ドイツの味か
高井田由紀の好物の一つにジャガイモのパイがある、友人達はそのジャガイモのパイが好きな由紀にクラスでこう言った。
「ジャガイモのパイってね」
「日本ではあまりメジャーじゃないわよね」
「そうよね、ジャガイモ料理の中だと」
「どうもね」
「そうよね、けれどね」
口々に言う友人達に由紀が言ってきた。
「これがね」
「美味しいの」
「そうなのね」
「ええ、ジャガイモは何をしても美味しいけれど」
由紀が言うにはだ。
「パイがね」
「一番美味しいの」
「そうなの」
「ええ、これがね」
由紀は友人達にさらに話した。
「絶品だから」
「そんなに美味しいの」
「そうなの」
「そう、だからね」
それでとだ、由紀は友人達にさらに話した。
「よかったら食べてみる?」
「皆でジャガイモパイを」
「それ自体をなの」
「ええ、そうしたらわかるわ」
実際に食べればというのだ。
「その時にね」
「ううん、じゃあね」
「今度皆でそのジャガイモパイ作ってね」
「それで食べる?」
「そうする?」
友人達も由紀の言葉にそれならと考えた、それでだった。
彼女の考えに乗ってだ、集まって作って食べる日も決めた。そうしてから皆でジャガイモのパイを作ることになった。
場所は由紀の家だった、由紀はまずは皆が買ってきたその食材達を見てすぐにこんなことを言った。
「ここにさらにね」
「さらに?」
「さらにっていうと」
「ソーセージもあるとね」
これもというのだ。
「余計にいいのよ」
「ソーセージもなの」
「それもなの」
「これがジャガイモのパイに最高に合うから」
それでというのだ。
「だからね」
「ソーセージもなの」
「買ってこないと駄目だったの」
「あっ、それはもうあるから」
ソーセージはとだ、由紀は皆ににこりと笑って答えた。
「安心して」
「そうなの、じゃあソーセージは別にお料理して」
「茹でるか焼くかして」
「それでパイを焼くのね、これから」
「ジャガイモのパイを」
「そうしましょう、じゃあ今から皆で作りましょう」
こう皆に言ってだ、由紀は皆にジャガイモのパイの作り方を話しつつ自分も作っていった。そしてだった。
友人達は作る中でだ、こうも話した。
「チーズね」
「チーズが沢山必要必要なのね」
「それを惜しみなく使って」
「黒胡椒で味付けするのね」
「そうするの、あと今は潰してるけれど」
見ればジャガイモをそうしている。
「切っての場合もあるし一緒にお肉を入れる場合もあるの」
「ああ、ジャーマンポテトみたいに」
「ああする場合もあるのね」
「ただ潰したりスライスするんじゃなくて」
「他にもあるのね」
「そうなの、それでチーズかバターはね」
こうした乳製品はというのだ。
「ちゃんとね」
「使わないと駄目なのね」
「そうなのね」
「それで今回もなのね」
「チーズを沢山使うのね」
「惜しいと思ったら駄目なの」
チーズ、それをというのだ。
「そうしてね」
「そのうえでなのね」
「じゃあ凄く使うわね」
「たっぷり買っておいてよかったわ」
「じゃあ惜しみなく使うわね」
友人達もだ、由紀の言葉に頷いてだった。そしてだった。
ジャガイモを潰してチーズを多く使い黒胡椒で味付けをしてパイを焼いた、それからソーセージも茹でてだった。
一緒に食べてみた、するとだった。
友人達は目を輝かせてだ、由紀に言った。
「あっ、これはね」
「美味しいわ」
「ジャガイモ料理としてかなり上よ」
「ソーセージとも合うし」
「そうでしょ、だからね」
由紀もジャガイモのパイそれに茹でられたソーセージを食べながら友人達に対してにこにことして話した。
「私このパイ大好きなの」
「ええ、納得したわ」
「この味ならね」
「そう言うのも当然よ」
「好きだっていうのも」
「これならね」
「ドイツの味よね」
友人の一人はジャガイモとソーセージの組み合わせからこう言った、やはりドイツといえばこの二つだ。
だがその友人の言葉にだ、由紀はというと。
少し微妙な顔になってだ、こう言った。
「ちょっとね」
「ちょっとっていうと?」
「これどっちも日本のだから」
「ジャガイモもソーセージも」
「ジャガイモは北海道産でね」
日本で最も有名なジャガイモの産地の一つだ。
「それでソーセージもね」
「日本の豚肉でなの」
「そう、それで日本の企業で作ってるから」
だからだというのだ。
「それでね」
「日本の食材を使っているから」
「ドイツの味かっていうと」
「微妙なので」
「確かにジャガイモはドイツでよく食べるし」
最早主食であると言っていい。
「ソーセージも有名だけれど」
「どっちも日本で作ったものだから」
「ドイツの味かっていうと」
「どうもなのね」
「ドイツの料理も日本の食材で作ると」
そうすればというのだ。
「やっぱり味違うわよね」
「それはね」
「そうなるわよね」
「日本の食材だとね」
「日本の味になるわね」
「ドイツのお料理でも」
友人達も由紀のその言葉に頷いた。
「そうなるわね、けれど美味しいわよね」
「ええ、それはね」
「実際美味しいわ」
「この味確かにね」
「いけるわ」
「だからね、ドイツの味かどうかは考えずに」
そこかというのだ。
「楽しく食べていきましょう」
「そうよね、美味しいなら美味しいで」
「それならね」
「楽しく食べていきましょう」
「パイもソーセージもね」
「そうしていきましょう」
「私まだ飲んだことないけれど」
ここでだ、こうも言った由紀だった。
「ここにビールがあったら」
「最高みたいね」
「それそのままドイツよね」
「ドイツはこれもだから」
ドイツの代名詞はジャガイモとソーセージだけではない、この酒を忘れてはドイツを語れないであろう。
「忘れたら駄目ね」
「じゃあね」
「私達大人になったらね」
「ビールも飲める様になるから」
ビールだけでなくアルコール類即ち酒全般がだ。
「成人したらね」
「ビールも欲しいわね」
「そうよね、じゃあ高校を卒業してもね」
由紀は友人達のその言葉を受けて言った。
「皆でこうしてね」
「友達でいましょう」
「それでこうして集まってね」
「美味しいもの食べて」
「ビールもね」
是非飲もうとだ、友人達も応えた。そして実際に由紀たちは成人してからも付き合いを続けていてジャガイモのポテトにソーセージだけでなくビールも飲む様になった。
だがここでだ、友人達は由紀がビールをどんどん飲む状況に驚いた。
「えっ、まだ飲むの?」
「五〇〇ミリの缶それで十本目よ」
「それでも飲むの?」
「うん、何かね」
その十本目を空けながらだ、成人している由紀は言うのだった。
「全然酔わないのよ」
「いや、ビール十本目でまだ酔わないって」
「由紀ちゃんどれだけ強いのよ」
「ひょっとして酒豪?」
「この前焼酎一升空けたけれど」
その時もというのだ。
「酔わなかったしね」
「まさかザルだったんて」
「由紀ちゃんがそうだったなんて」
「そんなこと思いも寄らなかったわ」
皆このことは想像もしていなかった、それでだった。
由紀の酒豪には驚いた、だがジャガイモのポテトとソーセージは美味くそれと一緒に飲むビールも確かに美味かった。日本の食材でドイツの味かどうかというとどうにもはっきりとは言えないものがあったが。
ドイツの味か 完
2018・7・25
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