ラッキーカラー
桜川美優はこの時赤い服を着ていた、日曜に友達と一緒にショッピングに出たがブラウスもセーターも赤だった。
ジーンズは青だ、だがその上着の赤を見てだった。友人は美優に言った。
「あんた今もなのね」
「そう、赤にしたの」
「赤が好きだからなのね」
「いや、ラッキーカラーだからよ」
美優は笑って友人に答えた。
「いつも赤い服を着てね」
「持ちものも赤よね」
「そうしてるの、私はラッキーカラーこれだって言われたから」
赤だとだ、中学の時にたまたま占ってそれで赤がそれだと言われてからだ。美優は自分のラッキーカラーは赤だと思っているのだ。
「それでなのよ」
「それ前も聞いたけれどね」
「まあ嫌いじゃないわ」
好き嫌いでもそうだというのだ。
「けれどね」
「それでもなの」
「実際赤いものを着ていたり持ってるとね」
これまで彼女が思っている限りではだ。
「いいことがあったから」
「それで今もなのね」
「着ていて持ってるのね」
「そうしてるのよ」
「そんなにいいことあるの」
「いつもね、実際に」
「成程ね、あんたにとって本当にラッキーカラーなのね」
友人も美優のその話に納得して頷いた。
「赤は」
「そうなの、赤がね」
「じゃあ今もいいことがあるのかしら」
「きっとあるわ、本当に赤を着ていて持ってると」
そうしているとだ。
「いつもいいことがあるから」
「だったらそのいいことを見せてもらおうかしら」
「絶対にあるわ」
美優は友達に明るい笑顔で答えた、整ったモデルとしてもやっていけそうな顔が弾ける様にそうなった。そうして二人でショッピングを楽しんでいると。
その途中で立ち寄ったたこ焼きの出店でたこ焼きを食べてだ、美優はじんと感じる顔になってからこう言った。
「このたこ焼き最高よ」
「美味しい?」
「とてもね」
「うん、確かに美味しいわね」
友人もこのことは認めた。
「このたこ焼きは」
「もう幸せよ」
その美味いたこ焼きを食べられてというのだ。
「本当にね」
「そうなのね」
「美味しいたこ焼きに出会えて」
「そこまで言うの」
「だって本当に幸せだから」
そう感じているからだというのだ。
「言うのよ」
「そうなの」
「ええ、じゃあ今からね」
「お買いものの続きね」
「それに行きましょう」
こう話してだ、二人は今度はアクセサリーを買いに行ったがここでだった。美優は赤いネックレスを見て笑顔で言った。
「これ凄くいいわね」
「しかも安いわね」
「こんないいもの買えるなら」
それならというのだ。
「私凄く幸せよ」
「実際に買えるわよ」
「じゃあ本当に幸せになれるのね」
「そのネックレス買って」
「そうなるわ」
こう言うのだった。
「今からね」
「また幸せになるのね」
「たこ焼きの時と同じで?」
「そうなるのね」
「そうね」
否定せずにだ、美優は友人に笑って応えた。
「さっきたこ焼きを食べた時と同じで」
「また幸せになるの」
「そうなるわ」
こう友人に答えた。
「ネックレスを買って」
「じゃあ買ってね」
「ええ、幸せになるわ」
こうしてその赤いネックレスも買ってだ、美優は満面の笑みを浮かべた。その後で二人で街を歩いていてだった。
美男美女のカップルと擦れ違ってだ、今度はこんなことを言った。
「さっきの人達見た?」
「カップルの人達ね」
「ええ、お二人共凄い美形だったわね」
「そうね、確かに」
「あんな素敵なカップル見られるなんて」
それこそというのだ。
「私幸せよ」
「そこでまた幸せっていうの」
「駄目かしら」
「いや、確かに美形カップルだったけれど」
それでもとだ、友人はにこにことしている美優に言った。
「それでも普通でしょ」
「そう?」
「美形の人達を見るのも」
「そうかしら」
「結構世の中美人さん多いわよ」
そして美男子もというのだ。
「だからね」
「いや、それがお二人共って」
「そうそうないからなの」
「しかも幸せそうだったから」
このこともあってというのだ。
「観られてね」
「嬉しいっていうのね」
「幸せよ」
「そこでまた幸せっていうの」
「ええ、ほら私今もね」
ここでだ、美優は自分が着ているセーターとその襟のところからブラウスに触れて友人に話をした。
「赤い服着てるでしょ」
「あんたのラッキーカラーのね」
「だからなのよ」
「いいことがあったっていうのね」
「だから幸せよ、本当にね」
こうも言うのだった。
「赤い服が導いてくれたのよ」
「そこまで言うのね」
「駄目かしら」
「駄目じゃないけれどただね」
「ただ?」
「いや、美優ちゃんって多分ね」
その美優を見て言うのだった、共に街の中を歩きつつ。
「いつも凄く幸せなのよ」
「赤い色のもののお陰で」
「その前からだと思うわ」
考えながらだ、友人である美優に話すのだった。
「元々何でも幸せを見付けて喜べるのよ」
「私はそうだっていうの」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「幸せなのよ、いつも」
「赤が導いてくれるんじゃないの?」
幸せにとだ、美優は友人に怪訝な顔になって問い返した。
「そうじゃないの?」
「それもあると思うけれど」
友達も占いは結構信じている、だから美優の考えを否定せずにそのうえで答えたのだ。
「けれどね」
「それでもなの」
「美優ちゃんは元々幸せなのよ」
「いつも幸せを感じられて」
「だってたこ焼きを食べてもネックレスを買ってもでしょ」
そうしたことでもというのだ。
「さっきだってそうだし」
「擦れ違えて幸せっていうのね」
「同じことでもそう感じない人だっているでしょ」
「そうなの?」
「何でも不満を持ってたりする人はね」
世の中そうした者もいる、常に何かしらの不平不満を抱えている者がだ。そうした者はというのだ。
「美優ちゃんと同じことがあってもね」
「幸せって思わないの」
「けれど美優ちゃんは何でも幸せって思うから」
だからだというのだ。
「幸せなのよ」
「そうしたものなの」
「そうも思ったわ、そもそも赤い服を着て赤いものを持っていても幸せって思うでしょ」
「ええ」
その通りだとだ、美優は友達に答えた。
「そうよ」
「とにかく何でも幸せって感じられる性格なのよ」
「そしてそれがいいのね」
「そう思うわ、ラッキーカラー云々じゃなくて」
美優を見つつ話した。
「美優ちゃん自身がね」
「幸せっていうのね」
「そうも思うわ、ただラッキーカラーも」
それもというのだ。
「いいと思うわ」
「そうなのね」
「これからも着けてるといいわ」
そして持っていると、というのだ。
「いいわ」
「そうなのね」
「そう、実際に幸運を招いているかもだし」
「着ていて持っているだけで幸せにも感じるから」
「いいと思うわ」
「幸せを感じるってことなのね」
「そう、元々の美優ちゃんの性格もあってね」
そうしたものが積み重なってというのだ。
「美優ちゃんはどんどん幸せになれるわ」
「そういうことね」
「そう、本当にね」
「そうなのね、じゃあ私これからもね」
美優はにこりと笑ってだった、友人に答えた。
「幸せでいるわね」
「そうなってね」
友人に笑顔で応えてだ、そしてだった。
美優は友人とにこにことして応えた、そうして今度は駅で電車に間に合ってまた幸せだと言った。この時の美優も満面の笑みであった。
ラッキーカラー 完
2017・9・23
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