電気風呂
 谷六光は風呂好きだ、そそれで銭湯やスーパー銭湯に行くことも好きだ。だがそれで銭湯等に行ってもだった。
 光は家族で休日の軽いレジャーとして家族で行ったスーパー銭湯の中でだ、姉に対してこんなことを言った。
「ここは電気風呂ないわよね」
「スーパー銭湯はあまりないわね」
 姉は自分の服を脱ぎつつ妹に答えた、二人は今脱衣場にいてそのうえで一緒に服を脱いでいるのだ。
「電気風呂は」
「そうよね、じゃあ安心してね」
「いや、あんたあってもじゃない」
 その電気風呂があってもとだ、姉は光に言った。
「入らないでしょ」
「入りたくないからよ」
 それでと返した光だった、姉と話す間服を脱いでいる。見れば光も姉もスタイルは中々のものである。
「だから入る前にね」
「確かめてなの」
「入らないのよ」
「電気風呂ってそんなに悪い?」 
 姉は首を傾げさせて妹に問うた。
「私的には別にね」
「あのビリビリした感じが嫌なの」
 光ははっきりと答えた。
「だからなの」
「入りたくないのね」
「サウナやジェットバスや炭酸風呂はいいけれど」 
 光はこうした風呂は普通に入られる、むしろ好きと言っていい。
「水風呂もね」
「けれどなのね」
「電気風呂だけは」
 どうしてもというのだ。
「駄目だから」
「それでなの」
「そう、だからね」 
 それでというのだ。
「入らないから」
「電気風呂にだけは」
「そうするから、じゃあね」
「今からっていうのね」
「そうするわ」
 こう話してそしてだ、光は姉と共にまずは身体を洗いそれからサウナに入り途中何度か水風呂で身体を一旦冷やしながらミルク風呂や普通の風呂、炭酸風呂等を楽しんだ。電気風呂はなかったのでそれはよしとした。
 だが後日光は家族で今度は普通の銭湯にやはり軽いレジャーで行った、光はこの銭湯のことは知っていてだった。
 姉にも母にもだ、こう言った。
「ここ電気風呂あるけれど」
「入らないわね」
「ええ、絶対にね」
 こう姉に言った、風呂を入るその時に。
「入らないから」
「じゃあ普通のお風呂にだけなのね」
「入るから、ここのお風呂サウナもあるし」
「サウナには入って」
「水風呂にも入るけれど」
「電気風呂だけにはなの」
「そう、絶対によ」
 そこだけはというのだ。
「入らないから」
「そうするのね、しかし」
「しかしって?」
「あんたそもそも何であのビリビリした感じが嫌いなの?」
 姉は光にこのことを聞いてきた、二人で並んで席に座ってそこで身体を洗う用意をしつつ同じことをしている妹に。
「そもそも」
「そのことね」
「そう、どうしてなのよ」
「どうしてって子供の頃に入ってね」
 そうしてというのだ。
「あのビリビリとした感じを味わてt」
「それでなの」
「そう、うわってなって」
 そのうえでというのだ。
「それからなの」
「嫌になったの」
「そうなの、それでそれからはね」
「入らない様にしてるの」
「そうよ」
 実際にというのだ。
「今だってね」
「ううん、他のお風呂は好きなのに」
「それでもよ」 
 光は身体を洗いつつ姉に話した、姉は髪の毛をシャンプーで丁寧に洗っている。
「電気風呂は駄目だから」
「私は平気だけれどね」
 こう返した姉だった。
「あのビリビリした感じがかえってね」
「いいの」
「そうだけれどね」
「ううん、何処がいいのよ」
「そこは人それぞれね」
 姉の今の返事はあっさりしたものだった。
「あの感じがいいっていう人がいればね」
「私みたいにっていうのね」
「駄目な人もいるってことね、私は最初に入ってね」
 子供の頃にだ、このことは光と同じだ。
「いい感じだったから今もね」
「電気風呂に入るの」
「ここにあるしね」
 光ににこりと笑って答えた。
「そうするわ」
「そうなの、じゃあ私は普通のお風呂に入るから」
 姉が電気風呂に入る時はというのだ。
「それじゃあね」
「ええ、その時は別々でね」
「入りましょう」
 今度は光が髪の毛を洗い姉が身体を洗う、二人共まだそれぞれの泡が残っていて髪の毛の泡も身体の泡もシャワーで一度に落とした、そうしてすっきりとしてだった。
 二人はこの銭湯ではまず普通の風呂に入ったがやはり光は普通の湯の風呂に入る、そして姉は電気風呂に入り。 
 その独特の感触を目を閉じて味わってこう言った。
「この感触がいいのよね」
「そうなのね」
「あんたが苦手でもね」
「何処がいいのかってね」
「今思ってるのね」
「そうだけれど」
 実際にという返事だった。
「その感触がいいって」
「普通のお風呂じゃ味わえない」
「そういうのないから」
 光は自分が穿いている風呂の中から姉に返した。
「というか嫌なね」
「ビリビリとした」
「そんな感触だけれど、私にとっては」
「だからそれが違うから」
「お姉ちゃん的には」
「そうよ、私がこれがいいのよ」
「ううん、姉妹なのに」
 最も近い関係と言っていい、だがそれでもとここで思った光だった。銭湯の中は結構客がいて賑やかな感じだ。
「何でこんなに違うのかしら」
「お風呂のことは」
「そう、電気風呂が好きなんて」
「他のことは大体一緒じゃない」
 姉は電気風呂の中から妹に返した。
「サウナだって好きだし水風呂だって平気でしょ」
「まあね」
「ミルク風呂とか炭酸風呂も平気で」
「それはそうだけれど」
「じゃあ電気風呂だけだから」 
 好き嫌いが分かれるのはだ。
「別にね」
「こんなに違うとか」
「そんなに言うこともないでしょ」
 電気風呂のことだけでというのだ。
「そんなに深刻でもないじゃない」
「まあそうだけれどね」
「そうよ、じゃああったまった後は」
 湯舟でだ。
「水風呂で一旦身体冷やして」
「サウナね」
「スチームにする?それとも普通のサウナ?」
「普通でよくない?」
 少し考えてからだ、光は姉に答えた。
「別に」
「そう、それじゃあね」
「サウナに入って」
「そうしてね」
 そこで汗をかいてだ。
「また水風呂に入ってね」
「湯舟に戻って」
「すっきりしましょう」 
 心も身体もというのだ、姉妹でこうしたことを話しつつ銭湯も楽しんだ、そうして二人はすっきりとして風呂を出たが。
 風呂のマッサージ機に座る母を見てだ、姉妹で怪訝な顔になって母に言った。
「お母さんいつもよね」
「外でお風呂入ったそれよね」
「それに座って肩ほぐすわね」
「そうしてるわね」
「銭湯でもスーパー銭湯でもあれば」
「最後はこれをしないと駄目なのよ」
 二人の母はまだまだ若く奇麗な外見だ、だがそれでも今はそのマッサージ機に座って肩をほぐしてもらいながらリラックスした顔でいる。その顔で娘達に応えたのだ。
「お母さんはね」
「何かおばさん臭いわね」
「そうよね」
 姉妹で言う、その母を見て。
「何かね」
「そこで肩ほぐしてもらうと」
「完全におばさんじゃない」
「最後はこれがないと駄目って」
「これがいいのよ」
 リラックスした顔のまま言う母だった。
「あんた達もそのうちわかるかもね」
「いや、わからないから」
「私達肩凝らないし」
 まだ若くて肩を動かす運動をよくしている二人の池は一緒だった、姉はテニスをしていて光は水泳である。
「それじゃあね」
「そんなの必要ないし」
「というかお風呂で肩ほぐれない?」
「そこで肩凝りなおるでしょ」
「だから中々なおらないのよ」
 普通に風呂に入ってもというのだ。
「お母さんの肩凝りは結構きつくてね」
「加齢でそうなるの?」
「ひょっとして」
「そうよ、まああんた達もお母さんの年齢になったらわかるわ、お父さんもそうだし」
 二人の父であり自分の夫のことも話した。
「お風呂、こうしたところのお風呂の最後はこれだってね」
「これじゃあ電気風呂の方がまだお洒落なんじゃ」
 光はそんな母を見てこうも思った。
「まだね」
「同感、私も大人になってもね」
「何かおばさん臭いからね」
「マッサージ機のお世話にはね」
「なりたくないわね」
 このことは二人共同じだった、光は電気風呂以上にマッサージ機には抵抗を覚えた。まだ中学生の彼女はそう思ったのだった。将来の自分の姿には思いも寄らず。


電気風呂   完


               2017・11・26

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