橋の守護神
 大淀橋女は大阪の数多い橋を護っている大阪二十六戦士の一人である、だがその彼が今思うことはというと。
「もっと頑丈な橋を造らないと駄目ね」
「鉄筋とかコンクリートじゃ駄目ですか?」
「そうした橋ならですか」
「駄目ですか」
「そうなんですか」
「ええ、現状に満足せずにね」
 それこそとだ、橋女は自分が経営している会社の社員達に話した。
「もっともっとよ」
「頑丈な橋を造って」
「そうしてですか」
「橋が壊れない様にするんですね」
「大阪の橋を」
「そうよ、橋は大事でしょ」
 川の多い大阪では特にとだ、橋女は言った。着ている見事な着物を艶やかに動かしつつ。
「場所と場所をつなぐ場所だから」
「壊れて困らない様に」
「今以上に頑丈な橋を造っていきますか」
「台風にも鉄砲水にも負けない」
「どんなものでも上を通られる」
「そうよ、怪獣が渡ってもね」
 それこそというのだ。
「平気な位のね」
「橋ですか」
「そうした橋を造りますか」
「これからそうしていきますか」
「そのつもりよ、昔橋はね」
 橋女はかつての木の橋のことをここで話した。
「もう台風とか大水ですぐによ」
「壊れたんですよね」
「それでしょっちゅう造りなおしてましたね」
「そうだったんですね」
「そうだったのよ、そのことを思うと今の橋は頑丈だけれど」
 鉄筋やコンクリートの橋はというのだ。
「もっともっとよ」
「頑丈な橋ですか」
「もっと壊れてにくい」
「今以上に確かな橋を築いていきますか」
「そうするから、現状に満足はね」
 それはというと。
「したらそれで終わりよ」
「そうですね、確かに」
「現状に満足していては先に進めないです」
「企業としてもそれはよくないです」
「では」
「もっといい橋を造るのよ」
 こう言ってだった、橋女自身も橋の建設に関わってそうして今以上に頑丈な橋を造ろうと努力した。すると。
 前よりも頑丈な橋が出来た、橋女はその完成した橋を見てまずはこう言った。
「いい橋ね」
「はい、今までで一番頑丈です」
「相当に頑丈な橋ですよ」
「どんな重いトラックが上を幾ら通ってもびくともしません」
「堤防みたいに頑丈ですい」
「そうね、けれどね」
 ここでだった、橋女は厳しい顔になって社員達に話した。
「次に造る橋はね」
「この橋以上にですね」
「頑丈な橋にするんですね」
「もっと壊れにくい橋にしますね」
「そうしていきますね」
「そうよ、次の橋を造る話が来てるでしょ」 
 橋女が経営する会社にだ。
「だからね、すぐにね」
「その橋の建設にかかって」
「そしてその橋はですね」
「今以上に頑丈な橋にしますか」
「この橋以上に」
「その次の橋もよ」
 先の先の話もだ、橋女はした。
「いいわね」
「はい、もっとですね」
「もっと頑丈な橋にしますね」
「そしてさらにその次の橋は」
「さらにですね」
「そうしていくわよ」 
 こう言ってだ、橋女は頑丈な橋を造らせてはその次の橋はさらに頑丈な橋を建設していった。そうしていくとだった。
 大阪に伊勢湾台風や室戸台風をも凌駕する巨大な台風が上陸した、この時橋女は他の大阪二十六戦士達と共に災害救助にあたっていた。
 この時にだ、他の戦士達が橋女に尋ねた。
「橋女さん、橋は無事か!?」
「大阪の橋は大丈夫か!?」
「橋が壊れると大変だぞ!」
「大阪は川が多いからな!」
「ええ、安心して」
 橋女は仲間であり常に苦楽を共にしている彼等にすぐに答えた。凄まじい暴風雨から大阪の街と人々を護る為に力を使って台風に向かいながら。
「こうした時に備えて既にね」
「頑丈な橋を造っておいたか」
「そうなんだな」
「この台風にも負けない様な」
「そんな頑丈な橋をかい」
「そうよ、こんな台風には負けないわよ」
 橋女は確かな自信を以て答えた。
「何があってもね」
「よし、橋女さんが橋について言うことだ」
「なら大丈夫だな」
「橋は安心していい」
「我々は他の場所を護ろう」
 仲間の戦士達も頷いた、そしてだった。
 彼等は台風から大阪を護る為に大阪の街の中を駆け回った、そうして見事大阪の街と人々、そこにいる生きもの達を守り抜いた。台風は大阪を通過していったが。
 大阪の橋は一つもヒビ一つ入っていなかった、戦士達はその橋達を見て唸った。
「どの橋もヒビ一つ入っていないぞ」
「これは凄いな」
「ああ、流石は橋女さんが造った橋達だ」
「どの橋も大丈夫だったな」
「ええ、ただ次に造る橋はもっと頑丈なものにするわ」
 橋女はそのヒビ一つ入っていない橋達を見て笑みを浮かべた、しかしそれは一瞬ですぐに顔を弾き締めさせて仲間達に話した。
「前に造った橋よりもね」
「そうしてどんどん頑丈な橋にしていってか」
「どんな災害にも耐えられる橋にするんだな」
「上をどんなものが幾ら通ってもびくともしない」
「そんな橋にしていくんだな」
「そのつもりよ、橋にの頑丈さに限りはないから」
 だからこそというのだ。
「これからもね」
「そうか、頑張ってくれよ」
「これからもどんどん頑丈な橋を造ってくれよ」
「そうして大阪の人達を助けてくれ」
 戦士達はその橋女に暖かい声をかけた、台風が通り過ぎた後の大阪はすっきりとした天気になっていた。雨も風も過ぎ去った晴れ渡っている空の下で大阪の橋達を見ながら彼等は決意をあらたにする橋女を見て自分達も笑顔になっていた。


橋の守護神   完


                 2017・12・25

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