魔法を学んで
ハルト=ベイカーは魔法使いになろうと思って日々魔法のことばかり勉強している。その為学業の方は散々だが。
そのことに構わずだ、魔法のことばかり学んでいた。その為魔法に関する知識はそれこそ古今東西何でも詳しい。
今はクラスで中国の仙術の本を読んでいるが。
そのことについてだ、クラスメイト達にこう言われた。
「今度は仙人になるっていうの?」
「この前まで魔女になるって言ってたけれど」
「今度は仙人なの?」
「いや、魔女になることは変わらないから」
それはとだ、ハルトはクラスメイト達にはっきりと断った。
「今もね」
「じゃあ何で仙人の本読んでるの?」
「どうしてなのよ」
「だって仙術と魔術って関係があるから」
だからだとだ、ハルトは話した。
「無関係じゃないのよ」
「それ本当?」
「魔女と仙人って全然違うじゃない」
「全く別ものじゃない」
「別ものじゃないわよ。中国と欧州は昔から交流があって」
歴史の話もだ、ハルトはした。
「それでね」
「魔女と仙人も関係あるの」
「そうなの」
「そうよ、互いに影響し合ってね」
そのうえでというのだ。
「発達もしていったみたいなのよ」
「そうだったの」
「仙人の術と魔女の魔法って関係あったの」
「それで今あんたも仙人の本読んでるの」
「そうよ、例えば仙人のお薬を作って」
所謂丹薬をというのだ。
「魔女の魔法にも使えば」
「凄いことになる」
「だからなのね」
「今は仙人の本を読んでるのね」
「そうよ、日本の陰陽道の本も読んでるし」
こちらもというのだ。
「修験道も密教もだし」
「オカルト入ってない?」
「何かそんな感じもするけれど」
「オカルトも勉強してるから」
ハルトはオカルトも否定せずに答えた。
「そうしてね」
「学んでいって」
「それでなのね」
「本気で魔女になるつもりなのね」
「箒でお空も飛びたいわね」
笑ってこうも言った、そして実際に箒で空を飛ぶ術のことも勉強していた。だがその勉強の中でだ。
生贄を捧げるとかいう術や黒ミサや人を殺めたり害する術についてはだ、ハルトは友人達に眉を顰めさせて言うのだった。
「蟲毒とかあるけれど」
「あの生きものを殺し合わせて最後に残った一匹を呪いに使う?」
「何かそんな術よね」
「とんでもない術よね」
「ああした術は絶対によ」
それこそというのだ。
「使ったら駄目よね、防ぐ為に勉強はしてるけれど」
「呪いとかそういうのは嫌いなの」
「そうなの」
「魔法は何の為にあるか」
ハルトはそこから話した。
「世の為人の為じゃない」
「世の中や人を幸せにする」
「その為のものなの」
「だからね」
それ故にというのだ。
「そんなね」
「呪ったりとか」
「そうしたことにはなの」
「魔法は使ったら駄目よ」
またこう言うのだった。
「呪いだけじゃなくて生贄とか悪いことをする様な」
「そうしたことにはなの」
「使ったら駄目っていうのね」
「ほら、傘もね」
友人に貰って今も大切に使っているそれの話もした。
「さすと雨を防いでくれるでしょ」
「雨の日は傘よね」
「もうこれがないと駄目よね」
「やっぱりね」
「そうでしょ、けれど人を叩いたり突いたりにも使えるでしょ」
傘はというのだ。
「そうしたら危ないでしょ」
「特に突いたらね」
「傘も結構威力あるのよね」
「目なんかに入ったら」
それこそとだ、クラスメイト達も納得して頷いた。
「凶器よね」
「もう立派な」
「そうでしょ、傘だってそうで魔法もよ」
こちらもというのだ。
「悪いことに使ったら駄目よ」
「じゃあハルトはいい魔女になるつもりなの」
「そうなりたいのね」
「当たり前よ、童話の悪い魔女なんか」
あの三角帽子に身体全体を覆う黒い服に曲がった長い鼻を持つ老婆をイメージしてだ、ハルトは話した。
「絶対にならないから」
「もうそれこそ」
「何があったもなのね」
「なるつもりはないのね」
「そうよ、若しそうなったら」
その悪い魔女にだ。
「もう捕まるじゃない」
「魔女も捕まるの?」
「そうなるの?」
「そりゃ法律違反をしたらね」
つまり犯罪行為をというのだ。
「捕まるでしょ」
「人を殺したりしたら」
「その時はなの」
「そう、もうね」
それこそというのだ。
「捕まるでしょ、それかね」
「それか?」
「それかっていうと」
「いい魔女や魔法使いにやっつけられるわよ」
逮捕されなくてもというのだ。
「悪い奴はそうなるのが決まりじゃない」
「それはね」
「言われてみればそうね」
「世に悪が栄えた試しなし」
「悪い奴って絶対にそうなるわね」
「そうでしょ、どんなお話でも悪い魔女とかはやっつけられてるわ」
このことをだ、ハルトは強調して言った。
「だからね」
「あんたいい魔女になりたいのね」
「世の為人の為に魔法を使う」
「そんな魔女になりたいのね」
「後はね」
ハルトはさらに話した。
「もっともっと勉強して」
「世界中の魔法を」
「そうしてなの」
「世界一、人類史上最高の魔女になるわ」
このことも心掛けているというのだ。
「絶対にね」
「そうなればいいわね」
「本当に魔法があれば」
「それで世の為人の為になれば」
「本当にいいわね」
「ええ、だから今も勉強して心はしっかり持つわ」
ハルトは友人達に笑顔で約束した。
「そじゃないと魔女じゃないから」
「頑張ってね」
「その気持ちは応援するから」
「本当に魔女になれるかどうかはともかく」
「やる気と心構えはね」
友人達は魔法は信じていなかった、だがハルトのその心は信じた。それで彼女に暖かい声で応えた。
ハルトは彼女達のその言葉を励みとして心を定めたうえで魔法を学び続けた、やがて魔法の実在が証明された時彼女は日本を代表する魔女それも正しい心を持つそれとして知られる様になった。全ては彼女がまだ学生だった頃からはじまっていた。魔法の存在が信じられていなかった中で学んで心を確かにしていた頃に。
魔法を学んで 完
2018・8・26
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