大阪心霊巡り
小路陽菜の趣味の一つに心霊スポット巡りがある、それでよく本やネットで心霊スポットのチェックをしているが。
この日もそうでだ、スマホで心霊スポットをチェックしてから友人達に言った。
「大阪城の方で出るらしいわ」
「幽霊が?」
「そうだっていうの」
「そう、落ち武者が出るらしいのよ」
こう友人達に話すのだった。
「何でもね」
「大坂の陣があったから」
「その時に死んだ人?」
「その人の幽霊なのね」
「落ち武者ってことは」
「そうみたい。夜の十二時にね」
陽菜は出る時間のことも話した。
「髪の毛は髷がほどけていて」
「落ち武者独特の状況になってるのね」
「そうなのね」
「そう、そして鎧を着ていて刀を持っていて血塗れの形相で」
出るという落ち武者の姿をさらに話していく。
「あちこちに矢が突き刺さっていて」
「大阪城のところを歩いてるの」
「そうなの」
「そうらしいのよ」
こう友人達に話すのだった。
「何でもね」
「そうした話結構あるわよ」
「大阪だけじゃなくてね」
「日本のあちこちにね」
「もう定番よね」
友人達は陽菜の話を聞いてからその陽菜に答えた。
「激しい戦いがあったお城跡はね」
「確か北陸の方でもあったわよね」
「そうそう、本当に何処にでもね」
「あるわよね」
「そうしたお話は」
「それが大阪にもあるらしいから」
それでとだ、陽菜は友人達にさらに話した。
「今度夜の十二時にね」
「実際になの」
「大阪城の方に行くの」
「そうするの」
「ええ、本当に出るのかどうかね」
心霊マニアとしてとだ、陽菜は友人達に答えた。
「観に行きたいわ」
「実際になのね」
「観に行くのね」
「そうするのね」
「ええ、そうしたいわ」
陽菜は友人達にこう話してだった、彼女達にさらに言った。
「皆で行く?」
「本当に出るかどうか観る為に」
「私達にもなの」
「どうかっていうの」
「そう。どうかしら」
こう言うのだった、そしてだった。
友人達は陽菜のその誘いにまずはお互いに顔を見合わせた、そうして目で相談をして頷き合ってから陽菜に顔を戻して答えた。
「それじゃあね」
「念の為お守りとかお経持って行って」
「十字架とかもね」
「大蒜もいるかしら」
「大蒜は吸血鬼でしょ」
いささか幽霊とは違うのではないかという話も出たがそれでもだった、友人達は陽菜の誘いに残ることにした。
それでこの日のうちにだった、陽菜は友人達と共に深夜に大阪城の方に行った。全員大阪市内に住んでいるので自転車ですぐに集合してそこまで行くことが出来た。
そして自転車を置き場所に置いてからだ。大阪城の中の方に入ると。
夜の闇の中に堀と石垣が見えた、そしてその先にだった。
「天守閣も夜だとね」
「ちょっと見えにくいわね」
「どうもね」
「そうよね」
「ええ、ただね」
陽菜は友人達に話した。大阪城の方を観ながら。
「今回は大阪城の中には入らないわ」
「そこには出ないのね」
「あの辺りでも戦いがあったっていうけれど」
「あそこには出ないのね」
「そうなのね」
「そうみたいよ。出て来るのはね」
そこはというと。
「丁度この辺りらしいわよ」
「私達今お城の正門の前の方にいるけれど」
「ここになのね」
「その落ち武者の幽霊が出るの」
「そう言われてるの」
「そうみたいよ。それにね」
陽菜はここで自分の左手首を見た、そこに腕時計をかけているのでそれで時間をチェックしたのである。
そのうえでだ、友人達にこう言った。
「あと五分位でね」
「十二時ね」
「幽霊が出るっていう」
「その時間になるのね」
「ええ、あと少しよ」
こう友人達に話した。
「その時間になるわ」
「じゃあ隠れましょう」
「丁度木も多いしね」
桜の木だ、大阪城の堀の辺りは桜の木で飾られていて春になると大阪でも屈指の花見スポットになるのだ。
「木の陰に隠れてね」
「落ち武者が出て来たら見ましょう」
「そうよね、刀持てるっていうし」
「それならね」
「隠れた方がいいわね」
「若し見付かったら切られかねないから」
その刀でというのだ、陽菜の話では落ち武者は刀を持っているというのでこのことを警戒しているのだ。
「それじゃあね」
「見付からない様に物陰に隠れて」
「そうして出て来るの待ちましょう」
友人達は口々に言い陽菜も頷いた、そしてだった。
陽菜達は桜の木の陰に隠れてそうして落ち武者の亡霊が出て来るのを待った。十二時になりそれから十五分程過ぎたが。
落ち武者の亡霊は出て来なかった、それで友人達は桜の木の陰から出て来るという場所を覗き込みながら陽菜に言った。
「出て来ないみたいよ」
「どうもね」
「帰った方がいいわよ」
「それじゃあね」
「そうね、こうしたこともね」
心霊スポットを巡っていればとだ、陽菜はその友人達に答えた。
「結構どころかね」
「多いというか殆どでしょ」
「お目当ての幽霊が出ないとか」
「そうしたことは」
「そうなのよ」
実際にというのだ。
「これがね。だからね」
「出て来ないなら仕方ない」
「それじゃあね」
「もう帰りましょう」
「そうしましょう」
「ええ、皆でね」
陽菜も言ってだ、そしてだった。
一行は自転車を置いた場所に向かって自転車に乗ってだった、それぞれの家に帰った。だがその直後だった。
陽菜達がさっきまでいたその場所に落ち武者の幽霊が出た。その幽霊は観られるのをわかっていて出て来るものかと呟いた。
陽菜達は大阪城の落ち武者の幽霊には出会えなかった、だが陽菜はそれでめげなかった。その数日後だった。
陽菜は友人達に今度はこう言った。
「何でも淀川に出るらしいのよ」
「あそこにもなの」
「出るの」
「女の人の幽霊がね」
今度はそうした幽霊だというのだ。
「出て来るらしいから」
「今度は淀川に行くの」
「そうするの」
「ええ、そうしてみるわ」
こう言うのだった、大阪城の幽霊は観ることが出来なかったが陽菜の心霊スポット巡りは終わらなかった。彼女はその趣味を心から楽しんでいた。例えお目当ての幽霊に出会えずとも。
大阪心霊巡り 完
2018・4・23
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