水の妖精
自らの国を滅ぼしてしまったセシルは一人旅を続けていた、国を滅ぼしたその力は絶大で女の一人旅でもどういったならず者もモンスターも倒して旅を続けられた。
その旅の中でだ、セシルは自分と同じ一人で旅を続ける少女の冒険者と出会った。
その少女は水色の髪の毛に青い瞳を持っていて背はセシルよりも数センチ高かった。職業は戦士でありセシルが最初彼女を見たのは闘技場においてだった。
闘技場で一人マンティコアを倒した、少女は剣技だけでなく水の魔法も使ってそのうえで三体のマンティコアを倒していた。
その戦いぶりを見てだ、セシルは少女に声をかけたのだ。
「凄い戦いだったわね」
「そうかしら」
「三体のマンティコアを倒すなんてね」
それこそというのだ。
「凄かったわね」
「あれ位出来ないとね」
笑ってだ、少女はセシルにこう返した。
「一人で冒険とか出来ないわよ」
「一人でなのね」
「そうよ。ドラゴンと戦うことだってあるでしょ」
一人で冒険をしていればというのだ。
「だからね」
「あれ位出来て当然っていうのね」
「そうよ、それであんたじゃどうなの?」
「私は?」
「そう、あんたはね」
彼はと言うのだった。
「どうなのよ」
「私もよ」
笑ってだ、セシルは少女に答えた。
「一人で冒険者をしているわ」
「私と一緒ね。だったらね」
「わかるっていうのね」
「実際そうでしょ、マンティコアでもね」
ただ強いだけではなく極めて狂暴なこのモンスターでもというのだ。
「三体位一人で倒せないと」
「駄目ね、しかもね」
「闘技場はいつも前から出て来るわね」
「外では違うわ」
森や山を通るその時はというのだ。
「それこそね」
「そうよね、後ろから襲われたり」
「そうなるから」
だからだというのだ。
「闘技場ではあれ位出来ないと」
「前からしか来ないなら」
「そうよ、私もやってみせたのよ」
そうだったというのだ。
「普通にね」
「そうなのね、それで今日お金入ったわね」
「さっき勝ってね」
闘技場でというのだ。
「私もここに来るまでに実はゴールドドラゴン倒してね」
「凄いのやっつけたわね」
「お金持ってるのよ、いいお店に入って」
そしてというのだ。
「美味しいもの食べましょう」
「二人でなのね」
「ここで会ったのも何かの縁だし」
それでというのだ。
「二人でね」
「一緒にね」
「飲んで食べましょう」
二人で話してだ、そしてだった。
実際にだった、セシルは少女と二人でこの街で一番いい店に入ってそのうえで楽しんで飲んだ。ここからだった。
セシルは少女と意気投合して二人で冒険をする様になった、すると一人でいる時より楽にしかも明るく冒険が出来て。
少女はセシルにとってこれ以上はないパートナーとなっていった、そうしてその中で彼女は少女に完全に打ち解けてだった。
ある日自分の身の上を話した、その時二人で冒険の途中夜焚火を囲んで狩りで手に入れた猪を捌いてその肉を焼いて食っていた。
その猪の肉を食いつつだ、自分のことを話したのだった。
「そういう訳でね」
「あんた一人でなの」
「そう、旅をしているのよ」
「そんなことがあったのね」
「そうなのよ、私はね」
遠い、悲しい目をしてだった。セシルは自分と同じものを食っている少女に対してこう言ったのだった。
「自分の国を滅ぼしたね」
「悪人だっていうのね」
「そうよ、これ以上はないまでにね」
「そうれはね」
「それは?」
「今国はずっと氷漬けよね」
「ええ、それで生き残った人達はいるけれど」
残った国民、彼等がというのだ。
「私に怒っているのよ」
「それでなのね」
「私は国から逃げたのよ。今も国はね」
「氷漬けになっていて」
「その中にあるわ」
「じゃあ氷が溶けたら」
そうなった時のことをだ、少女はセシルに話した。
「その時は皆助かるわね」
「多分ね。けれどね」
遠い悲しい目のままでだ、セシルは少女に返した。
「そんなの無理よ」
「あんたの氷の魔導書の力だから」
「とんでもなく強い力だから」
それ故にというのだ。
「だからね」
「氷を溶かせないっていうのね」
「そう、絶対にね」
「絶対はこの世にはないわよ」
笑みになってだ、少女はセシルに返した。
「それはね、だからね」
「それでっていうの」
「あんたの氷の魔法も炎の魔法には弱いでしょ」
「ええ、氷と炎は相反するものでしょ」
魔法でもそうなっている、その為セシルはイフリートやサラマンダーといったモンスターは嫌いで彼等との戦闘も自分の魔法が炎属性の彼等には抜群の効果があっても自分が攻撃を受けても同じなのでしたくないと思っている。
「だからね」
「炎の魔法だとね」
「多分その氷も溶けるわ」
「そうね、あとあれね」
ここでだ、少女はセシルに笑ってこうも言った。
「お水にも溶けるわね」
「ああ、氷水ね」
「氷はお水の中では溶けていくわね」
「お水の方が温かいから」
その温度が高いからとだ、セシルもこのことは知っている。夏によく氷を出して水の中に入れて冷やして飲んでいるからだ。
「だからね」
「そうなるわね」
「あんたひょっとして」
「私水魔法大の得意だから」
「無理よ。国全体を覆っているのよ」
自分が出してしまった氷はとだ、セシルは話した。
「だからね」
「ちょっとやそっとのお水だと」
「溶けないわよ」
「それで、っていうのね」
「それこそ温泉にでも覆われないと」
そこまでならないと、というのだ。
「溶けないわ」
「温泉ね。わかったわ」
「わかった?」
「あんたの国をどうすれば救えるのか」
「あのね、魔法の氷で国全体が覆われているのに」
豚肉によく似ているがより硬く匂いもきつい猪の肉を食いつつだ、セシルは少女に対してどうかという目で答えた。
「無理に決まってるでしょ」
「絶対にっていうのね」
「そうよ、絶対によ」
「だからさっき言ったでしょ」
「絶対はないっていうのね」
「そうよ、そんなことは」
「まあまあ。試しにあんたの国に行きましょう」
少女はセシルに笑ったまま提案した。
「そうしてね」
「氷を溶かそうっていうのね」
「国を覆っているね、あんたも国は救いたいでしょ」
「私がしたことだから」
どうにかしたい、セシルはその本音も述べた。
「やっぱりね」
「だったらよ」
「どうにかする為に」
「戻りましょう、国民の人達があんたに何か言ってきたり何かしようとするなら」
その時はというと。
「私が全部引き受けるから」
「いいわよ、そんなの」
「着にしないで。私あんたの相棒になったしあんたを好きになったから」
「だからなの」
「一肌も二肌も脱ぐわ」
「そうしてくれるから」
「行きましょう、まあ任せて」
こう言ってだ、少女はセシルに彼女の祖国に連れて行ってもらった。生き残っていた国民からの罵倒や非難は全て彼女が庇って引き受けてくれた。セシルは少女にこのことにその度お礼を言ったが少女は笑っていいとした。そうして氷を前にした時に自分が水の妖精であることを話して。
彼女の力を使った、すると雨が降り下から温泉が噴き出てだった。
氷を覆い徐々にだった、国を覆っていた氷が溶けて。
遂には国が救われこれまで氷の中にあった国が再び動き出した、セシルはこのことに驚いたが。
「あんたも国も救われた、よかったじゃない」
「よかったって言うけれど」
「お礼をっていうの」
「何ていえば」
「いいのよ、私はあんたの相棒でね」
「私のことが好きだからっていうの」
「そうよ、冒険の間いつも助けてくれているし」
戦闘やお金の使い方、そして料理等でだ。少女は実はお金の使い方は荒く料理も全く出来ないのでセシルが全部しているのだ。しかも文句も言わず。
「だからね」
「いいっていうのね」
「そうよ、気にしないでね」
それでというのだ。
「このことを喜んでね」
「そうなの」
「それでどうするの?これから」
国は救われた、それで少女はセシルにこれからのことを尋ねたのだ。
「あんたの国は元に戻ったけれど」
「けれど私がしたことは戻らないから」
セシルは少女にこう返した。
「国にはね」
「戻れないのね」
「ええ、それに私冒険が好きになったしあんたもね」
「私もなの」
「好きになったから。だから」
「一緒になのね」
「冒険。続けましょう」
少女に笑みを浮かべて言った。
「そうしましょう」
「わかったわ、じゃあね」
「これからもね」
セシルは救われた祖国には何も言わずそのうえでだった。
妖精である少女と共に国を後にした、そのうえで冒険を続けた。かけがえのない友人となった彼女と二人で。
水の妖精 完
2018・8・29
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