体重の秘密
高殿若菜はいつも自分のスタイルを気にしている、それで家でもよくこうしたことを言ってぼやいていた。
「また太ったの」
「あら、そうなの」
「うん、一キロね」
風呂から出て母に言った。
「太ってたわ」
「じゃあダイエットするの?」
「ちょっとね」
その一キロ分だ、太った分だけ。
「そうするわ」
「じゃあまた食べるものは」
「甘いものを控えてね」
「それでよね」
「御飯を減らして」
そしてというのだ。
「カロリーの少ないものを多くするわ」
「それで運動の量も増やして」
「もっと泳ぐから」
普段以上にというのだ。
「それで痩せるから」
「またあんたのダイエットがはじまるのね」
「またって何よ」
「だって二ヶ月前もだったじゃない」
その時もとだ、母はテレビを見つつお風呂上りのお茶を飲んでいる若菜に言った。太ったのでジュースではなくそちらを選んだのだ。
「その時は二キロだったけれどね」
「あの時は二キロの分ね」
「ダイエットしたわね」
「そうしたわ、それで今度はね」
「一キロよ」
その分だけというのだ。
「ダイエットするから」
「頑張ってねと言いたいけれど」
それでもとだ、母はお風呂上りにピンクのパジャマ姿でいささか艶めかしい感じも見せている娘に言った。
「そんなに気にしなくていいわよ」
「お母さんよくそう言うわね」
「傍から見ればあんた太ってないから」
親としてでなく客観的に見ての言葉だ。
「だからね」
「気にしなくていいの」
「ええ、全然ね」
こう言うのだった。
「気にしなくていいわよ」
「そうかしら」
「別にね、どうせ脂肪率もっていうんでしょ」
「そっちも増えてたわ、だからね」
「またダイエットなのね」
「一キロ、脂肪率の分頑張るから」
こう決意した若菜だった、そして実際にダイエット向きの食事に切り替えて甘いものは控えてだった。
運動の量も増やした、その介あってか目標の一キロはすぐに減った。それで若菜はクラスで笑顔で言っていた。
「いや、一時はどうしようって思ったけれど」
「ダイエット成功したのね」
「今回も」
「減ったわ」
一キロというのだ。
「本当によかったわ」
「それはよかったわね」
「ええ、本当にね」
「ダイエットが成功してね」
「よかったわね」
友人達も若菜にこうは言った、だが彼女に同時にこうも言った。
「正直気にし過ぎだと思うけれど」
「若菜ちゃんの場合はね」
「一キロとか二キロですぐに言うし」
「どうしよかって」
「それでダイエットに入るけれど」
「別にね」
幾ら何でもと言うのだった。
「そこまでって思うわ」
「気にし過ぎよ、ちょっと」
「それに若菜ちゃん太ってないし」
「それも全然ね」
「ウエストしっかりしてるじゃない」
「締まってる感じよ」
太っているとまずはそこに肉がつくがというのだ。
「足だってね」
「肉付きいい位だし」
「太ってはないわよ」
「むしろ健康的な感じよ」
実は男子生徒達の間では半ズボンから健康的な足が見えている若菜の体操服姿は結構な人気がある。
「お尻だってね」
「いい感じだし」
「それに特にね」
「そうよね」
皆若菜のある部分を見て言った、そのある部分はというと。
「胸は」
「何時見ても大きいわね」
「弾力もあるし形もいいし」
「立派な胸じゃない」
「胸は別に関係ないでしょ」
その話にはむっとして返した若菜だった。
「ダイエットには」
「というか胸が大きくなったんじゃ」
「その分太ったんじゃないの?」
「そうよね、成長期だしね」
「胸が大きくなって」
「それでね」
その分というのだ。
「体重が増えたんじゃ」
「それだけだったんじゃ」
「じゃあかえってダイエットはよくない?」
「そうかも」
「というか食べる量は減らしてないわよね、若菜ちゃんって」
「そうよね、ダイエットの時もね」
「いや、痩せたいなら食べろってね」
この言葉を返した若菜だった、友人達の今の質問には。
「言われてるでしょ」
「そういえばそうした意見もあるわね」
「食べると新陳代謝がよくなるって」
「その分運動すればいいって」
「下手に食べないよりは」
「だからなのよ」
この言葉に従ってというのだ。
「食べることは減らさないの」
「そうなのね」
「食べるものは変えても」
「甘いものは控えても」
「それでもなのね」
「そうしてるの」
こう友人達に話した。
「私はね」
「それはいいけれどね」
「けれど気にし過ぎよね」
「別に気にしなくていいんじゃ」
「そこまでしなくても」
「いや、どうしてもね」
若菜は気にし過ぎという友人達に自分の考えを述べた。
「気になるから、本当に太るのが好きじゃないの」
「そうなのね」
「それじゃあ太ったらまたなのね」
「ダイエットするのね」
「そうするのね」
「そうするわ、ただ自分の体重のことは」
それはと言う若菜だった。
「自分でも調べるわ」
「どうして太るか?」
「その原因をなの」
「調べるの」
「ええ、そうするわね」
こう言ってだ、実際にだった。
若菜は自分の体重というか身体のことを調べることにした、それは身体検査をしている保険の先生に聞いて調べた。するとこう言われた。
「君は骨太だよ」
「骨太なんですか」
「うん、しっかりとした骨格をしているね」
こう若菜本人に話した。
「その分体重があるよ」
「骨が太いとどうしても」
「あるよ、あと君の体重はそこにね」
確かな骨格に加えてというのだ。
「筋肉もあるから」
「それで、ですか」
「その分体重があるよ」
「脂肪率もありますけれど」
「脂肪率といっても色々でね」
先生は若菜が気にしているそれのことも話した。
「君のは上半身のだよ」
「そっちの脂肪率ですか」
「そう、下半身、ウエストとか足はね」
「特にですか」
「深刻にはついていないよ、君は水泳をしているよね」
女の先生が事務的に話していくが口調自体は温かい。
「いつもお水の中にいるから」
「あっ、だから」
「身体を冷やさない様にね」
「脂肪がですか」
「つくんだよ」
自然にというのだ。
「それはね」
「そうだったんですか」
「そう、だからね」
「私の脂肪率はですか」
「身体全体についているから」
「じゃあ太ったのは」
「今は三月、まだ寒いでしょ」
「それで二ヶ月前は」
二キロ太ったその時はというと。
「一月で」
「寒かったでしょ、寒い時に毎日温水でも泳いでいたでしょ」
「走ってもいましたけれど」
「自然と脂肪もつくわよ、というかね」
先生は若菜に聞いた、保健室で自分に話してくれる彼女に。
「痩せた後寒かったでしょ」
「はい、どうにも」
「脂肪が減ったからよ、だからそうしたことまでね」
「考えてですね」
「ダイエットをしないといけないの」
「そうだったんですか」
若菜は先生に言われてだった、そのうえで。
自分の身体を見てだ、こうも言った。
「わかりました、それじゃあ」
「そう、ダイエットはね」
「そうしたことも考えないと駄目よ」
「寒いと脂肪がつく」
「貴女食べるのは減らしてないでしょ」
「はい、ダイエットの時も」
「それはいいけれど冬は自然と脂肪がつく」
寒さを凌ぐ為にというのだ。
「特に貴女はそうした体質みたいだから」
「そういえば夏にダイエットしたことないです」
「そうでしょ、冬はそれでいいから」
「冬のダイエットはしないことですか」
「寒いのが嫌ならね」
「そうなんですね」
言われて頷いた若菜だった、それでもう冬にダイエットはしないことにした。実際に冬は太っていたが。
しかしだ、春になるとだった。
体重は戻った、それで若菜はある日学校に行く時に家で母に話した。
「もう冬にダイエットはしないから」
「あれっ、そうするの」
「ええ、何か先生に言われたら冬は脂肪がある方がいいからって」
その分体重が増えてもだ。
「いいっていうから多少位ならね」
「そうするのね、今度からは」
「ええ、じゃあもうね」
「そうよ、変に神経質になってもね」
「よくなみたいね」
「だからね、冬はダイエットしないで普通にいくわ」
食べてそうして運動をしてというのだ。
「やっていくわ」
「そうしてね、じゃあね」
「今日の晩御飯楽しみにしてるから」
「今日はステーキだから」
若菜の好きなそれだというのだ。
「果物も一杯あるし」
「そうなの、じゃあ楽しみにしておくわね」
「そうしてね、よく食べてよく動く」
「変に体重や脂肪率のことは気にしないで」
「そうしていってね」
こう娘に言って送り出した、送り出された若菜も明るい笑顔で学校に行った。
体重の秘密 完
2017・11・22
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