何でもある店
 その街には知る人ぞ知るアイテムショップがある、ある若い人間の戦士はその店の話を聞いてこう言った。
「何でもか」
「そう、何でもらしいんだよ」
 今彼とパーティーを組んでいる魔術師が応えた、他には僧侶とシーフ、侍とビショップという編成だ。何処かのダンジョンに向いている数と編成だった。
 その面々が酒場にいて飲みつつ話していてその店の話が出たのだ。
 それでだ、戦士はその話を聞いて仲間達に言ったのだ。
「幾ら何でもな」
「何でもとはいかないか」
「そう言うんだな」
「そうだよ、魔法の品とかな」
 それこそというのだ。
「ないだろ、神様のものとか」
「いやいや、それがな」
「その店は違うらしいんだよ」
「もう何でもあるらしいな」
「それこそな」
 仲間達は戦士に言う、そしてだった。 
 その話を聞いてだ、戦士は仲間達に言った。
「それじゃあなその店に行ってな」
「それでか」
「そのうえでか」
「その目で確かめる」
「そうするんだな」
「これから」
「ああ、若しその話が本当なら」
 戦士は仲間達に強い声で話した。
「俺も欲しいアイテムあるしな」
「それ俺もだよ」
「俺もだ」
「俺だってそうだ」
「俺だってそうだしな」
「俺にしてもそうだ」
 仲間達もそれぞれ欲しいものがあった、それでだった。
 パーティーはそのアイテムショップに向かった、すると。
 可愛い外見だがそれでもだ、何か浮世離れした表情で頭に妙なアイテムを付けている店員がいた。店の壁や陳列棚にはアイテムがこれでもかとあった。
 その店の中を見回してだ、パーティーは話した。
「それじゃあな」
「今からアイテム探すか」
「具体的にどんなアイテムがあるか」
「そうするか」
「いらっしゃいませ」
 その店員が挨拶をしてきた、可愛いが気の抜けた感じの声だった。
「何をお探しでしょうか」
「はい、それですが」
 まずがシーフが応えた、小柄だが細く引き締まった顔立ちである。
「マスターキー探しています」
「あのアイテムですか」
「はい、どんな扉も開けられる」
 シーフはこの鍵は普通の店にはないだろうと思いつつ店員に話した。
「それはありますか?」
「どうぞ」
 即座にだ、店員は金色に輝く鍵を出してきた。
「マスターキーです」
「あれっ、あるんですか」
「うちのお店にないものはないです」
 店員はあっさりとした調子で答えた。
「ですから」
「マスターキーもですか」
「この通り」
 あるとだ、店員はシーフに無表情の声で答えた。
「どうぞ」
「あのですね」
 今度は侍が店員に言った。
「俺は武器を探しています」
「武器ですか」
「日本刀です」
 侍らしくそれだった。
「それも轟介清を」
「轟介清ですか」
「はい」
 幻の刀と言われているそれだというのだ。
「それをお願いします」
「わかりました」
 店員は今回も応えてだ、そしてだった。
 ある日本刀を出した、侍はその日本刀を受け取って丹念に見てから仰天して言った。
「間違いない、これは」
「はい、そうですね」
 職業としてアイテムの鑑定が出来るビショップも言ってきた。
「これはです」
「轟介清だな」
「マスターキーも本物でした」
「そうだよな」
「驚きました」
「あの、ひょっとして」
 今度は魔術師が店員に言った。
「ルーンローブはありますか」
「ルーン文字を数多く書き込んだ魔法のローブですね」
「あれは」
「どうぞ」
 その全体にルーン文字が描かれた七色に輝くローブが出て来た。
「こちらです」
「これを着れば刃や魔術にも恐ろしい耐性がつき着ているだけで魔力が回復しますが」
「そのローブですね」
「これに違いありません」
 またビショップが言ってきた。
「これは」
「まさか店にあるなんて」
 ごく一部の強力なモンスターが持っていると言われているそれがだ、魔術師も驚きを隠せない感じだった。
「嘘みたいだ」
「ですが本物です」
 またビショップが言ってきた、彼も今は敬語だ。どうも緊張するとそうした口調になるタイプの様だ。
「これは」
「そうだよな」
「間違いないです」
「俺は」
 今度は僧侶が言った。
「古代の守りを」
「古代の守りですか」
「身に着けていると体力が自然に回復しあらゆる攻撃から己を護る」
「これですね」
 ダイアを思わせるがダイア以上に輝く宝石が中央にある豪奢なタブレットが出された。
「どうぞ」
「ダンジョンの奥深くにあると聞いてるんだけれど」
「うちにないものはないですから」
 店員は僧侶にも素っ気ない口調で答えた。
「ですから」
「あるのか」
「はい」
「では俺もです」
 ビショップも言ってきた、敬語だが一人称は変わっていない。
「欲しいものがあります」
「何でしょうか」
「法皇冠です」
 これだというのだ。
「被れば己の頭だけでなくその頭脳も飛躍的によくさせる」
「そのアイテムをですね」
「欲しいんですが」
「はい」
 それもだった、店員は出してきた。豪奢な王冠を思わせる冠を。飾られている宝石やサファイアやエメラルドだった。
「これですね」
「これは本物だ」
 ビショップはその冠を見て驚きの声で言った。
「間違いない」
「本物かよ」
「はい」
 ビショップはまた店員に答えた。
「左様です」
「そうなのか」
「間違いありません」
「じゃあ俺は」 
 最後に戦士が言った。
「エクスカリバーを」
「そのアイテムをですね」
「欲しいけれどな」
 戦士が使える武器の中で最強のものがだ、言うまでもなく魔法の剣であり手に入れることは非常に稀とされている。
「それでもまさかな」
「どうぞ」
 白金の輝きを見せる鞘に包まれた大きな剣だった、その剣もだ。
 ビショップは鑑定してだ、こう言った。
「これもです」
「本物か」
「そうです」
 その通りだというのだ。
「これも」
「全部本物か」
「はい、では」
「ああ、全部な」
「買いますか」
「若し買えば」
 それでとだ、ビショップは戦士だけでなくパーティー全員に話した。
「俺達はです」
「凄いな」
「これだけのものが揃ったら」
「そうだな」
「かなりの強さになるな」
「このアイテムの力で」
「間違いなく、では」
 ビショップは仲間達に言った。
「買いますか」
「そうするか」
 他の面々は頷いた、それでだった。
 彼等はそれぞれのアイテムを買った、そうして店を後にして戦闘に出た、するとアイテムの力で彼等は段違いに強くなっていた。
 それでだ、彼等は宿に入った時にこう話した。
「凄いな、アイテムの力」
「ああ、段違いだったな」
「これまでのアイテムと」
「本当にな」
「じゃあまたあの店行ってな」
「アイテム買おうな」
「しかしな」
 ここでだ、戦士はこう言った。
「全部本物なのは凄いけれどな」
「ああ、金がな」
「魔法の品だけあって全部金凄かったな」
「金滅茶苦茶かかったな」
「全部で二十万ゴールドかかったな」
「お陰で貯金もなくなったぜ」
 パーティーはもう文字通りスカンピンになっていた。
「これから大変だな」
「金稼がないとな」
「それでまたアイテム揃えるか」
「あの店に行って」
「そうするか」
 こうしたことを話した、そしてだった。
 パーティーは今は宿屋で休んだ、その店のことに驚きながらもだった。またその店に行こうと思うのだった。


何でもある店   完


                2018・7・21

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