刺激的な出しもの
 田辺紀香は大学のサークルの忘年会で何か隠し芸はないかと聞かれた、すると紀香は笑顔でこう答えた。
「物真似出来るけれど」
「物真似って誰の?」
「誰の物真似出来るの?」
「阪神タイガースの選手の人の物真似なら百人位」
 それ位だというのだ。
「出来るけれど。あとコスプレも」
「コスプレってアニメキャラとか」
「そういうの?」
「ええ、魔法少女にも軍人にもなれるし」
 笑ってだ、海苔かは同じサークルの友人達に答えた。
「女子高生にも中学生にもね」
「なれるの」
「どっちにも」
「そうなの」
「そう、なれるから」
 それでというのだ。
「どっちでもいいわよ、私は」
「コスプレが出来るってことは」
「ひょっとして紀香ちゃん自身そうしたコスプレ持ってるの」
「ひょっとして」
「そうなの、実は彼氏の趣味で」
 このことは小声で、その小声は友人達にも聞こえない様にして出した。
「持ってるの」
「あれっ、誰の何て?」
「そこは聞こえなかったわ」
「けれど持ってるの」
「そうなの」
「色々とね、ネットオークションで安く買って持ってるの」
 そうした衣装をというのだ。
「かなりね」
「どんなの持ってるの?」
「色々っていうけれど」
「それよかったら見せてくれる?」
「それで確かめたいけれど」
「ええ、じゃあうちに来て」
 紀香は友人達に闊達に応えた、そうして彼女達を家に招いてそうしてだった。まずはコスプレ衣装を出してだった。
 着ていった、まず着るものはというと。
 上は白い体操服そして下は濃紺のブルマだった、友人達はそのもうどの学校でも使用されていないその恰好に唖然となった。
「えっ、それは」
「ちょ、ちょっと以上にまずいわよ」
「そんなのサークルの男連中が見たら」
「紀香ちゃんのスタイルで」 
 そのあまりにも懐かしい、だがそれ以上に性犯罪を促進するその衣装に友人達は慌てふためいて言った。
「無理よ」
「その恰好で出て隠し芸とか」
「色々キャラいそうだけれど」
「ちょっとね」
「じゃあこれはなしね。某アニメの黒髪先輩の物真似出来たけれど」
 それでもというのだ。
「無理なのね」
「ちょっと以上にね」
「それは無理よ」
「他の衣装にしましょう」
「早く着替えて」
 こうして紀香に別の服を着させた、だが次の服は。
 黒いバニーガールだった、兎の耳に首や手首にアクセサリーもあり網タイツも着用している。そこにギターも出すが。
 友人達はバニーガール姿で何処かポーズも決めている紀香に言った。
「その恰好もアウトよ」
「やっぱり性犯罪促進するから」
「だからね」
「それも駄目よ」
「他の服ね」
 それで他の服も出させたが。
 チャイナドレスに超ミニのフライトアテンダント、ナースにボンテージ、白のバドワイザーのボディコンとそれのワンピースの水着にボディコン、ミニの浴衣に魔法少女にプラグスーツにコギャルにとだった。
 どれもまともな服でなくだ、友人達は紀香に言った。
「どれも無理」
「出しものにはなれないわ」
「仕草やポーズだけならともかく」
「その衣装はね」
「どれもアウトよ」
「人前には出せないわ」
「ううん、じゃあどんな衣装がいいかしら」
 今はミニスカポリスの服を着て言う紀香だった。
「それじゃあ」
「だからどの衣装も無理よ」
「どれも却下よ」
「この出しものはアウトよ」
「コスプレ関係はね」
「仕方ないわね」
 紀香は元着た服に着替えて述べた。
「それじゃあ出しものはやっぱり」
「そう、阪神でいって」
「阪神の選手の物真似ね」
「何か百人分いけるんでしょ」
「それどんな感じなの?」
「こんなのよ」
 こう言ってだ、紀香は福留や鳥谷、そして藤浪といった現役選手の物真似をしてだ。バースや掛布、江夏の物真似もしてみせた。バッティングフォームやピッチングフォームだけでなくインタビューの時等の仕草や口調もだ。
 何十人かしてみせた、そのうえで友人達に尋ねた。
「どうかしら」
「ええ、上手じゃない」
「どの選手もそっくりよ」
「フォームも口調もね」
「表情までそっくりよ」
「というかね」
 友人達は阪神の選手達の物真似についてはいいとしてさらに言った。
「コスプレは絶対に駄目だから」
「というか普通のOLさんとかって思ったら」
「完全に彼氏と遊ぶ様なじゃない」
「そうした時に着るものよ」
「ま、まあね」
 図星なのでそこは表情を何とか消して応える紀香だった。
「それはね」
「だからアウトよ」
「ブルマとか着て出しものとかアウトよ」
「言い寄る馬鹿出るの間違いないし」
「餓えてるのとかがね」
 彼女がいなくてというのだ。
「だからね」
「もう阪神でいきましょう」
「阪神の選手の人達のコスプレでね」
「それでいきましょう」
 友人達が半ば強引に決めてだ、そうしてだった。
 紀香はサークルでは阪神の選手の物真似をすることになって実際にそれをわざわざ阪神のユニフォーム、長く使われていた白地に黒の縦縞が入ったそれとヘルメットや帽子まで着用してであった。
 それでやってみた、するとサークルの中では大好評だった。
「そっくりじゃないか」
「フォームから表情まで」
「ああ、似てるなんてものじゃないよ」
「本当に」
 サークルの男連中は口々に言った、しかし。
 出しものが終わっての打ち上げが終わって後は親しい間だけの二次会の時にだ、紀香は二次会で入ったカラオケボックスでコスプレを披露した友人達に言われた。
「やっぱり阪神でよかったわよ」
「大好評だったし」
「けれどね」
「ブルマとかバニーガールは」
「バドワイザーとかボンテージもよ」
 こうした服はというのだ。
「アウトだったわ」
「いや、本当にね」
「似合ってたし刺激的だったけれど」
「紀香ちゃんスタイル抜群だし」
 それでもというのだ。
「あの恰好は男には見せられないでしょ」
「だからアウトだったけれど」
「こうした時紀香ちゃん思い切りいいけれど」
「思い切りがよくてもね」
「着ないことよ」
 男の前ではというのだ。
「いいわね」
「それはね」
「絶対によ」
「しろって言われてもね」
「したら駄目よ」
「じゃあこれからもあれね」
 紀香はカラオケで歌う曲をリモコンで入力しつつ友人達に答えた、テーブルの上にはそれぞれが飲むお酒やジュースの他にピザやソーセージといったものがある。
「ああした時は阪神ね」
「そう、それでいくべきよ」
「ああしたコスプレは刺激的過ぎるからね」
「だから封印しておくことよ」
「いいわね」
「そうするわね」
 紀香も頷いてそうしてだった、ああした格好は彼氏限定にした方がいいということにして今は歌って飲んで騒いだ、友人達と一緒の二次会は実に楽しいものだった。


刺激的な出しもの   完


                    2018・3・22

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