悩みの告白
優木愛は一つの悩みがある、だがそれは彼氏には言っていない。
「言うに言えないでしょ」
「あんたの悩みはね」
「そうよね」
「ええ、便秘はね」
これが愛の悩みだ、いつもこのことで悩み苦しんでいるのだ。
「彼氏には言えないわよ」
「そんな悩みはね」
「女の子で悩んでる娘多いけれどね」
「肌荒れとかじゃないから」
「言える筈ないわよ」
「とてもね」
職場の同期の友人達も口々に言う。
「流石にね」
「幾ら付き合っていてもね」
「どうしてもね」
「このことだけはね」
「言えないわよ」
「そう、しかも今もね」
愛は困った顔で言う、給料が入った後なので仕事が終わってから皆で食べ飲み放題の店で鉱物の焼き肉を食べていてその中で言うのだった。
「これがね」
「ああ、今もなのね」
「それだけで充分よ」
「食べながらお話することじゃないから」
「だからね」
便秘の名前は出していてもだ。
「言わなくていいから」
「何かもうあれよね」
「大人になるとなっちゃうのよね」
「どうしてもね」
「いや、お野菜も食べてるのよ」
努力のこともだ、愛は話した。
「毎日ね、果物も食べてね」
「その中で牛蒡も食べてるわよね」
「あと牛乳も飲んでヨーグルトも食べて」
「愛ちゃんちゃんとそうしてるわよね」
「あとジムにも通って運動もしてるし」
「それでもなのよ」
努力はしていてもというのだ。
「中々ね」
「治らないのね」
「それあるわよね」
「努力しても中々って」
「便秘もね」
「お腹一杯食べたらって人もいるけれど」
愛はこうした人は心の底から憧れている、それだけで悩みが解決するなら何と素晴らしいことであるかと。
「私はね」
「出ないのよね」
「例えお腹一杯出ても」
「それでもよね」
「プルーンを食べてもね」
効くというこれもだ。
「私の場合はね」
「そうよね」
「とにかく出ないのよね」
「私もその傾向あるしわかるわ」
「私もよ」
皆自分達のテーブルの網の上で焼き肉を焼きジョッキのビールを飲みながら話す、肉はこれでもかと用意してある。
「そのことは」
「由々しき問題なのよね、女の子にとっては」
「それがどうしたものか」
「困るのよね」
「けれど男の人にはわかりにくいことだし」
男の方が便秘が少ないからだ、それで愛達はこのことについて異性を羨ましく思うこともあったりする。
「まして付き合っていてもね」
「こればかりは言えないわ」
「水虫とかになっても言えないでしょうけれど」
「これもね」
「ええ、だから内緒よ」
まさにとだ、愛は大好きなビールを飲んでから答えた。
「彼氏にはね」
「こればかりはね」
「他に隠すものがなくてもね」
「便秘だけはね」
「言えないわよね」
「そうよ、確かに水虫になったとしたら」
さっき話に出たこれのことも言う愛だった。
「絶対に言えないけれどね」
「言える筈ないわよね」
「女の子が水虫とかね」
「そんなの言えないわよ」
「男の人でも辛いでしょうし」
彼女に言うことはというのだ。
「こっちも言えないわね」
「水虫も」
「そうよね、しかも今の彼氏はね」
愛はこうも言った。
「久し振りにできたしね」
「そうそう、愛ちゃんずっとね」
「彼氏いなかったわよね」
「縁がなくて」
「それでよね」
「結婚もね」
このこともと言う愛だった。
「そろそろね」
「私達もそうよ」
「もうそろそろね」
「考えないといけないし」
「それじゃあね」
「今はね」
「そう思ってるしね」
それでというのだ。
「余計に、こうしたことはね」
「言えないわよね」
「結婚考えてるなら余計にね」
「マイナス印象になるから」
「便秘とかね」
「だからもう絶対に言わないし隠していくわ」
絶対にという口調だった。
「そうしていくわ」
「それがいいわ」
「こうしたことはね」
「もうお墓まで持って行く」
「そうしないとね」
友人達も愛と同じ意見だった、そうした話をしつつも給料が入ったお祝いの焼き肉とビールを楽しんでいた。
愛はこの日も次の日も便秘に悩んでいた、彼氏には言っていないがそれでもだった。便秘自体は続いていた。
それが十日続いた、その十日目にだった。
愛は休日彼氏と一緒にデートをしていた、それでなんばCITYで買いものをしていたその時に急にだった。
来た、そう感じて彼氏に笑顔で言った。
「ちょっといい?」
「どうしたの?」
「おトイレ行きたいの」
こう言うのだった。
「これからね」
「そうなんだ、じゃあね」
「悪いけれど少し待っててね」
「わかったよ、それじゃあね」
彼氏は近くの店に入って時間を潰すことにした、そしてその間にだった。
愛はトイレに行った、そうしてだった。
暫くして満面の笑顔で出て来てだった、彼氏のいる店まで行って言った。
「お待たせ」
「待ってないよ、じゃあね」
「ええ、お買いもの再開しましょう」
「それじゃあね」
彼氏も笑顔で応えた、そしてだった。
デートは再開された、だがその彼は次の日彼の職場で友人達に休憩時間に話した。
「昨日やっとね」
「ああ、付き合ってる娘がか」
「出たんだな」
「そうなんだな」
「うん、もう凄い笑顔だったよ」
愛の満面の笑顔を思い出しながらの言葉だった。
「これ以上はないまでにね」
「そうだったんだ」
「御前の彼女それで困ってるんだよな」
「それで久し振りにか」
「遂にか」
「何かね、女の人はね」
彼氏は考える顔で話した。
「よくなるみたいだね」
「そうみたいだね、どうも」
「便秘になりやすいみたいだね」
「それで困っている人も多いね」
「そうみたいだね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「よかったよ」
「だよな、ただ彼女さん言ってないだろ」
「便秘のことは御前には」
「一切言ってないだろ」
「言ってないよ、けれどわかるんだよ」
愛のそのことがというのだ。
「だって行く前は期待する笑顔でね」
「それで出た時は満面の笑顔」
「だからわかるんだな」
「行く前と出た後で」
「その時に」
「そうなんだ、本人は言わないけれど」
愛自身はというのだ。
「それでもね」
「見ればわかるか」
「それでか」
「相手の娘が言わなくてもわかって」
「御前も気にしていたんだな」
「そうだったんだ、それで昨日ね」
まさにというのだ。
「出てよかったよ」
「出たこともわかるんだな」
「それもはっきりと」
「そうなんだな」
「そうさ、まあとにかくあの娘の悩みも解決して」
出て、というのだ。
「僕も嬉しいよ」
「些細っていえば些細だけれどな」
「恋人の悩みが解決したから」
「本当によかったな」
「そう思うよ」
こう言ってだった、彼は愛のことを心から喜んでいた。そうしてだった。
彼は愛がまた悩んだ時は自分も内密に力になろうとも考えた、愛はこのことに気付いていなかったが後々彼には生涯に渡ってこのことでも他のことでも助けられていった。
悩みの告白 完
2017・12・26
ミラクリエ トップ作品閲覧・電子出版・販売・会員メニュー