吹き荒れよトルネード
 港英雄の力は竜巻だ、戦いの際には身体からその竜巻を起こして戦う。
 その為かなりの強さを誇っている、しかし英雄は力を滅多に使わない。普段は大阪の港で楽しく働き高校に通っている。
 その彼にだ、大阪の子供達は尋ねた。
「英雄さんは滅多に竜巻出さないよね」
「物凄く強いのに」
「それはどうしてなの?」
「何でいつも竜巻出して使わないの?」
「そうしないの?」
「それはあまりにも強い力だよ」
 だからだとだ、英雄は子供達に答えた。
「僕も竜巻を滅多に出さないんだよ」
「あまりにも強いから」
「そうした力だから」
「だからなんだ」
「竜巻を滅多に出さないんだ」
「そうするんだ」
「そうだよ、あの力は確かに強いよ」
 英雄自身が一番よくわかっていることだ、竜巻がどれだけ強いか。
「けれどあまりにも強いからコントロールが大変でね」
「若しコントロール出来なかったら?」
「その時はどうなるの?」
「英雄さんの出した竜巻は」
「一体どうなるの?」
「その時は大阪の街や皆に大変な被害を与えてしまうからね」 
 だからだというのだ。
「僕は竜巻を滅多に使わないんだ」
「普段は自分の手や足で戦っているんだ」
「竜巻を出して使わないで」
「災害救助の時も僕達を助ける時も」
「そうしているんだ」
「そうだよ、僕が竜巻を使う時はね」
 滅多にないその時はというと。
「それだけの時だから」
「使うしない様な」
「そうした時なんだ」
「じゃあ竜巻を使ったら」
「その時は」
「本当に大変な時だよ」
 こう子供達に話した、英雄は実際に竜巻は滅多に使おうとせず自分の手足を主に使って戦い災害救助にもあたっていた。
 だがある日のことだ、大阪の空に突然異様な姿をした鳥が姿を現わした。その鳥は数えきれない程いてしかもその影は。
「人の影!?」
「しかも頭は鹿だぞ」
「足もだ」
「何だあの鳥は」
「見たことのない鳥だぞ」
「ペリュトンだ!」
 誰かがその鳥の名前を叫んだ。
「あの鳥はペリュトンだ!」
「ペリュトン!?あの人を殺す怪鳥か!」
「どんな武器も通用しないという」
「あの伝説の鳥が大阪に攻めてきたのか」
「何てことだ!」
 誰もがペリュトンが来たと聞いて驚いた、この鳥はどんな武器も通用せず人を殺すことを生きがいとしている人の影を持つ謎の怪鳥なのだ。
「皆逃げろ!」
「ペリュトンにはどんな武器も通用しないぞ!」
「向かっていっても駄目だ!」
「安全な場所まで逃れろ!」
「早く逃げるんだ!」
 皆慌てて逃げる、だが大阪二十六戦士達はペリュトンにも果敢に向かう。確かにペリュトンにはどんな武器も通用しない。
 しかし拳や術、自然現象は別だった。その為戦士達がそれぞれの拳や力で戦いペリュトン達を倒していった。だがその数はあまりにも多く。
 彼等も倒しきれずペリュトンが大阪の街に迫り大阪の市民達を襲おうとしていた。その中で遂に戦士達はそれぞれの力を最大限に出し空を埋め尽くさんばかりのペリュトン達を倒していった。それは英雄も同じで。
 彼も空に舞い上がり両手を横に肩の長さに垂直に上げて駒の様に激しく回転し自らの周りに巨大な竜巻を起こした。そうしてだった。
 空を飛び荒れ狂いペリュトン達を瞬く間に薙ぎ倒していった、あらゆる武器も通じないペリュトン達も彼の竜巻には敵わず何と彼一人で何万もいたペリュトン達の半数を倒した。
 その彼の活躍を見てだ、大阪の子供達はわかった。
「あのペリュトンの大群の半分を倒すなんて」
「英雄さんの竜巻って本当に凄かったんだね」
「まさかそんなに強いなんて」
「僕思わなかったよ」
「僕もだよ」
「あれだけ強いからだね」
「英雄さんも滅多に使わないんだ」
 このことが今わかった。
「若しあんな力がコントロール出来なかったら」
「その時はペリュトンどころかね」
「大阪の街が粉々にされるよ」
「あんなに強いペリュトンをあっという間に沢山やっつけたんだから」
「コントロールするのも大変だね」
「僕そのことがわかったよ」
「僕もだよ」
 子供達は口々に話した、何故英雄が自らの竜巻の力を使わないのか。そして英雄は戦いが終わった時に子供達に話した。
「若しもあの竜巻をコントロール出来なくなったら」
「ペリュトンじゃなくて大阪の街に行ったりしたら」
「大阪の街の方が大変だよね」
「竜巻で粉々に破壊されて」
「そうなるからだね」
「だからだね」
「英雄さんも滅多に使わないんだね」
 子供達は英雄に対しても話した。
「よくわかったよ」
「本当にいざという時の切り札なんだね」
「もうこれしかない」
「そうした時に出すものなんだ」
「あの時僕は必死に竜巻をコントロールしていた」
 あの巨大な竜巻をというのだ。
「そうしながらペリュトン達をやっつけたんだ」
「そうしていたんだ」
「若しコントロール出来なくなったら」
「もうその時は」
「大阪の街が大変になりかねないから」
「そうしていたよ、そして何とかなった」
 まさにと言うのだった。
「よかったよ」
「そうだね、じゃあね」
「英雄さんはこれからもだね」
「竜巻を滅多に使わないんだね」
「あまりにも強くてコントロール出来なくなったら大変だから」
「そうだよ、竜巻は滅多に使わないから」
 英雄はこのことを強い声で言い切った。
「これからもね、そのうえで皆を守っていくから」
「わかったよ、それじゃあね」
「僕達もその英雄さんを応援していくよ」
「これからも頑張ってね」
「大阪の街と僕達の為に」
「そうしていくよ」
 英雄は大阪の子供達に笑顔で頷いた、そうして自身の力である竜巻をずっと最後の切り札にしていこうと決意した。あまりにも強い恐ろしい力であることを自覚しているが故に。


吹き荒れよトルネード   完


                  2018・2・21

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