焦らない焦らない
なかもず理恵子は焦ることが嫌いだ、もっと言えばいつもスローモーションであると言っていい。それは何事においてもそうで。
とにかく何でも丁寧もっと言えば遅くやっていく。その彼女を見て妹達も家でどうかという顔で言った。
「お姉ちゃんって丁寧だけれどね、何をするにも」
「コツコツとしてて」
「けれど何をするにも遅いわよね」
「どうしても」
「焦るの嫌いだから」
それでとだ、理恵子自身も妹達に言う。
「だからね」
「焦らないっていうの」
「ゆっくりと丁寧としていくの」
「そうなのね」
「何でも」
「そうなの、というか焦って失敗しても」
そうなってもとも言う理恵子だった。
「意味がないでしょ」
「まあそれはね」
「焦って失敗したら同じね」
「後で後悔するだけで」
「どうしようもないわね」
「だから私焦らないの」
妹達に独特の穏やかな口調で話す。
「これといってね」
「昔からそうよね」
「子供の時から」
「コツコツとして」
「丁寧にしていくのね」
「それが一番いいと思うし」
例えそれが遅くてもというのだ。
「だから焦らないの、本を読むのもね」
「そういえば読書好きだけれど、お姉ちゃんって」
「そっちも遅いわね」
「スローモーションね」
「ええ、今読んでる本もね」
人気のライトノベルを読んでいるがだ。
「結構時間がかかってるけれどね」
「大体普通の人の倍位よね」
「コツコツ読んでるわよね」
「そうしてるの、それで今読んでいる本を読んだら」
その時はというのだ。
「またね」
「次の本読むのね」
「そうするのね」
「それでその本が読み終わったらまた」
「ゆっくり読んでいくのね」
「そうするわ、ゆっくりとね」
このことはあくまで変えないというのだ、そして実際にだった。
理恵子は読書もじっくりとしていた、それでよく周りからまだ読んでいるのかと驚かれた。しかしそれでも理恵子は自分のペースを変えなかった。
一冊一冊じっくりと読んでいく、そしてそのせいか友人の一人が読んでいるライトノベルを観てこんなことも言った。
「その作品前にアニメ化してるわよね」
「よく知ってるわね」
「私も読んでたから」
その作品をというのだ。
「だからね」
「知ってるの」
「今も読んでるし」
「あっ、そうなの」
「またアニメ化するしね」
つまり二期もあるというのだ。
「面白いわよね」
「ええ、登場人物も面白くてね」
「そうそう、キャラの中でもね」
ここで理恵子はその作品のキャラ達についてどんどん話していったがその話を聞いてだった。友人は理恵子に驚いて言った。
「よく知ってるわね」
「読んだからね」
「いや、私も全巻読んでるけれど」
それでもというのだ。
「理恵子ちゃん程はね」
「知らないの」
「そこまでは。お話の細かいところまで知ってるし」
「そうかしら」
「よく知ってるわよ。やっぱりあれかしら」
「あれって?」
「じっくり読んでるから」
時間をかけてというのだ。
「覚えてるのかしら」
「そうかしら」
「だって速く読んだら」
その分だけというのだ。
「細かいところまで読んでないことも多いでしょ」
「まあ私焦ること嫌いだし」
「その性格もあってね」
「私は細かいところも読んでて」
「時間をかけてね」
いつもの様にというのだ。
「そうしているせいでね」
「細かいところまで覚えているっていうのね」
「勉強でもそうじゃない」
学校のそれもというのだ。
「理恵子ちゃんじっくりする方でしょ」
「一つ一つね」
コツコツととだ、理恵子は友人に答えた。
「そうしていってるわ」
「一つ一つ覚えてよね」
「時間をかけてね」
「そうしているから成績もいいのよ」
「そうなの」
「努力っていうか」
「コツコツしてるから」
「よく覚えているのよ」
そうした勉強の仕方をしているからだというのだ。
「それでなのよ」
「言われてみれば」
「それ自分でも思うでしょ」
「焦るの嫌いだから」
ここでまたこの言葉を出した理恵子だった。
「だからね」
「コツコツ時間をかけて勉強してるから」
「成績もいいの」
「ライトノベルの内容もね」
キャラクターだけでなくというのだ。
「よく覚えているのよ」
「細かいところまで」
「そうなの」
「よく遅い遅いって言われるけれど」
読書にしても勉強にしても他のこともだ、もっと言えば運動においてもそう言われ続けて来てこちらの成績はよくはない。
「それがかえってなのね」
「コツコツタイプだからね」
そちらの遅さだからというのだ。
「いいと思うわ」
「よく覚えていて」
「そうなのよ」
「じゃあ私はこのままでいいの」
「そうね、というか焦る理恵子ちゃんは」
友人は実際にそうした彼女を想像してみた、だがどうしても想像出来なくてそのうえで理恵子本人に言った。
「考えられないしね」
「だからなのね」
「理恵子ちゃんはこのままでね」
「急がず焦らずで」
「一つ一つコツコツとやるのがいいわね」
「それじゃあね」
理恵子も友人ににこりと笑って応えた。
「私はね」
「ええ、これからもね」
「本を読むこともお勉強も他のことも」
「私のペースでコツコツと」
「やっていってね」
「そうするわね」
「それでだけれど」
ここまで話してだ、友人は理恵子にあらためて尋ねた。
「このライトノベル結末どうなるのかしら」
「ううん、このまま主人公とヒロインが一緒になると思うけれど」
「そうなりそうな気配よね」
「けれどこの作者さん結構色々入れる人だから」
「ストーリーの中に」
「だから波乱はね」
ハッピーエンドの前にというのだ。
「あると思うわ」
「もう一人のヒロインもいるしね」
「その娘は主人公のお友達と一緒になると思うけれど」
「それまでにっていうのね」
「波乱がね」
それがというのだ。
「あると思うわ」
「そうなのね」
「それで色々あってね」
「最後はなのね」
「結末は絶対に大団円の人だから」
ハッピーエンドの人だからというのだ。
「だからね」
「どのキャラも幸せになって」
「そうして終わるわ」
「じゃあ最後の最後までね」
「楽しんで読んでいきましょう」
理恵子の場合はゆっくりとだ、そうした話をしてだった。友人と二人で色々と話していくのだった。
そして家に帰ってこの日は両親の仕事が遅いので妹達に自分の分も含めて料理を作ると妹達に笑って言われた。
「うん、お料理にも時間かかるけれどねお姉ちゃんって」
「その分丁寧な味よ」
「美味しいわ」
「今日は有り難うね」
美味しい料理を作ってくれてというのだ、妹達にこう言ってもらった。丁寧に時間をかけて作った料理はそれだけに確かな味だった。
焦らない焦らない 完
2017・9・25
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