才媛の周り
生徒会長佐藤由衣は学業でも部活でも高い評価を受けている、それだけでなく人格面でも評判はよかった。
しかしその彼女の最大の武器はそうしたものではなかった、よく後輩達は由衣についてこうしたことを言っていた。
「生徒会長やばいよな」
「ああ、制服だとわからないけれどな」
「スタイルいいよな」
「胸はもう前に思いきり出ててな」
「お尻は安産型でな」
「身体全体がエロ過ぎだろ」
「高校生の身体じゃないぜ」
そのスタイルについて話すのだった。
「スカートから出てる生足だってな」
「あの脚もないよな」
「体操服の時の会長見たか?」
「ああ、半ズボンからの足な」
「あれもいいよな」
制服の時とはまた違ってというのだ。
「体操服の上も胸の形がはっきり出てな」
「もう俺見ているだけで我慢出来ないぜ」
「俺もだよ、しかも本人さんがな」
「そういうのに気付いてないからな」
「それも全然な」
それこそというのだ。
「無防備なんだよな、あの人」
「普通に近くに来てくれるからな」
「誰でもな」
由衣は公平な性格で相手の外見がどうであっても気にしないでそれで優しく接するのだ。このことも評判である。
「それもすぐにスキンシップしてくて」
「胸とか足が触れたりとかな」
「俺生徒会の仕事手伝ってそうなったぜ」
「俺もだよ」
「もう二人きりだったって思ったらな」
「危なかったな」
由衣の無防備さに余計に我慢出来なくなっていた、それで男子生徒達は彼女について色々思い言うのだった。
しかし由衣本人は気付かない、今も普通に生徒会室において生徒会長の仕事をしているがその彼女にだ。
男子の生徒会長、つまり生徒会の仕事においては一番由衣と共にいる彼が隣の席にいる彼女に言った。
「あの、佐藤さん」
「どうしたの?」
「最近何もなってない?」
由衣のスタイルと無防備さを気にしての言葉だ。
「おかしな人に付きまとわれたりとか」
「そんなの全然ないわよ」
由衣は笑って彼に答えた。
「平和そのものよ」
「本当に?」
「ええ、何もないわよ」
嘘は言わない由衣の返事である。
「本当にね」
「平和なんだ」
「北朝鮮は危ないけれど」
「あそこはいつも危ないから」
「そうよね」
「だから置いておいて」
この国のことはというのだ。
「まあとにかくね」
「私にっていうのね」
「何もないんならいいけれど」
「心配してくれてるの?」
「そうだよ」
彼も嘘を言わずに答えた。
「だから聞いたんだけれど」
「本当に何もないから」
「そうなんだね」
「ええ、そうよ」
「じゃあいいよ」
男子の生徒会長は由衣本人にはこれで終わった、だが。
彼は生徒会の他の面々に対してはだ、こう言った。
「佐藤さん自身はこう言ってるけれどね」
「そんな筈ないでしょ」
「あの人が気付いてないだけで」
「佐藤さんあれで天然だからね」
「あのスタイルであの無防備なら」
それこそというのだ。
「絶対に変な奴いるわよ」
「実際に男子生徒でそういう感情持ってる子多いわよ」
「もう我慢出来ないとか」
「だからね」
「絶対に誰か変なの近くにいるから」
「今だって」
「僕もそう思っているからだよ」
男子の生徒会長は生徒会の他の面々に言った、副会長や書記といった面々だ。彼を含めて数人で話をしている。
「それなら」
「それならよね」
「それじゃあ」
「ここは」
「佐藤さんに気付かれないうちにね」
本人にはというのだ。
「調べてそうして悪い芽があれば」
「摘む」
「そうするのね」
「そして砂糖さんに危害が及ばない様にする」
「そうしていくのね」
「そうしていこう」
男子の生徒会長に反対する者はいなかった、それで由衣本人以外の生徒会の面々で由衣の周りを見て回った。
そうするとだ、由衣は実に無防備で彼女をそうした目で見る面々は確かにいた、しかし校内では幸いにだった。
大人しい校風のお陰でおかしなことをする者はいなかった、それは教師や職員達もであった。だが学校の外では。
一人明らかな者がいた、毎日彼女が登下校の時に密かに尾行している下品な顔をした七十近い背中の曲がった男であった。その男はというと。
「ええと、清原米輔か」
「前科六犯、痴漢の常習犯か」
「中学卒業から空き巣を生業としていたって」
「冗談抜きにとんでもない奴じゃない」
「こんな奴が佐藤さんを見てるって」
「これは」
「すぐに警察に通報しよう」
男子の生徒会長がここで言った。
「そうしよう」
「それがいいな」
「相手は前科六犯だし」
「何か覚醒剤やってる感じだし」
明らかに挙動不審でハイテンションだった。
「それじゃあ」
「すぐに通報してな」
「刑務所に送ってやる」
「証拠写真も送ってやる」
こう言ってだ、清原米輔が由衣を見ている場面を携帯で撮ってだった。
その画像と一緒に警察に通報した、するとこの男は無事にストーカー容疑及び麻薬取締法違反で死ぬまで刑務所に入ることになった。
由衣の難はこれで去った、しかし生徒会の面々は無防備さはそのままの彼女を見ていてまだ心配していた。
「大丈夫かな、佐藤さん」
「本当に無防備だから」
「どうにかならない?」
「このことは」
「どうしたものか」
「この状況は」
「こうなったら」
ここで男子の生徒会長が知恵を出した。
「もうね」
「もう?」
「もうっていうと?」
「ご両親にお話して」
由衣のというのだ。
「そうして佐藤さんを注意してもらおう、そして僕達からもね」
「佐藤さんに言って」
「つまり周りで言ってそうして」
「無防備をなおしてもらう」
「そうしてもらうんだ」
「そうしよう、何かあったら駄目だ」
そうなってからは遅いというのだ。
「だからね」
「それじゃあね」
「これからは」
「そうしていきましょう」
こうして由衣の両親に密かに話して自分達も何処となく彼女に言う様にした、すると由衣は人にあまり触れたり近寄ったりしなくなり仕草もガードが出た、こうして彼女をそうした目で見る者はいなくなったが。
男子の生徒会長はその由衣を見てこうも言った。
「ガードは堅くなったけれど」
「けれど?」
「まだ何かあるの?」
「うん、妙にね」
当人以外の生徒会の面々に言うのだった。
「大人になった感じがするかな、佐藤さん」
「ガードを固めたら」
「そうしたら」
「そんな風に見えるのは気のせいかな」
その由衣を見て思ったことを言うのだった。
「妙に」
「元々大人っぽい外見だから?」
「根はしっかりしてるし」
「だからかな」
「そのせいでかしら」
「そうかもね、けれそれはそれで」
大人の雰囲気を備えてきた由衣もというのだ。
「色気があるね」
「確かに、あれはあれで」
「大人の雰囲気が出て」
「触りたくはないけれど」
「大人の色気を感じるわね」
「うん、それはそれで心配だね」
由衣の身近にいる者として言うのだった、彼のそして周りの面々の由衣についての心配の種は尽きなかった。
才媛の周り 完
2017・12・23
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