ヘアアレンジ
シオリの趣味はヘアアレンジだ、自分の赤い見事な長い髪の毛を自分で色々な髪型にセットすることを趣味にしている。
それで学校でもよくヘアカタログを見ているがこの日友人達にカタログを見ながらこんなことを言った。
「どんな髪型にしたらいいかしら」
「ううん、今日は左右を三つ編みにしてロールにしてね」
「それでもみあげのところを下ろしてるけれど」
「他にも色々髪型あるしね」
「そのカタログを見ても」
友人達はシオリが開いているそのカタログを見て話した。
「色々あるし」
「何かとやってみたら?」
「そこにある髪型だけでも」
「ううん、じゃあね」
それならとだ、シウオリはたまたまカタログに載っていた髪型に注目した。それはロングヘアだった。
早速それにしてみた、ヘアアレンジは趣味なのでシオリは慣れた動きで今の髪型から一瞬にロングヘアになった。
友人達にそのロングヘアを見せてだ、あらためて尋ねた。
「どうかしら」
「あっ、いい感じよ」
「似合ってるわ」
「お嬢様って感じで」
「その髪型もいいわね」
「そうなのね、じゃあ次は」
また別の髪型にしてみた、今度は。
オーソドックスなツインテールだった、その髪型にしてみて友人達にあらためて尋ねた。
「今度はどう?」
「あっ、ツインテールもね」
「中々いけてるわ」
「可愛いわよ」
「如何にも女の子って感じで」
「初音何とかって感じでね」
「そうなのね、アニメキャラみたいになったのね」
言われてそう思ったシオリだった、それでだ。
今度は髪の毛の長さを利用して髪の毛を上の方で束ねたポニーテールにしてみた、そのうえでまた尋ねた。
「これはどう?」
「結構ボーイッシュ?」
「それでいて女の子らしくてね」
「清楚可憐ね」
「如何にも女学生って感じよ」
これも好評だった。
それで今度はだ、懐かしの髪型ということで。
八十年代の今では伝説の存在となっている某アイドルからはじまったヘアカット、髪の毛の長さはそのままでそうしてみた。
その髪型についてもだ、友人達に尋ねた。
「どうかしら」
「ああ、昔のアイドルよね」
「あの頃のアイドルの人って皆その髪型だったのよね」
「それでお母さん達もその髪型だったのよね」
「そうよね」
「いや、この髪型するとは思っていなかったけれど」
それでもとだ、シオリは友人達に笑って話した。
「いいみたいね」
「古い髪型になっちゃったけれどね」
「それもいいわよ」
「古きよき髪型ね」
「昭和の」
皆もこう言う、古い髪型もいいというのだ。
シオリはここでさらにだった、別の髪型にしてみた。今度は所謂日露戦争の頃の女性の髪形であった。カタログにはそうした髪型も乗っていたのだ。
「これはどう?」
「あっ、二〇三高地ね」
「与謝野晶子さんね
「今度は文学できたのね」
「攻めてきたわね」
「こんな髪型もカタログにあるのね」
してみてしみじみと思うのだった。
「いやあ、一気に女流文学になったわね」
「ああ弟よってね」
「実はあの人戦争自体は支持していたのよね」
「家を継ぐ弟さんには生きて帰って欲しいって歌で」
「元々そうなのよね」
「そうよね、しかし本当にね」
シオリはカタログをあらためて見て言った。
「色々な髪型あるわね」
「そのカタログ凄いわね」
「本当に何でも載ってる感じね」
「今の髪型だけでなく」
「昔のも載って」
「アニメキャラのまであるし」
シオリは今度はそちらの髪型を見た、そしてだった。
今度は髪の毛を後ろで三つ編みにしてだった、その先を口の先に持ってきて友人達に笑って尋ねた。
「似てる?」
「髪の毛の色違うけれどね」
「色白くしたらそのままね」
「あの制服着て座ったら」
「完全にそのままよ」
「そうなのね。じゃあ今度は」
ここでだ、シオリはアニメから一気にだった。
昔の髪型でもとびきりに凄い髪型にしてみた、髪の毛が長いことを利用して上に一メートル程上げて塔の様にして。
髪の毛の上に噴水や家のディオラマ、小さな模型の池まで置いてだ。友人達に笑って尋ねたのだった。
「これないわよね」
「ああ、昔の貴族の髪型ね」
「欧州の」
「それは確かにね」
「ないわよね」
「何でこんな髪型にしたのかしら」
シオリも理解に苦しむところだった、首を傾げようとしたがヘアスタイルがあまりにも重く首を傾げさせるとそこからこけると思ったので止めた。
「ベルサイユの薔薇の頃らしいけれど」
「フランスよね」
「趙とマリー=アントワネットの頃で」
「何かヘアスタイルがどんどん奇抜になって」
「そうなっていったのよね」
「これ私だから一人で一瞬でセット出来たけれど」
それでもというのだ。
「こんなのね」
「普通時間かかるわよね」
「何人でもして」
「それで一回セットしたら戻すの大変よね」
「無茶苦茶髪型じゃない」
「こんなのしたらどうして寝るのよ」
シオリはこのことも疑問だった。
「ベッドで寝られないでしょ」
「起き上がられないわよね」
「日常生活に滅茶苦茶苦労しそうね」
「これは辛いわね」
「セットしたら解くの大変でずっとしてそうだし」
「髪の毛は毎日洗わないと」
それこそと言うのだった。
「大変じゃない」
「フケ出て髪の毛に脂とか汚れ付いて」
「虱も出て」
「不潔よね」
「何日も洗わないとか」
「これはないわ」
シオリはまた言った。
「私出来ないわ、じゃあね」
「その髪型ほどいて」
「それでね」
「元に戻るのね」
「そうするわ」
こう言ってだ、髪型を元に戻そうとしたがここでだった。
授業チャイムが鳴った、するとそれと同時に先生が入ってきた。
「うわっ、もう来た」
「そういえば今度の授業の先生そうだったわ」
「チャイムが鳴ったらそれと同時に部屋に入ってくる」
「そんな人だったわ」
教師として生徒にあまり好かれるタイプではない、しかもこの教師は自分の授業はいつも遅れていると言って時には授業を強引に進めしかもテストは異常に難しくするという教師として最悪のケースの一つである。
それでシオリも髪型を戻す時間はなかった、それでその昔の欧州貴族の髪型のまま授業を受けたのだた。
先生はシオリにだ、こう言った。
「その髪型授業終わったらすぐに戻せ」
「校則違反ですか」
「校則違反じゃないけれどな」
校則には普通の髪型が禁止されている、誰もこうした髪型をするとは思っていないので禁止しないのだ。
「それでも御前も辛いだろ」
「頭下げられないです」
少しでも角度を下にすれば頭の重みでこけそうになるからだ。
「辛いです」
「だからな」
「はい、授業終わったら戻します」
シオリ自身そのつもりだった、この先生は融通というものを知らないので授業中に戻せとも言われず。
一時間地獄だった、そして授業が終わるとすぐにだった。
シオリは最初の、ロングヘアにする前の髪型に戻った。そのうえで友人達に対してこう言ったのだった。
「もう二度とね」
「貴族の髪型はしないわね」
「シオリちゃんどう見ても辛かったし」
「しないのね」
「ええ、授業中になおしてもよかったじゃない」
今になってこのことをぼやいた。
「一瞬で済むから」
「そんなの言う先生じゃないじゃない」
「自分の授業進めることしか頭にないのに」
「そんな人だからよ」
「仕方ないわよ」
「全く、お陰で大変な目に遭ったわ」
ぼやくことしきりだった。
「ヘアアレンジもいいけれど」
「ああした極端に変なのはね」
「やっぱりよくないわね」
「そうよね」
「ええ、もう普通の髪型のアレンジにしておくわ」
こう言うのだった、そしてシオリはこの日はヘアアレンジはしなかった。普段の髪型で過ごしてもう二度とああしたマリー=アントワネットな髪型にはアレンジしないと強く誓うのだった。
ヘアアレンジ 完
2018・8・22
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