女スナイパーのトラブル
 アルフレッサ=G=シャナクタールはスナイパーだ、与えられた仕事は全てこなすことで知られている。
 だが今彼女は困っていた、何と警察の厄介になっていたのだ。
 彼女は警察署の中で警官にこう言われていた。
「じゃああんた覚えていないのか」
「そうだ」
 右目の眼帯が特徴的な顔でだ、アルフレッサは警官に取調室の中で答えた。
「私は何をした」
「ナンパした中年のおっさんに噛みついた」
「噛みついたのか、私が」
「虎みたいにな」
「酔ったから虎か」
「そこで駄洒落言うか」
 警官の方が呆れた。
「そこで」
「駄洒落になっていたか」
「気付いていないのか、それでその後川に飛び込んだんだ」
「この街の川にか」
「暑いとか言ってな」
 そうしてというのだ。
「飛び込んだっていうな」
「成程な」
「そして川の中でクロールしてな」
「それからどうなった」
「川の堤防のコンクリートに頭ぶつけてな」
 それからだというのだ。
「気絶して今ここにいるんだよ」
「トラ箱に入れられていてか」
「そうだよ、それであんた仕事は何だよ」
 警官は今度はアルフレッサの身元を尋ねた。
「一体な」
「スナイパーだ」
「スナイパー?冗談はいいからな」
 警官はアルフレッサの冗談でない言葉にこう返した。
「本当の仕事を言ってくれ」
「だからスナイパーだ」
「冗談はもういい、とにかくな」
「私の仕事はか」
「本当は何だ」
「仕方がない。メイドにでもしておいてくれ」
「ああ、眼帯のメイドか」
 それならと言う警官だった。
「マニアックだな」
「そう思ってくれるか」
「それならいい、とにかくな」
「私の仕事はメイドだな」
「ああ、それで名前は何だ」
「アルフレッサ=G=シャナクタール」
 またしても素直に答えた、裏家業だが素直に本名を言った。
「覚えておけ」
「ああ、アルフレッサさんね」
 警官は覚えておけという言葉はスルーした。
「はい、書いたよ」
「うむ、では今度はどうすればいい」
「一応免許とか見せてくれる?」
「偽造の運転免許や保険証でいいか」
「だからそうした冗談はいいから」
 また取り合わない警官だった。
「ひょっとしてまだ酔ってるの?」
「もう酔いは醒めた」
「いや、醒めてないでしょ」
 それでというのだ。
「そんな冗談言うなら」
「そう思うか」
「思うよ、けれどもういいから」
 それはと言うのだった、警官の方も。
「調書書いたら帰っていいから」
「警察署を出ていいか」
「ああ、いいよ。もう二度と来ない様にね」
 警官はこう言ってアルフレッサを警察署から出した、こうしてアルフレッサは朝の街に出たのだが。
 ふと学校をさぼってだべっている不良達を街の傍らで見付けて尋ねた。
「何をしている」
「何って学校さぼってるんだよ」
「たりいからよ」
「それがどうかしたのかよ」
「おばさん指導員か?」
「おばさんとは何だ」
 アルフレッサはその言葉にカチンときた、それでだった。 
 その不良達を無言で全員叩きのめした、そのうえで別のところに行った。
 すろとそこでは幼女を誘拐しようとしている性犯罪者がいたがアルフレッサはその犯罪者に対しても尋ねた。
「何をしている」
「えっ、見付かった!?」
「私は見た」
 こう犯罪者に言った。
「今の出来事を」
「くっ、こうなったら」
 犯罪者はアルフレッサに向かってナイフを出した、だが。
 アルフレッサは即座に手刀を出して犯罪者を一べきでノックアウトした、そうしてから誘拐されるところだった幼女にも尋ねた。
「何をしている」
「・・・・・・・・・」 
 幼女は何も言えなかった、ただ泣いているだけだ。誘拐されかけたのだから当然だった。
 だがアルフレッサはその幼女に言った。
「言えないなら親を呼ぶ」
「パパをママを?」
「それか交番に案内する」
 そこで保護してもらうというのだ、そうした話をしているうちにだった。
 街の人達が来て彼等が連絡してだった、幼女は両親に保護された。アルフレッサはその一部始終を見届けてから。
 暫く街を歩いていたがそのうちに腹が減った、それであるカレー屋に入ったがここでカレー屋の店長に尋ねられた。
「何を注文しますか?」
「美味いものを」
 こう返したのだった。
「何でもいい」
「何でもですか」
「美味ければ何でもいい」
 またこう言ったのだった。
「蛙以外ならな」
「普通蛙はカレーに入れませんよ」
「そうなのか」
「そんなカレ―はちょっと当店には」
 店長はアルフレッサにどうかという顔で返した。
「ないですね」
「では何でもいい」
「何でもですか」
「美味いと」
「当店のお勧めメニューでいいですか?」
「出来ればトッポも」
「トッポもカレーに入れないですね」
 店長はまたアルフレッサにどうかという顔で返した。
「それも」
「そうか」
「はい、けれどお勧めでいいんですよね」
「そうだ」
「量はどれだけですか?」
「馬並だ」
 このレベルでというのだ。
「くれ」
「多くていいんですね」
「そうだな、大盛を四皿だ」
 具体的な量をここでやっと言ったアルフレッサだった。
「それだけくれ」
「じゃあチキンと海老フライとハンバーグとカツで」
「それで頼む」
 アルフレッサは無表情で応えた、そしてだった。
 その大盛りの四種類のカレーをぺろりと平らげた、そうして言う言葉は。
「美味かった」
「どうもです」
「では勘定だな」
「宜しくお願いします」
「偽造コインでいいか」
 ここで正直に言うアルフレッサだった。
「それか偽札で」
「そうした冗談はいいですから」
「そうか」
「はい、別のやつで」
「わかった、では払おう」
 こうしてアルフレッサは闇の世界で出回っている本物そっくりの偽造コインと偽札で支払いを済ませた。そうしてからだった。
 店を出て街の中を歩いているとだった、不意に。
 ヤクザ屋さんと肩がぶつかった、するとヤクザ屋さんはすぐにアルフレッサに対して威嚇する顔で言った。
「馬鹿野郎、気をつけろ」
「馬鹿とは何だ」
「ペケポン!」
 ヤクザ屋さんはアルフレッサの拳を鼻に受けてノックアウトされた、アルフレッサはその後何でもない様に歩いた。
 そしてこの日の仕事先に向かって仕事を終えたが。
 ここでだ、依頼主にこう言われた。
「いやあ、お陰で助かったよ」
「助かったのか」
「これで邪魔な奴を消せたからな」
 だからだというのだ。
「実によかったよ」
「それでは報酬は」
「ああ、スイス銀行のあんたの口座に振り込んでおくからな」
「わかった」
「そういうことでな、あとな」
「あと。何だ」
「あんた何でもな」
 依頼主は仕事を終えたアルフレッサにさらに言った。
「色々厄介なことになってるらしいな」
「厄介なこととは何だ」
「今日朝トラ箱にいたんだってな」
「気付いたらな」
「誰がぶっ飛ばして川で泳いだんだな」
「そうらしいな」
「覚えてないんだな」
 依頼主もこのことにはかなり呆れた、そうなりながらアルフレッサに返した。
「そのことは」
「そうだ」
「やれやれだな、まあ飲んでもな」
「飲み過ぎにはか」
「注意しなよ」
「わかった」
 返事は素直だった、そして実際にアルフレッサはこの夜は酒は飲まなかった。だがその代わりにだった。
 コーヒーをどんどん飲んだ、それで朝まで起きていて言うのだった。
「一睡も寝られなかった」
 酒の代わりにコーヒー、この結果だった。それで朝に寝不足でついつい道で寝転がって寝てしまい前とは別の警官に別の署に連れて行かれた。


女スナイパーのトラブル   完


                 2018・5・20

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