ブルーーリーダー
月詠星司は朝熊日向、如月夕也と三人でユニットを組んで活動している。ユニットに入ったのは最後だったが。
所属している事務所の社長にリーダーに任命された、その時彼は社長に冷静だがどうかという顔で問うた。
「僕の加入は一番後ですが」
「それは問題じゃないんだよ」
社長は星司に即座に答えた。
「君が一番ね」
「一番ですか」
「リーダーシップがあるから」
だからだというのだ。
「二人に比べてね」
「日向、そして夕也とですか」
「日向はムードメーカー、夕也はバランスタイプでね」
二人はそれぞれそうしたキャラだからだというのだ。
「そして君はね」
「リーダー向きですか」
「クール担当でね」
それでというのだ。
「二人も君の言葉は絶対に聞くしいつも冷静によく考えているから」
「だからですか」
「君をリーダーに選んだんだよ」
加入は最後だがというのだ。
「二人はどうもそうしたキャラじゃないからね」
「リーダー向きではないからですか」
「そうだよ、そして君の色はね」
社長はこちらの話もした。
「青にしたがね」
「このこともですか」
「君がクールで知的だからだよ」
そうしたキャラだからだというのだ。
「青にしたんだよ」
「日向が赤で夕也は黄色で」
「僕は青ですか」
「三色丁度いいと思ってね」
それでというのだ。
「青にしたんだよ」
「そうですか」
「赤、青、黄色で丁度いいね」
「グループのカラーとして」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「それぞれのキャラとカラーも合ってるしはっきりと合ってるから」
「僕はリーダーで青ですか」
「活動してもらうよ」
「そうですか」
「あとね」
「あと?」
「うちの事務所はソロ活動もどんどんしてもらうから」
ユニットの活動だけでなく、というのだ。
「頼むよ」
「わかりました」
星司は社長の言葉に頷いた、そしてだった。
彼はユニットのリーダーとして活動することに納得した、社長に言われた言葉にアイドルに前から言われたこともあったのでそれならとも思って納得出来ないものはなくてだ。ただ社長の言葉を鵜呑みにしている実感は少しだがあった。
それでだ、その活動をはじめたが。
確かにソロ活動も多かった、その活動をしている時にだ。
若い十代の女子アイドル達はよくだ、彼についてこう言っているのを聞いた。
「あのクールキャラいいよね」
「そうよね、年下だけれどね」
「頼りになるって感じで」
「いざって時は知恵出してくれる」
「それにリーダーシップも取ってくれるし」
「年下でもね」
「頼りになる弟って感じでね」
そこにだ、多くの娘達は年下を頼るといういささか倒錯したものも感じつつ彼をいいと話していた。
その話にだ、彼はマネージャーに話した。
「あの、僕は弟っていいますが」
「うん、そうだよね」
マネージャーもその話を聞いて知っているのでこう返した。
「君達まだまだデビューしたててね」
「年齢はですね」
「アイドルの中でも若いから」
だからだというのだ。
「それでね」
「弟に思われているんですね」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「クールで知的なキャラで」
「リーダーだからですか」
「それでだよ」
だからだというのだ。
「あの娘達は君をそう思ってるんだよ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
それでというのだ。
「ああしたことを言ってるんだ」
「そうでしたか」
「まあ君はそういうキャラってことで」
知的なリーダーだというのだ。
「やっていってもらうから」
「アイドルとしては」
「実際にそうだしね」
アイドルとだけでなく素の彼もというのだ。
「それは日向君や夕也君もそうだけれど」
「二人は確かに」
「アイドルでなくてもだね」
「そのままですね、そしてですか」
「君もなんだよ」
星司もというのだ。
「社長さんも全部見てね」
「それで、ですか」
「君達それぞれのポジションもカラーも決めたんだよ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
「これからもですね」
「やってもらうよ、あと今度の仕事だけれど」
マネージャーは星司にさらに話した。
「ユニットとしては君一人だけれど」
「事務所としてはですね」
「そう、ジュニアアイドルの娘達と一緒だから」
星司よりも年下の娘達だ、この事務所にはそうしたタレントもいるのだ。
「三人のね」
「彼女達とですね」
「雑誌モデルやってもらうから」
「一緒に撮影場所までですね」
「行って仕事しようね」
「わかりました」
星司はマエージャーの言葉に素直に頷いた、そうしてその娘達と仕事に赴いたが。
その娘達を時には諭し時には宥め時には励ました、それでだった。
その娘達は星司本人にだ、こう言った。
「今日は有り難うございます」
「何かとよくしてもらって」
「まるでお兄さんみたいでした」
「いや、僕は何も」
そう言われても特に特別なことをした覚えはないのでだ、星司はこう返した。
「していないよ」
「いえ、何かと教えてもらったり」
「励ましてくれたり」
「お陰で今日は凄く気持ちよくお仕事出来ました」
こう言うのだった。
「お仕事のことも教えてもらって」
「気配りもしてもらって」
「本当に有り難うございます」
三人の娘達は星司に言うのだった、だが。
星司自身は何かした覚えはなくだ、マネージャーと二人になった時に言った。
「何かあの娘達随分僕に感謝しているけれど」
「うん、実際にかなり感謝しているよ」
「僕は何も」
「していたよ」
マネージャーは星司に笑顔で答えた。
「いつも通りのことをね」
「いつも通りですか」
「そう、いつも通り知的なリーダーとしてね」
そのポジションとして、というのだ。
「ちゃんとしていたよ」
「そうでしたか」
「そしてそれがね」
そのことがというのだ。
「よかったんだよ」
「あの娘達にとっても」
「そうだったんだ」
「そうでしたか」
「そう、そしてね」
「そして、ですか」
「そうした子だからね」
星司がというのだ。
「だから社長さんも君をユニットのリーダーにしたんだよ」
「そうでしたか」
最初に社長に言われた時にも納得していた、だがこの時は言われた言葉を鵜呑みにしていた。そう言われるとそうなのかと思ったのだ。
だが今はだ、その話を聞いてだった。彼はわかったのだ。
「僕がこうした人間だから」
「そうだよ、だから今回もね」
「あの娘達もですね」
「感謝しているんだよ、ではね」
「これからもですね」
「そう、頑張ってね」
アイドル、そのユニットのリーダーとしてだ。マネージャーは星司に笑顔で言った。そして星司もだ。
笑顔で頷いて応えた、そうしてユニットのリーダーとして活動していく決意をあらたにするのだった。
ブルーリーダー 完
2018・8・27
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