紅茶と和菓子
 長原知美の好物は紅茶だ、だが今友人達はその知美の家で紅茶をにこにことして飲んでいる彼女を怪訝な顔で見ていた。
 そうしてだ、こう彼女に尋ねた。
「あの、ちょっとね」
「今紅茶はどうなの?」
「あまりね」
「どうかって思うけれど」
「あれっ、どうして?」
 紅茶を飲む知美自身は友人達に不思議そうに聞き返した。
「この紅茶美味しいわよ」
「いや、美味しいとかじゃなくて」
「今出てるお菓子和菓子じゃない」
「三食団子におはぎにね」
「きんつばもあるし」
 見れば皆が座っているテーブルの上にあるのは和菓子ばかりだ、そしてそれぞれの娘の前に紅茶が入ったティーカップがある。
 その和菓子達を見ながらだ、彼女達は知美に言うのだった。
「ちょっとね」
「この組み合わせはね」
「ないでしょ」
「紅茶と和菓子って」
「どうもね」
「ああ、和菓子ならっていうのね」
 知美も友人達の言いたいことを察して答えた。
「日本のお茶ね」
「そうそう、番茶とかね」
「和菓子には日本のお茶じゃない」
「日本と日本で」
「それが普通でしょ」
「それで何で紅茶なの?」
 このお茶を出していることを言うのだった。
「そもそも」
「そこがわからないわよ」
「どう考えたて合わないでしょ」
「紅茶と和菓子の組み合わせは」
「どうもね」
「美味しいわよ」
 だが、だった。知美は平然とした顔で答えた。
「紅茶と和菓子もね」
「本当?」
「本当にそう?」
「お団子やおはぎと合うの?」
「きんつばとも」
「合うわよ」
 知美はまた答えた、平然とした顔のままで。
「だから食べてみて、騙されたと思って」
「ええ、じゃあね」
「頂くわね」
「折角出してもらってるし」
「それじゃあ」
 友人達は知美の勧めに従うことにした、それでだった。
 それぞれ覚悟を決めてそうして紅茶を飲んでから各人がこれだと思った和菓子を手に取って食べた、すると。
 知美の言う通り合っていてだ、こう知美に言った。
「えっ、確かに」
「美味しいわ」
「嘘みたい」
「紅茶と和菓子も」
「これがかなり」
「いけるじゃない」
 友人達ははっとした顔になってそれぞれ言っていた。
「イギリスのお茶と和菓子なのにね」
「合うわね」
「嘘みたいね」
「そうよね」
「そうなの、実は子供の頃からこうして楽しんでるの」
 知美も和菓子、きんつばを食べつつ笑顔で話す。
「これが案外以上にいけるのよ」
「本当に案外以上ね」
「合うわよ」
「和菓子食べて紅茶飲んで」
「この組み合わせもいけるじゃない」
「だってお茶はお茶だし」
 それでというのだ。
「お菓子、和菓子にも合うのよ」
「成程ね」
「そういうことなのね」
「お茶はお茶っていうのね」
「紅茶も」
「紅茶はケーキやクッキーとだけじゃないのよ」
 こうしたものとしか合わないのではないというのだ。
「和菓子とも合うの。それじゃあね」
「ええ、今日はね」
「紅茶飲んで和菓子食べて」
「そして楽しみませてもらうわ」
「そうさせてもらうわ」
 友人達は笑顔で話してだ、そしてだった。 
 紅茶と和菓子の組み合わせを心から楽しんだ、知美は最初からそうしていた。そして友人達が帰った後もだ。 
 知美は紅茶を飲んでいた、母がその知美に言ってきた。
「あんた本当に紅茶好きよね」
「ええ、お茶の中でもね」
 知美も飲みつつ答える。
「一番好きよ」
「昔からよね」
「ええ、それでね」
「紅茶で何でも食べるわね」
「さっきも和菓子食べてたわね」
「ええ」
「月餅や桃饅頭もだし」
 こうした中国の菓子もというのだ。
「紅茶と一緒に食べるわね」
「美味しいわよ」
「紅茶好きね、本当に」
「だって美味しいから」
 返事はもう決まっていた。
「だからね」
「それでっていうのね」
「ええ、だから今もよ」
 食べるものは今は前にない、だがそれでもというのだ。
「紅茶飲んでるの」
「そうなのね」
「ええ、じゃあもう一杯入れるけれど」
 ここで母にも言った。
「お母さんもどう?」
「ええ、それじゃあお母さんもね」
 母は娘の言葉に頷いてそうしてだった。 
 自分の席に座って飲んだ、とかく知美は紅茶が好きで飲むものはこれが一番多かった。だがある日のことだった。
 弟達は家でスーパーで買ったレモンティーを飲みつつこんなことを話していた。
「レモンティーとミルクティーって味全然違うよな」
「そうだよな」
「ストレートティーともな」
「それぞれ味全然違うよ」
「同じ紅茶だってのに」
「何でこんなに違うんだ?」
 こんなことを話していた。
「甘くて美味しいにしてもな」
「何でこんなに味が違うんだよ」
「不思議だよな」
「不思議って当然じゃない」
 知美は弟達のところに来てこう言った。
「ミルクとレモンじゃ全然違うから」
「だからだっていうんだ」
「同じ紅茶でも全然味が違うんだ」
「色だって」
「そうなんだ」
「ええ、ただレモンティーはね」
 知美は弟達に今彼等が飲んでいるレモンティーのことも話した。
「和菓子にはね」
「あっ、合わないね」
「言われてみれば」
「そうだよね」
「この紅茶はね」
「和菓子にはミルクティーかストレートティーね。ただレモンティーは軽いから」
 そうした味だからだというのだ。
「スナック菓子にも合うわよ」
「言われてみればそうだよな」
「ああ、レモンティーってスナック菓子にも合うよな」
「そうだよな」
「そっちにも」
「ミルクティーよりもね、まあストレートティーはね」
 こちらの普通と言っていい紅茶はというと。
「結構色々なものに合うのよね」
「だよね、確かに」
「姉ちゃんの言う通りだよ」
「ストレートティーは何にでも合うよ」
「お菓子ならね」
「ええ、それぞれのお菓子に合う紅茶があるから」
 それでというのだ。
「選んで飲まないとね」
「同じ紅茶でも」
「そこは選んで飲むべきなんだ」
「姉ちゃん紅茶が好きだけれど」
「飲む紅茶の種類は選んでるんだ」
「そうなの、じゃあレモンティーだから」
 それがあるからとだ、知美は弟達にこうも言った。
「スナック菓子出しましょう」
「うん、じゃあね」
「スナック菓子出してね」
「皆で食べよう」
「そうしよう」
 弟達も頷いてだ、そうしてだった。
 知美は弟達と共にレモンティーとスナック菓子を楽しんだ。この時の彼女はそちらを食べたがそれでもだった。笑顔で楽しんでいた。


紅茶と和菓子   完


                   2018・3・25

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