悪霊退散
 神父は相談に来たその女性を見てだ、すぐに言った。
「貴女はこのままではです」
「危ないですか」
「はい、悪霊に憑かれています」
 こう言うのだった。
「私はエクソシストでもありますので」
「こうしたこともですか」
「わかります」 
 女性に対して言った。
「貴女に憑いている悪霊はALYESEといいます」
「ALYESE?」
「はい、『ありす』ともいいますが」
 神父は女性にその悪霊の名前を話した。
「人の深層心理に巣食いそこからその人の心を蝕むやがて身体を完全に乗っ取られてしまいます」「そんな恐ろしい悪霊ですか」
「すぐに何とかしないと」
 それこそというのだ。
「貴女はありすに完全にです」
「身体を乗っ取られますか」
「心を完全に破壊されたうえで」
「あの、では」
「お任せ下さい」
 神父は女性が言わんとしていることを察して答えた。
「私がすぐにありすを払います」
「そうしてくれますか」
「そのうえで貴女をお救いします」
「そうしてくれますか」
「すぐに退魔の儀式をはじめます」
 こう言ってだった、神父は女性を救う為に退魔の儀式をはじめることにした。だがその儀式の用意を見てだ。
 女性は怪訝な顔になってだ、神父に尋ねた。
「あの」
「何でしょうか」
「ありすは悪霊ですね」
「はい」
 その通りだとだ、神父は女性に答えた。
「極めて悪質な」
「それでどうしてなのでしょうか」
 神父が助手達と共に進める用意を見ながら言った。
「沢山の鼠達を用意しているのでしょうか」
「ありすを退ける為です」
 神父の返事は即座だった。
「その為です」
「それでどうして沢山の鼠を」
 見ればラットやモルモット、ハムスター達が何百匹といる。女性はその彼等を怪訝な目で見つつ神父にさらに問うた。
「用意されているのですか」
「この鼠達は知り合いのペットショップから借りたものですが」
「それはいいのですが」
「ですから悪霊退治の為です」
「ありすのですよね」
「実はありすは鼠を大の苦手としていまして」
「そうなのですか」
「そうです、何でもある日ありすに憑かれていた人が鼠を見たところ」
 それでとだ、神父は女性に話した。
「ありすは鼠に驚いて怯えその人からその場で離れたそうです」
「それでなんですね」
「はい、今もです」
 この女性に対してもというのだ。
「この鼠達で囲み」
「そうしてですか」
「ありすを追い払います」
 こう言ってだった、神父はケースに入れている鼠達を女性に周りに置いた。すると鼠達を置き終えるとすぐにだ。
 銀色の長い束ねた髪の毛に黒い目と褐色の肌を持っていて赤黒の仮面を顔の横に付けた少女が女性から飛び出てきた、身体には蝶の羽根と花の萼に似た形の目を多く伸ばしておりそこから突出しているものの中には禍々しい鎌になっているものもある。
 その異形の霊が女性から出て来てだ、神父に言った。
「糞っ、鼠か」
「如何にも」
 神父はその悪霊、ありすを見据えて答えた。
「貴殿が鼠が苦手と聞いた故」
「それでか」
「こうさせてもらった」
「よくもやってくれたな」
「これでこの人は救わせてもらった」
「そうだな、しかしだ」
「また別の人にか」
「あたしは憑いてやるからな」
 負け惜しみめいた声で言うのだった。
「覚えていろよ」
「ではその度にだ」
「鼠を出すっていうのか」
「そうしてみせよう」
 神父はありすに平然と言った、そしてだった。
 忌々し気に何処かへと姿を消したありすを見送った。そのうえで彼女から解放された女性に対して言った。
「これで、です」
「私は助かったのですか」
「そうです」
 その通りという返事だった。
「お喜び下さい」
「そうですか、よかったです」
 女性は悪霊から解放されたことに喜んだ、だが。
 ここでだ、女性は神父にあらためて尋ねた。
「そのことはいいのですが」
「ありすが何故鼠を恐れるのか」
「それがわからないのですが」
 こう言うのだった、その首を傾げさせて。
「聞くだけで恐ろしい悪霊ですが」
「そのことですが」
 神父は女性のその疑問にも答えた。
「悪霊といえど元は人間ですね」
「はい、生きていた頃は」
「人間だった時からです」
「ありすは、ですか」
「鼠が怖かったのでしょう」
「それで、ですか」
「悪霊となってもです」 
 つまり今もというのだ。
「鼠が怖いのでしょう」
「人間だった時と同じくですか」
「そうなのでしょう」
「それで今もああしてですか」
「ありすへの退魔の時はです」
 まさにというのだ。
「あの様にしてです」
「鼠を使ってですか」
「退けます、彼女が恐れているが故に」
「そうですか。あれだけの悪霊でも怖いものがあって」
 それでとだ、女性は思うのだった。
「それが鼠だとは」
「意外ですね、ですがありすも元は人間であり人間は誰でもです」
「怖いものがあるので」
「悪霊も然りなのです」
「そういうことなのですね」
「はい、ではこれで貴女は助かりました」
 神父は彼にあらためて話した。
「このことを神に感謝しましょう」
「それでは」
 女性は神父の言葉に頷いた、そしてだった。二人は神父の助手達と共に教会の礼拝堂で神に感謝の祈りを捧げた、そのうえで神父は今回働いてくれた鼠達にも礼を言ってペットショップに返した。全ては彼等のお陰と感謝しつつ。


悪霊退散   完


                    2018・6・17

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