黒下着故に
 玉出恵理香は外見は上品な感じで美人と評判だ、だが彼女が高校生の時にだ。 
 体育の授業の前で更衣室で体操服に着替える前にだ、クラスメイト達が制服を脱いで下着姿になった彼女に言った。
「恵理香ちゃんっていつもね」
「何で下着は黒なの?」
「外見は上品な感じなのに」
「ファッションもお嬢様系なのに」
 スカートや上着はというのだ。
「何で下着は黒なの?」
「黒が多いの?」
「いえ、黒だとね」
 見れば実際に黒のブラとショーツだ、ショーツの前のところには小さな黒いリボンがある。ごく普通の下着だが色が色なので実に艶めかしい。
「汚れも目立たないでしょ」
「毎日替えてるのに?下着」
「それでもなの」
「白とかだとどうしても目立ってくるから」
 着けている日が経つについてだ、例え毎日替えて洗っていても。
「それに黒って落ち着く色だし」
「それでなの」
「恵理香ちゃん下着は黒が多いの」
「それでなの」
「他にはダークブルーとかダークグレーとかワインレッドとかね」
 どれも暗い系の下着である。
「もう服に透けない様にしていたらね」
「それでいいから」
「そこは気をつけながらなのね」
「黒い下着を着てるの」
「今も」
「そうなの」
「ええ、それとね」
 さらに話す恵理香だった。
「うちの体操服はね」
「白よ、上は」
「下は赤の膝までの半ズボンだけれど」
「黒だと透けない?」
「そうならない?」
「いえ、生地が厚めだから」
 まずは半ズボンを穿いてその上着を上から着て言う。
「だから見えないから」
「あっ、実際にね」
「確かに見えないわね」
「黒でも透けないわね」
「だからなの」
「これ着てるの、制服の時も」
 夏は半袖の生地が薄いブラウスだがだ。
「ほら、色が青だから」
「黒でも目立たない」
「だからなのね」
「下着が黒でもいいのね」
「それで構わないのね」
「夏でもね、確かに私もブラの色が透けたら嫌だから」
 このことは女の子としてだ。
「そこは気をつけてるけれど」
「それでもなのね」
「透けないからいい」
「黒でも」
「それで着てるのよ」
 その上着を着て裾のところをなおしつつ言う。
「別に校則でも書かれてないしね」
「流石に今時ね」
「下着までどうとかは書いてないわよね」
「幾ら何でもね」
「そんな学校もないわよね」
「だからね」
 校則で言われていないこともあってとだ、恵理香はクラスメイト達に笑顔で話した。
 だが学校の男子生徒達はその彼女を見てこう噂していた。
「玉出ってエロくないか?」
「ああ、何か妙にな」
「別にそんな顔じゃないのにな」
「服の着こなしもスタイルも」
「物腰も」
「別にそんなのじゃないのにな」
 それでもというのだ。
「けれどな」
「妙にエロいよな」
「何でなんだ?」
「何であんなにエロいんだ?」 
 このことに首を傾げさせて話していた。
「外見とか服装とか学年で一番地味な方なのに」
「何であんなにエロい雰囲気なんだよ」
「それが不思議だよな」
「どうにもな」
 こんなことを話していてそのことが女子達の耳に入ってだ、彼女達も恵理香を見てからそのうえで話をした。
「確かにね」
「あの娘妙に色気あるわよね」
「美人だけれどそんな美人じゃないのに」
 色気がある様なというのだ。
「スタイルもね」
「そんな色気ある風でもないし」
「服の露出もないし」
「物腰だって」
「そういう娘じゃないのに」
 色気を醸し出す様なタイプではないというのだ、要するに。
 だが、だ。彼女達もその色気を感じて話していた。
「けれどね」
「どうにもよね」
「あの娘色気あるのよね」
「学年で一番ない?色気」
「そうかもね」
 彼女達もこう話していた、そして自然とその色気の秘密を探し出す様になった。それで恵理香を見ているとだ。
 外見は何でもない、やはり。
 それでも何度も見ていてだ、遂にだった。
 あることに気付いた、それで水泳の授業で水着姿学校指定の競泳水着を着終えた彼女自身に言ったのだった。
「今わかったわ」
「どうして恵理香ちゃんが妙に色気があるのか」
「そのことがね」
「今わかったわ」
「えっ、色気って」
 そう言われてだ、恵理香は驚いて返した。
「私に?」
「今評判なのよ、恵理香ちゃん」
「色気があるってね」
「そうね」
「そうだったの」
 言われて気付いたという顔だった。
「私が色気がある」
「実際にね」
「見ているとね」
「恵理香ちゃん色気あるのよね」
「本当にね」
「私達から見ても」
 実際にそうだと話すのだった。
「それはどうしてかっていうと」
「そこが謎だったけれど」
「今わかったわ」
「今の恵理香ちゃんを見てね」
 その水着姿の恵理香を見ての言葉だ。
「それでよ」
「よくわかったわ」
「どうしてなの?」
 恵理香は友人達に首を傾げさせて尋ねた、頭に水泳帽を被りながら。
「私に色気があるっていうのもわからないけれど」
「それは下着よ」
「下着のせいなのよ」
「普段着けているね」
「それのせいなのよ」
「下着って」 
 言われてもわからない恵理香だった。
「どういうことなの?」
「だから恵理香ちゃん普段黒とか大人の下着じゃない」
「色がね」
「そうした色気のある下着を着けてるから」
「それで色気があるのよ」
「下着って見えないわよ」
 もっと言えば見せるものではない、恵理香は友人達にこう返した。
「それでもなの」
「だから着けてるだけでね」
「脱いだらエロいんですって感じになるのよ」
「それで色気が出るのよ」
「恵理香ちゃんがどう思ってるかに関わらず」
「そうした雰囲気が出るのよ」
「実際にね」
 今の恵理香も見て話すのだった。
「今の恵理香ちゃんスポーティーな感じだから」
「色気よりもね」
「競泳水着を着ているから」
「だからね」
「そうなの、競泳水着を着ていたら」
 恵理香は自分の今の身体を見た、競泳水着に包まれたそれを。ワンピースタイプの水着で身体のラインがはっきりと出ている。
「スポーティーな感じになっていて」
「それでなのよ」
「着ているものって出るのよ」
「下着でもね」
「そうなるのよ」
「そうなのね、身体に直接着けると」
 下着や水着はだ、こうした服は身体に直接着けるものだ。
「そうしたものが出るのね」
「そうみたいよ」
「特に恵理香ちゃんの場合はね」
「そうしたものが出るみたいね」
「そうしたタイプなのよ」
「そうだったの、それでね」
 ここでこうも言った恵理香だった。
「一つ気になることは」
「っていうと?」
「気になることはっていうと?」
「それは一体?」
「何なの?」
「いや、もうすぐ授業だから」
 恵理香が今気になっているのはこのことだった。
「だからね」
「授業ね」
「それに出ようっていうのね」
「そういうことね」
「そう、プールに行こう」
 その授業に出る為にというのだ。
「今からね」
「ええ、じゃあね」
「授業だったわね、これから」
「じゃあね」
「授業に出ましょう」
 友人達も言われてこのことに気付いた、それでだった。
 色気の話も丁度終わったのでそれでプールに出た、そうして授業に参加するのだった。
 これは恵理香が高校生の時の話だ、大学生になって彼氏にこのことを話すその彼氏である後輩はこう彼女に言った。
「それわかります」
「わかるの?」
「はい、先輩実際にですよ」
 こう恵理香に言うのだった。
「今色気感じますから」
「そうなの」
「はい、多分その下着のせいで」
 露出の低いお嬢様然とした服の下のだ。
「そうなってますよ」
「今日の私の下着の色黒だけれど」
「いや、言わなくていいですから」
 恵理香の天然には慌てて制止を入れた。
「そんなことは」
「そうなの」
「直接身に着けているものが」
「私の場合はなのね」
「出てそれで」
「今もなのね」
「色気があります」
 そうだというのだ。
「凄く」
「そうなのね」
「しかも先輩優しいし女子力もありますし」
 後輩は恵理香に目を輝かせつつ話した。
「最高に素敵です」
「そうなのね」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「先輩は出来たらです」
「出来たら?」
「僕と一緒にいる時は」
 その時はというのだ。
「そうして下さい、ただ他の人の前だと」
「その時はなので」
「気をつけて下さい、先輩が他の人に注目されて声とかかけられると困りますから」
 彼氏としてというのだ。
「そこはです」
「そうなの、じゃあ」
「はい、そこはです」
「わかったわ、じゃあね」
「出来ればです」
「下着には気をつけていくわね」
 こう言ってだ、恵理香は彼と二人でいる時だけ黒等の色気のある下着を着る様になった。天然であるが真面目な彼女の性格が出て色気は彼限定となったのである。


黒下着故に   完


                  2017・10・25

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