邪悪の権化
全世界の悪の巣窟と言われる某ビッグエッグ。そこのオーナー席にこの男はいた。
悪野巨人、人が考えられる限りの悪事を嬉々として行っているジャビット団を率いてこの世を悪に染めんとする極悪非道の輩だ。
巨人は今オーナー席で手下共の報告を聞いていた。
「そうか、あの選手もか」
「はい、札束で頬を叩いてやってです」
その手下はドス黒い笑みで巨人に報告していた、葉巻を吸いブランデーを飲み玉座に傲慢に座っている彼に。
「そうしてです」
「そうか、それは何よりだ」
「ではあの選手もですね」
「チームで使え、そしてな」
「成績が落ちればですね」
「お払い箱にしろ」
巨人は傲然と言い放った。
「いいな」
「はい、使い捨てですね」
「所詮は外様だ」
金で補強した選手はというのだ。
「だからな」
「役に立たなくなればですね」
「金は払ってやったんだ」
それでというのだ。
「もういいだろう」
「はい、それでは」
「徹底的に使い潰してやれ」
巨人は葉巻を吸いつつ言った、そうして。
別の手下にだ、こう問うた、
「大阪はどうなっている」
「はい、今度は襟立女が行きます」
その手下が巨人に答えた、暗く禍々しいオーラに満ちたオーナー室の中で。
「海から」
「そうか、若し作戦に失敗すればな」
「襟立女はですね」
「無能はジャビット団には必要ねえんだよ」
巨人の口調が突然変わった。
「だからな」
「作戦に失敗すれば」
「襟立女もだ」
その彼女もというのだ。
「遠慮なくだ」
「粛清ですね」
「俺の言う通りに出来ない奴は誰だってそうなんだよ」
ジャビット団の者は誰でもというのだ。
「死刑だ、いいな」
「では」
「襟立女もそうしろ、所詮駒だ」
手下はこう思っていた、そしてだった。
襟立女が敗れ国会議事堂の前に頭から逆さまに柱の如く突き刺さって帰って来たと聞いて冷たく言い放った。
「殺せ」
「わかりました」
手下達も何でもない調子で答えた。
「そうさせて頂きます」
「その様に」
「次の奴を送れ」
巨人はもう襟立女のことはどうでもよくなっていて手下達に告げた。
「いいな、次は誰だ」
「はい、よしりん男です」
怪人の製作者が答えた。
「ゴーマニズムパワーの持ち主で福岡から引っ張ってきました」
「わかった、じゃあな」
「今よりですね」
「そいつを送れ」
よしりん男をというのだ、こうしてだった。
今度はよしりん男が大阪に送り込まれることになった、その作戦を許可してからだった。
巨人はジャビット団の試合を観た、見ればドームの一塁側にはジャビット団の信者達が集い彼等の試合を観ていたが。
ジャビット団はこの日もだった、無様に敗れていた。
「鳥谷四打席連続ホームラン!」
「藤浪これでジャビット戦三試合連続完封です!」
「ジャビット団これで二十連敗!」
「堀内終身監督怒っています!」
実況は祭りになっていた、巨人はその実況まで聞いて激怒していた。
「バッキャロバッキャロ!」
右手の人差し指を立ててブンブン振り回して喚く。
「何やってんだ!」
「しょ、勝負は時の運です」
「こうしたこともあるのでは」
手下達は激昂する巨人に慌てて言った。
「二十連敗もです」
「首領、どうかここは落ち着いて下さい」
「また黄金時代が来ます」
「今度は十連覇しますよ」
「じゃあもっと金積んで補強しろ!」
オーナー席から立って叫んでいた。
「ジャビット団はいつも日本の盟主でないといけないだぞ!」
「は、はい。表の経営のマスコミはそろそろ火の車ですが」
「金もそろそろ尽きてきましたが」
「それでもやっていきます」
「補強を」
「そうしろ!世界は俺のものだろうが!」
巨人は根拠もなくこう思っている。
「俺の思い通りにならないものはないんだ!」
「わ、わかっております」
「すぐに金を積んで他チームから選手を強奪してきます」
「最近うちに来るよりもメジャーに行っていますが」
「そうしていきます」
手下達は慌てて巨人に言う、巨人はその言葉に一旦は落ち着いたが。
翌日よしりん男が大阪市長の変節ゴーマニズム完全終了キックを受けて肥溜めに叩き落されたと聞いてだ、よしりん男についてこう言った。
「消せ」
「わかりました」
「ジャビット団に無能はいらねえんだよ」
不機嫌な顔で言った、そうしてまた次の悪事を命じるのだった。巨人はまさに永遠の究極の悪役であった。その行動や発言の全てが。
邪悪の権化 完
2018・2・23
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