貴方の心が好きだから
マリアナには秘密がある、外見はとても可愛らしい女の子だが実は性別は成人している男なのだ。所謂男の娘だ。
しかしそのことは誰にもそれこそ自分が行き倒れていたところを拾って助け探偵事務所の助手をさせている少年ルティオに対してもだ。
内緒にしている、しかし。
誰もが彼を美少女と思い美少女探偵とさえ呼ばれている。その為彼の探偵事務所はいつも客が絶えない。これは彼女の推理能力の高さも関係している。
ある日マリアナはそのルティオに事務所の仕事の後のお金の書類のことをしながらそのうえで彼に言った。
「ちょっといいかしら」
「どうしたんですか?」
「ええ、貴方私のことどう思ってるのかしら」
「どうって。とてもいい所長さんですよ」
ルティオはマリアナにすぐに答えた。
「本当に」
「そう思ってくれてるの」
「だって拾ってくれてここに置いてくれて」
仕事まで用意してくれてというのだ。
「しかもお家にまで住まわせてくれて」
「だからなの」
「まるで太陽ですよ」
マリアナにこうまで言うのだった。
「本当に」
「そうなの」
「はい、僕にとっては」
まさにというのだ。
「最高の人です」
「私はそうなの」
「こんないい人いないです」
「それは誉め過ぎよ」
「誉め過ぎじゃないですよ」
ルティオにとってはというのだ。
「本当に」
「だといいけれど」
「若しもですよ」
ルティオはマリアナに真剣な顔で答えた。
「マリアナさんがいなかったら僕死んでましたから」
「あの時私が助けなかったから」
「はい、それで今も養ってくれて」
仕事を与えてくれて家に住まわせてまでしてくれてだ」
「こんないい人いないです」
「そうなのね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「マリアナさんの為ならです」
「頑張れるっていうの」
「はい、そうしていきますから」
「ううん、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「私に秘密があったらどうするの?」
自分が既に成人している男であることを隠して尋ねた。
「その場合は」
「その場合はですか」
「ええ。どうなの?」
「そりゃ誰だって秘密はありますよ」
にこりと笑ってだ、ルティオはマリアナに答えた。
「それこそ」
「そうなの」
「はい、僕にだってありますし」
彼の過去のことだ、彼はマリアナと出会うまでのことはマリアナにも話したことが一度もないのだ。
「それこそです」
「誰にでもなのね」
「ありますから」
「私に秘密があってもなの」
「いいですよ」
「そうなのね」
「はい、僕はマリアナさんが好きなのは」
ルティオはそれはどうしてかということも話した。
「マリアナさんのお心が、ですから」
「私の心がなの」
「はい、ですから」
それ故にというのだ。
「マリアナさんの秘密や過去はです」
「どうでもいいのね」
「はい、そうしたことは気にしないで下さい」
全くと言うのだった。
「本当に」
「そう言ってくれるのね」
「はい、じゃあお金のことをですね」
「書類で処理していくから」
「わかりました」
こちらもしなくてはならなかった、後で役所に報告したりしないといけないからだ。それで二人でそうした仕事もした。
マリアナはルティオを助手にして仕事を続けていった、その中で彼はある時遂に決意をした、それで自宅てルティオと一緒に夕食彼が作ったそれを食べている時に彼の秘密のことを話した。
「実は私女の子じゃないの」
「えっ、そうなんですか」
「この外見とファッションだけれど」
それでもというのだ。
「もう大人の男でずっとお屋敷に閉じ込められて勉強ばかりさせられていたの」
「そうだったんですか」
「ええ、探偵になる前はね」
「成程」
「それが私の秘密だけれど」
「そうですか、わかりました」
ルティオは素っ気なく返した。
「それでそのことは誰にもですね」
「内緒だけれどね」
「わかりました、誰にも言いません」
「それだけなのね」
「それだけといいますか」
「それだけ?」
「前にお話した通り僕はルティオさんのお心が好きなんです」
彼女のそれこそがというのだ。
「ですから」
「私の秘密はなの」
「本当にそれでいいかなって」
「それだけなの」
「はい、それで終わりです」
「そうなのね」
「だって男の人で昔色々あっても」
それでもというのだ。
「マリアナさんはマリアナさんですよね」
「そう言われたら」
「だったら問題ないですよ」
にこりと笑ってだ、ルティオはマリアナに答えた。
「それで?ってことですよ」
「ルティオ君にとってはそうなのね」
「マリアナさんが男の人でも過去があっても」
それでもというのだ。
「マリアナさんは僕の太陽のままですから」
「私の心がそうだからなのね」
「そうです、何も変わらないですよ」
「有り難う、そう言ってくれて」
マリアナはルティオのその言葉に笑顔で応えた。
「私も助かったわ」
「そうですか」
「何か私もね」
ここでだ、マリアナは思った。それで言うのだった。
「ルティオ君が太陽なのね」
「僕もですか」
「私を照らしてくれるね」
「僕は月と思っていましたけれど」
「それでもよ。私にとってはね」
「太陽なんですね」
「そう思ったわ、じゃあこれからもね」
ここりとしてだ、マリアナはルティオに話した。
「宜しくね」
「はい、こちらこそ」
「お互いに太陽として月として」
「やっていきますね」
「そうしていきましょう」
二人で仲良く話してだ、そしてだった。
マリアナとルティオは楽しい夕食の時間を過ごした、二人はこの時からも一緒だった。お互いに太陽そして月として暮らしていった。
貴方の心が好きだから 完
2018・7・22
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