そうそう、どうにもね」
「軽い仕事ときつい仕事があったらね」
「きつい方を先にして」
「それでやってくわね」
「そうよね、けれどこれが皆なんて」
美紀はまさかという顔になって他のクラスのクラス委員達に述べた。
「思いも寄らなかったわ」
「そうした考えだからクラス委員になる?」
「まあ押し付けられたってくちだけれど、私も」
「私もよ。よさげに見えるって言われて」
「私もよ」
「けれど皆もなんて」
美紀の顔はまさかというもののままだった、その顔で言うのだった。
「まさかね」
「思わなかったわね」
「皆自分からしてね」
「しかもきつい方からする」
「そうしたタイプってね」
「そうした娘が選ばれるのかしら」
クラス委員にとだ、美紀は思った。それでだった。
家に帰って母親に夕食の後でこのことを話すと丁度食事の後の洗いものを終えたばかりの母にこう言われた。
「それが女の子よ」
「そうなんですか」
「そう、女の子ってそうじゃない娘もいるけれど」
「自然になの」
「やらないお仕事があるとね」
それを言われたり目の前にあったりすると、というのだ。
「自然と動くのよ」
「それもきついお仕事の方になの」
「そういうものよ」
「そうだったの」
「だって子供産んで育てるのよ」
母は娘を見つつその娘に話した。
「だったら何もしないとね」
「お仕事が溜まって」
「それもきついのがね」
「だからなのね」
「それならね」
その仕事が溜まって後で大変な思いをするよりはとなってというのだ。
「最初からね」
「しておこうってなって」
「動くのよ」
「自然になのね」
「そうよ、それが女の子なのよ」
「それで女の人なの」
「だから美紀ちゃんもね」
彼女にしてもというのだ。
「女の子だっていうことよ」
「そういうことでもあるの」
「そう、女の子だからそうした風に動くのよ」
「クラス委員だからじゃなくて」
「お母さんもどうもね」
「そういえば」
美紀は母のその言葉で母の日常に気付いた。
「パートのお仕事もして」
「それでよね」
「家事をしていて」
「まずはきついお仕事からしてるでしょ」
「自分からね」
「さもないと後が大変だから」
主婦であり母親であるからだ。
「最初からね」
「自然になのね」
「なってるのよ」
「女の子は」
「そうよ、美紀ちゃんは自然なのよ」
女の子として、というのだ。
「女の子はそうじゃない娘もいるけれど」
「お仕事があったら」
「自然と動くの」
「それもきついお仕事の方に」
「そうしたものなのなのよ」
「成程ね、じゃあ明日もクラスで」
「お勉強と部活とね」
それに加えてというのだ。
「クラス委員のお仕事もね」
「やってくわ」
「自分からね」
「そうして動いていくわ」
こう言ってだ、美紀は席を立って自分の部屋に戻った。そのうえで予習と復習得意な数学や理科のそれをしたのだった。
女子の学級委員 完
2017・8・30
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