薔薇騎士団
ビクトリエ=ファラージュは国王からあることを命じられた、その命はというと。
「女だけの騎士団をですか」
「そうだ、近頃そなたを含め女騎士、女戦士と増えてきている」
女で戦う者達がというのだ。
「我が国でもな、それでだ」
「女だけで戦える者達だけで騎士団を編成して」
「そのうえで戦える者達にして欲しいのだ」
王はビクトリエに玉座から告げた。
「出来るか」
「王のご命令とあれば」
これがビクトリエの返答だった、銀の甲冑で武装した姿で王の間で階段の上にある王の前で片膝をついて畏まっている。そのうえでの返答だ。
「その様に」
「そうか、ではな」
「はい、これよりです」
「女だけの騎士団、編成してだ」
「戦える様にします」
「是非な」
王はビクトリエに告げた、そしてだった。
ビクトリエは早速王国軍から優れた女戦士達を選びにかかった、騎士や戦士だけでなく弓兵や魔術師、僧侶にスパイとだ。ペガサスナイトやドラゴンナイトもいた。
様々な兵種の女戦士達が集まった、だが多くの者はビクトリエと彼女達を見て笑って言った。
「女だけの騎士団なぞ役に立つものか」
「幾ら強くても所詮は女だ」
「戦いはやはり男の仕事だ」
「女は戦いに向かない」
「幾ら強い者を集めても女は女」
「それを集めてもだ」
「戦える筈がない」
こう言うのだった、こうした言葉は騎士団の者達の耳にも入っていて当然ビクトリエの耳にも入っていた。だが彼女は毅然として言うだけだった。
「言わせておけばいい」
「言いたい者にはですか」
「そうしていいのですか」
「そうだ、我々は為すべきことを為す」
これがビクトリエの考えであり言葉だった。
「そして結果を出す」
「それだけですか」
「我々が為すことは」
「我が騎士団が」
「周りの言葉に反応することは為すことではない」
ビクトリエは毅然としてこうも言った。
「だからだ」
「それで、ですか」
「そうした口さがない言葉は相手にせず」
「そのうえで」
「これまで通り訓練を行い装備を整えていきだ」
そしてというのだ。
「来たるべき時に備えるのだ」
「戦場に出て勝つ」
「その時にですね」
「皆戦は知っているだろう」
ビクトリエは部下達に問うた。
「どういったものか」
「はい、何度も出ています」
「それならばです」
「我々も知っています」
「戦というものを」
「ならばわかるな、我々は外からの戯言は気にするな」
一切という言葉だった。
「武芸を磨き兵法の書を読みだ」
「そして騎士団としての訓練に励み」
「王から与えられた金で装備や兵糧を整える」
「そうしていくだけですね」
「我々は」
「そうだ、そして今我々が一番すべきことはだ」
それはというと。
「塩の調達だ」
「はい、塩の備蓄が少ないです」
「ではですね」
「塩の購入ですね」
「それを行うべきですね」
「それを行え、塩なくしてだ」
武具や馬、兵糧と共にというのだ。
「戦が出来るか、答えは一つだ」
「わかりました」
「塩を購入しておきます」
「我々は常に戦場にいると思え」
こうも言ったビクトリエだった、ビックトリエは自身もそうだったが騎士団の者達にも外からの戯言など気にするなと言ってだった。
常に戦に備え騎士団全体に厳しい訓練を課し騎士団員一人一人に武芸に励み兵法を学ぶ様に命じ自らもそれを実践していた。
そして遂に出陣の時が来た、敵は隣国の大軍騎士団から見て何と七倍もの軍勢であり彼等を国境の砦に篭り迎え撃つことになったが。
ビクトリエは砦の城壁から砦に迫ってきた敵の軍勢を見て周りに控えている騎士団の者達に問うた。
「わかるな」
「はい、勝てます」
「あの軍勢ならば」
「我々でも」
「そうだ、我々は必ず勝つ」
敵の軍勢の編成はばらばらだった、歩兵も騎兵も魔道部隊もそれぞれ混ざっている。しかも装備も悪い。隊列も乱れている。
その敵軍を見てだ、ビクトリエは言ったのだ。
「あの様な軍勢ものの数ではない」
「ではですね」
「戦いそして」
「勝ちますね」
「私の指示に従え、いいな」
こう言ってだ、ビクトリエはまずだった。
砦の守りを固め数だけは多い敵軍を寄せ付けなかった、そうして敵が自分達の思わぬ守りの堅固さに戸惑っている中で。
夜に一気にうって出て夜襲を仕掛けた、そうして混乱する敵を次から次に攻めて散々に打ち破った。
朝になって倒れているのは敵の者達ばかりだった、あまりにも鮮やかな勝利だった。
ビクトリエはこの勝利だけでなく王から賊の討伐やドラゴンの退治を言われる度に見事に王の命を果たした。そうしていくうちに。
誰も彼女と彼女が率いる騎士団を馬鹿にしなくなった、逆にこう言う様になっていた。
「恐ろしい女達だ」
「女とはとても思えない」
「まるでアマゾネスだ」
「傍から見ると薔薇園だが」
「恐ろしい連中だ」
「我が国でも屈指の強さの騎士団だ」
こう言われるまでになった、そして王もビクトリエに言った。
「見事だ、よくぞあそこまで強い騎士団を築き上げた」
「有り難きお言葉」
ビクトリエは王の前に片膝をついた姿勢で応えた、この時も。
「騎士団の者達も喜びましょう」
「よく女はどうと言うが」
「はい、確かに女は男に比べて力が弱いです」
「そうだな」
「その身体の造りから男に比べて戦に向いていません」
子を産み育てる、そうした身体だからだというのだ。
「ですが」
「それでもか」
「兵法を学び鍛錬と訓練に励み常に戦の用意をしておけば」
「女でもだな」
「戦えるのです」
こう王に答えた。
「私も騎士になってからそうしてきましたし」
「それでか」
「はい、騎士団もです」
今彼女が率いる彼女達もというのだ。
「そうしたのです」
「成程、要は常に備え学び鍛えることか」
「そうすれば女でもです」
「強くなるのだな」
「左様です、ではこれからも」
「戦ってくれるか」
「王の御為に」
「わかった、ではそなた達に名を与えたい」
王はビクトリエに厳かな声で告げた。
「薔薇騎士団とな」
「薔薇騎士団ですか」
「薔薇の様に華やかだ、そして薔薇の美しさに負けないまでに強い」
だからだというのだ。
「こう名付けよう、後で旗も与える」
「騎士団の旗も」
「その旗の下でこれからも戦うのだ、いいな」
「わかりました、それでは」
「うむ、これからも余と国そして民の為に戦ってもらいたい」
「おおせのままに」
ビクトリエは王に畏まって応えた、そして薔薇騎士団の名と赤薔薇の見事な旗を王から授かりそれからも戦い続けた。
薔薇騎士団は王国でも一二をあらそう騎士団として知られる様になった、もう誰も彼女達を女だからと言わなくなっていた。そしてビクトリエについてもだ。彼女はもう女だからと言われる見事なk師団長と言われていた。恐ろしい薔薇騎士団の長と。
そしてこの日も訓練に励んでいた、そうして部下達に言うのだった。
「日々の備えと鍛錬、学問は怠るな」
「はい、それこそがですね」
「強い騎士団を築くからですね」
「そうだ、強くありたいならな」
それならばと騎士団の者達に告げた。
「常にそういったものを怠るな」
「わかりました」
騎士団の女達も応えた、誰もが騎士の顔をしていた。そこには弱さは微塵もなかった。
薔薇騎士団 完
2018・6・21
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