忙しい中でも
 雛森加奈は大学生である、そしてアルバイターでもある。
 その両方に忙しい日々を送っている、彼女が働いているアルバイトは今はケーキ屋だがそのアルバイトについてだ。
 大学で友人達に困った顔で話した。
「アイスクリーム売れてるけれど」
「あんたのお店アイスも売ってるの」
「それでなの」
「ええ、アイスも売れてるけれど」
 こう言うのだった。
「それが売れ過ぎなのよね」
「ああ、今年の夏暑いからね」
「記録的な猛暑だからね」
「今だって暑いしね」
「夏休み前だってのに」
「それで今かなり忙しいのよ」
 アルバイトの方がというのだ。
「もう目が回る位にね」
「そんなになの」
「そんなに忙しいの」
「そうなの、アイスを売って在庫をお店から出してそのチェックもして」
 そうしたことをしてというのだ。
「今忙しいのよ、それであんまりにも売れて」
「それでどうしたの?」
「忙しいことはわかったけれど」
「何かあったの?」
「私がアイス担当になったの」
 そうなたっというのだ。
「専門になったのよ」
「あまりにも忙しくてなのね」
「アイス担当を置くことになって」
「あんたになったの」
「そうなの、今ケーキより売れて」
 それでというのだ。
「大変よ、正直夏が終わることを祈ってるわ」
「というかそんなに忙しいって」
「アイスどれだけ売れてるのよ」
「殆どアイスクリームの専門店じゃない」
「そうなってるじゃない」
「本当にそう言ってもいい位売れてるのよ」
 現実問題としてというのだ。
「これがね、私が一人お店切り盛りしている感じよ」
「アイス屋さんを」
「そうなってるのね」
「そうなの、早く夏が終わって欲しいわ」
 心から言う加奈だった、とにかく今彼女は忙しかった。
 それは夏休みに入っても同じでかえってバイトの時間が増えてしかも大学の方のサークルもあってだった。
 それでだ、疲れてだった。
 家に帰ってだ、両親にぼやいた。
「今年本当に忙しいわ」
「ああ、疲れてるみたいだな」
「そうみたいね」
「ええ、サークルもあるけれど」
「アルバイトだな」
「そっちで忙しいのね」
「もう目が回る位よ」
 そこまでとだ、夕食の鯖の味噌煮を食べつつ言うのだった。おかずは他にはトマトに冷やした胡瓜のスープそして白い御飯がある。梅干しや漬物も出されている。
「今年はね」
「暑いからな、今年は」
「記録的な猛暑だからね」
「余計にだな」
「忙しいのね」
「そう、しかも私お店で一番売れているアイス担当になったから」 
 両親にこのことも言うのだった。
「だからね」
「余計にか」
「忙しいくてなの」
「大変なのね」
「そうなんだな」
「そう、疲れてね」
 それでというのだ。
「正直食べないとやっていけないわ」
「そこでそう言うならまだいいわよ」
 母は娘の今の言葉にこう返した。
「食べられるっていうのならね」
「食べられなくなったらまずいのよね」
「それは夏バテだから」
「夏バテになったら」
「もうどんどん落ちるから」 
 調子も何もかもがというのだ。
「だからね」
「食べないと駄目よね」
「あんた忙しいって言いつつもね」
「食べてるからいいの」
「三食しっかりとね」
 そうしているからだというのだ。
「食べてるでしょ」
「忙しいと余計にお腹空くから」
 だからという返事だった、加奈にしても。
「正直ね」
「それで食べているのね」
「そうしているわ」
「ならいいわ、忙しくてもね」
「食べないといけなくて」
「食べられるなら」
 それならというのだ。
「安心しなさい、お店のアイスも食べてるわよね」
「ケーキもね、店長さんがおやつで出してくれるから」
 加奈は母に笑って話した。
「だから毎日ね」
「おいおい、毎日アイスやケーキだと太るだろ」
 父は娘の今の言葉に笑って言った。
「大丈夫か?」
「大丈夫よ、その分動いているから」
「忙しくか」
「だからね」
 それでというのだ。
「太ってないわ」
「だといいがな」
「さて、食べ終わったら」
 それからのこともだ、加奈は話した。
「ゴローの散歩行くわね」
「あら、もう夕方行ったわよ」
 家の犬の散歩はとだ、母は加奈に答えた。
「だからいいわよ」
「そうなの」
「ええ、それにあんた朝行ったでしょ」
 朝早く起きてだ、加奈は早起きなのだ。
「だったらね」
「もういいいの」
「別にいいでしょ、それじゃあね」
「今はなのね」
「ええ、シャワー浴びて休みなさい」
「ゴローとの散歩いいストレス解消なのに」
「それは朝しなさい」
 夕方もう行ったからだというのだ。
「だからね」
「シャワー浴びて」
「しっかり寝なさい、明日もアルバイトかサークルでしょ」
「どっちもないの、だからショッピング行くつもりよ」
 趣味のそれを楽しんでくるとだ、加奈は母に答えた。
「明日はね」
「そうなの、じゃあ無駄使いしない様にね」
「楽しんでくるわ」
 微笑んでだ、加奈は母に応えた。そうして一家で夕食を楽しく食べるのだった。


忙しい中でも   完


                 2018・8・17

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