将来の進路
登瑛戸は軍事訓練を受ける高校に通っていて成績優秀品行方正な学生として知られている。特に射撃が優れている。
その彼にだ、進路指導の先生が尋ねた。
「君は将来どうするのかね?」
「はい、防衛大学に進みたいです」
瑛戸は先生にすぐに答えた。
「そして将来は自衛官になりたいです」
「そうか、君は成績優秀でだ」
先生は瑛戸の返答に即座に答えた。
「品行方正、しかも射撃の腕もいい」
「だからですね」
「この学校から自衛官になる者も多いしな」
「防衛大学にもですね」
「成績優秀な生徒は毎年結構行っている」
それでというのだ。
「君もだ」
「進路としてですね」
「いい、では入学してから」
それからはともだ、先生は言った。
「陸上自衛隊だね」
「そして狙撃兵かレンジャーになりたいです」
「レンジャーにかい」
「はい」
瑛戸は先生に率直に答えた。
「そう考えています」
「狙撃兵はわかるが」
「レンジャーはですか」
「君は身体能力も高いが」
その方面の成績も優秀なのだ。
「しかし」
「狙撃兵の方がですか」
「向いていると思うが」
「はい、それは僕も思いますが」
「レンジャーにもかい」
「なりたいとも思っています」
「いいのかい?レンジャーは陸上自衛隊の花形だが」
エリートとして知られている、レンジャーの章を左胸に着けているとそれだけで陸上自衛隊では一目置かれる程だ。
「しかし」
「過酷ですね」
「その過酷さはこの学園どころか」
それこそというのだ。
「陸上自衛隊でもだ」
「最もですね」
「そんな部隊だ」
だからだというのだ。
「だからだよ」
「そこに進むことは」
「止めはしないが」
それでもというのだ。
「過酷だと言っておく」
「そうですね」
「そうだ、それでも行きたいのか」
「そうも考えています」
「そうか。ではな」
先生も頷いた、そうしてだった。
瑛戸の進路に防衛大学、レンジャーのことも書いた。この話はすぐに瑛戸の友人達の耳に入ってだった。
瑛戸は彼等にこのことを聞かれた。
「何でなんだ?」
「レンジャーにも行きたいんだよ」
「防大はわかるさ」
「俺達だって自衛隊に行く奴多いしな」
「それはわかるけれどな」
「狙撃に行きたいことも」
このこともというのだ。
「けれどな」
「何でレンジャーもなんだよ」
「そこがわからないけれどな」
「聞いていいか?」
「いいですよ、隠していませんから」
瑛戸は彼等にすぐに答えた。
「このことは」
「そうか、じゃあ行ってくれるか?」
「それはどうしてなんだ?」
「何でレンジャーにもっていうんだ?」
「物凄い厳しいっていうのにな」
「女の人がいません」
瑛戸は友人達にすぐに答えた。
「だからです」
「そういえば御前女の子に声かけないな」
「向こうからかけられない限り」
「態度も素っ気ないしな」
「おまけにな」
「交際したこともないな」
「はい、僕は女の人が苦手です」
やはり素直に言う瑛戸だった。
「どうしても」
「御前顔いいのにな」
「スタイルもいいし」
「しかも成績優秀で品行方正」
「性格もいいしな」
「もてるのにな」
「僕には家族がいまして」
それでというのだった。
「そしてです」
「そして?」
「そしてっていうと?」
「姐が二人、妹が二人いて」
そうしてというのだ。
「彼女達にいつもからかわれているので」
「いや、女の子がいつもそれだけいるってな」
「それ天国だろ」
「所謂ハーレムじゃないか」
「それで何でそう言うんだよ」
「嫌そうにな」
「貴女達は女性の怖さをわかっていません」
瑛戸はいぶかしむ友人達にクールに答えた。
「そしてはしたなさやだらしなさ、体臭まで」
「女の子って甘い匂いするんだろ」
「それも凄くな」
「その匂いがいいっていうけれどな」
「違うのかよ」
「違います、恐ろしいまでにです」
まさにというのだ。
「悪臭がするのです」
「えっ、マジかよ」
「女の子の匂いって臭いのか」
「そうなのか」
「そうなのかよ」
「そうです、あまりにも酷い悪臭でしかもです」
さらにというのだ。
「先程申し上げた通り怖さ、はしたなさだらしなさは」
「凄いのか」
「そうなのか?」
「嘘だろ、それ」
「この学校の女の子達なんてな」
「それは異性の目が多いからこそ」
瑛戸はさらに言った。
「気をつけているのです」
「じゃあその目がないとか」
「男の目が少ないと」
「しかも家族だと遠慮しなくていいしな」
「余計に凄いか」
「そうです、最早女性だけですと」
女だけと言っていい家ならというのだ。
「もうです」
「凄いか」
「行いも匂いも」
「全部か」
「そうなんだな」
「それを幼い頃から見てきていてです」
そうしてというのだ。
「僕は思ったのです」
「女のいないところにいたい」
「そう思ってか」
「それでなんだな」
「はい、狙撃は得意だからですが」
軍事関係の中で最もだ。
「レンジャーはバディを組みますね」
「二人一組でな」
「男だけでな」
「今のところ性別が違って組むのはないな」
「流石にな」
「だからです」
瑛戸は友人達に話した。
「僕はそちらも考えているのです」
「そこまで女が苦手かよ」
「そうなんだな」
「そうなのです、ただ」
ここでだ、瑛戸は女嫌いであることから連想されることについても述べた。
「僕は同性愛の気はないです」
「それはないんだな」
「ホモじゃないんだな」
「そうした趣味はないんだな」
「そうした感情を抱けません」
愛情やそうした感情はというのだ。
「このことはお断わりしておきます」
「そうか、けれどな」
「進路はわかったけれどな」
「それじゃあ結婚出来るのかよ」
「将来な」
「二次元という手があります」
瑛戸は自分のそうした将来についても思った友人達にこう返した。
「違うでしょうか」
「そっちか」
「今はそっちもあるからな」
「二次元キャラと結婚してる人もいるしな」
「それじゃあな」
「御前もか」
「そうも考えています」
瑛戸は友人達ににこりともせずに答えた、彼の進路は少なくとも先生に告げて自分でも確かに決めていた。
彼は実際に防衛大学に入学し陸上自衛隊に入隊し狙撃兵からレンジャーになった、だが女嫌いは相変わらずで。
これで結婚出来るのかと周囲は心配した。しかしそんな彼も三十を過ぎた時にまさに大和撫子という可愛い静かでかつ匂い立つ女性と巡り合い結婚した。ここで周りも彼が嫌いなのは何であるのかもわかったのだった。
将来の進路 完
2018・9・19
ミラクリエ トップ作品閲覧・電子出版・販売・会員メニュー