客の止め方
駒川かすみはまだ中学生だ、だが実家のカラオケボックスで働いていてよく酔ったりして暴れている客を止めている。それは学校でも同じでだ。
喧嘩の仲裁は得意中の得意だ、それは女子の間だけでなく異性の男子生徒に対してもだ。それも一瞬で止める。
それでだ、ある日友人達に学校で聞かれたのだった。
「いつも喧嘩とか暴れる子止めてるけれど」
「何で出来るの?」
「自分よりずっと大きな男子生徒も止められし」
「あれコヅあるの?」
「コツっていうか簡単よ」
かすみは友人達にあっさりとした口調で答えた。
「暴れてたり喧嘩してる人止めるのは」
「ってどうするのよ」
「自分よりずっと大きな男の子止めるの」
「お客さんだって止めてるんでしょ」
「大人の人の」
中学生だがというのだ。
「ああいうのどうして出来るのよ」
「普通に凄い特技よ」
「かすみちゃん今あっさり言ったけれど」
「簡単だって」
「いや、お祖母ちゃんに教えてもらったけれど」
やはりあっさりと言うかすみだった。
「人間って急所あるじゃない」
「急所?」
「眉間とかみぞおちか?」
「男の子のあの部分とか」
「そういうところなの」
「そうしたはっきりした場所じゃなくてもいいの」
そうしたところを攻撃せずともというのだ。
「ツボよ」
「ツボなの」
「ツボを攻めればいいの」
「そうすればいいの」
「そう、暴れてる人の後ろとかにそっと寄って」
そしてというのだ。
「後ろから横でもいいの、そのツボをね」
「攻めるの」
「そうすればいいの」
「それだけでいいの」
「当身ね、そこを拳で打てば」
それだけでというのだ。
「どんな暴れてる人も動き止まるから」
「当身ってそんな技あるの」
「そうだったの」
「お祖母ちゃんが言うには柔道である技で今は教えてないらしいけれど」
そうした技がありというのだ。
「それでね」
「そこを押してなの」
「それでなの」
「暴れてる人止められるの」
「喧嘩だって」
「暴れたりしてる人って周り見えてないから」
このことについても話すかすみだった。
「それでね」
「そこを衝けるの」
「周りが見えていないから」
「それでそっと近寄って」
「それでなのね」
「そう、ポンと打つの」
そのツイボをというのだ。
「そうすればね」
「相手の動きが止まるから」
「だから喧嘩や暴れてるお客さん止められるの」
「それが出来るの」
「そうなの、もっともここで大事なのはね」
かすみは友人達に真面目な顔でこうも話した。
「相手の動きをよく見て自分が巻き込まれないこと」
「殴られたりするから」
「それでなのね」
「そう、もうそっと一気に近寄って」
そしてというのだ。
「ツボを打つのよ、それかね」
「それか?」
「それとっていうと」
「例えば相手の足を踏んだり膝の裏をかっくんってやったり」
こうしたこともというのだ。
「いいし」
「膝の裏ね」
「あれ悪戯でするけれど」
「あれ暴れてる人を止めるのもいいの」
「そうなの」
「そう、それもいいから」
こうした悪戯でする様なこともというのだ。
「当身以外にも。あと何でもいいから」
「何でも?」
「何でもっていうと?」
「まだ裏技あるの」
「そうなの」
「そう、そっと耳元でこう囁くの。比較的冷静さが残っている人には」
どう言うかというと。
「今の姿ユーチューブにアップするぞとか秘密ばらすぞとか」
「それ効くの」
「脅しも」
「そうなの」
「酔ったりしていて完全に我を失っていたら無理だけれど」
それでもというのだ。
「こうしたのもいいの」
「言葉もなの」
「それも効果あるの」
「そうなの」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「言葉もいいの」
「色々あるのね」
「暴れてるお客さんとか喧嘩の止め方も」
「当身以外にも」
「そういうのもあるのね」
「そう、あと裏技もあって。私は使ったことないけれど」
ここでだ、かすみは凄みのある顔になって友人達に囁いた。
「怖い技もあるのよ」
「怖いっていうと」
「どんなの?」
「どんなのあるの?」
「合気道の技を使うとか」
まずはこの技を話すかすみだった。
「女の人だと髪の毛を掴む、男の人だとあの急所を狙う」
「うわ、凄いわね」
「どっちもかなりね」
「髪の毛って掴まれると動けなくなるのよね」
「それだけでね」
「もう相手が有利になるわね」
「そうした技があるから」
だからだというのだ。
「いざって時は使えばいいらしいわ」
「いや、どっちも駄目でしょ」
「もう禁じ手でしょ」
「どっちも使ったらね」
「もうアウトよ」
「アウト過ぎるわよ」
「あと相手の膝が伸び切っていたらその甲羅を軽く蹴ると」
その禁じ手をさらに話すかすみだった。
「割れるらしいし手の指を掴んで逆方法に曲げたり」
「どれも普通じゃないわよ」
「殺人格闘技の世界じゃない」
「論外よ」
「けれどこうしたのもあるの」
実際にというのだ。
「お祖母ちゃんが教えてくれた止め方の中には」
「そういうのはなしでね」
「髪の毛とか男の子の急所って時点で」
「もうね」
「だからお祖母ちゃんも使うなって言ってるの」
教えてくれた祖母の方もというのだ。
「これがね」
「そりゃそうでしょ」
「膝攻撃して割るとかね」
「あとその急所攻撃もね」
「どっちも確かに有効だけれど」
「やり過ぎよ」
友人達もかすみの話にはこう言った。
「幾ら何でも」
「それはしない方がいいわ」
「痴漢とか以外にはね」
「しない方がいいわよ」
「そうよね、お祖母ちゃんの親戚にその筋の人がいて」
かすみはあえてどういった筋の人かは言わなかった。
「そっちじゃね、既になった時とかはね」
「喧嘩の時そうするのね」
「そっちの筋じゃ」
「相手の膝や急所狙って」
「それで勝つのね」
「そうみたいだけれど」
それでもとだ、また話すかすみだった。
「普通の人には使うなって言われてるから」
「普通に暴れてたり喧嘩してる人は」
「誰でもなの」
「そういうの使ったら駄目って言われてるのね」
「お祖母ちゃんにも」
「例えばプロレスラーが暴れていても」
大抵は極めて大柄で怪力だ、実際に酔ったプロのレスラーが暴れて柔道でオリンピックに出たこともある者を含めた警官数人が束になっても止めるのに苦労したという話がある。
「当身ならね」
「防げるの」
「そうなの」
「相手がプロレスラーでも」
「当身ならいけるの」
「そう言われてるし、膝やその急所はね」
またこう話すかすみだった。
「本当に禁じ手の中の禁じ手って言われてるの」
「出来れば使う機会がなかったらいいわね」
「別にそっちの筋じゃないし、私達」
「普通お店にそこまでの人来ないしね」
「学校の喧嘩でもね」
「そうでしょ、ただね」
ここでこうも言ったかすみだった。
「どうしてもの時は使えってね」
「お祖母さんに言われてるの」
「そうも言われてるの」
「そうなの、禁じ手でもね」
いざという時はとだ、このことも話したかすみだった。
そのうえで店でも学校でも暴れている者や喧嘩をしている者がいれば止めた。そうして楽しい日常を過ごしていくのだった。
客の止め方 完
2018・3・23
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