和洋の折衷
 影や怨霊のことでいつも悩まされているマツ=ルドリーも普段はフラワーコーディネイターとして平和に暮らしている。
 それはこの時も同じで午後の仕事を半ばまで終えてだった。
 おやつになったがマツは自分でインスタントコーヒーを煎れた、この時に日本人の仕事仲間達に微笑んで言った。
「インスタントコーヒーは凄いですね」
「粉入れてお湯入れたらですから」
「それで出来ますから」
「確かに凄いですよね」
「凄い発明ですよ」
「日本人の発明した中で」
 フランス人として言うのだった。
「インスタントラーメン、使い捨てカイロと並ぶ発明品ですよ」
「そこまで、ですか」
「そんなに凄いですか」
「インスタントコーヒーって」
「それでインスタントラーメンと使い捨てカイロも」
「この三つで人類がどれだけ助かっているか」
 こうまで言うのだった。
「想像も出来ないです」
「インスタントラーメンはすぐ食べられますしね」
「それこそお湯入れたらですから」
「カップ麺とかチキンラーメンなんて特にそうで」
「凄いですからね」
「そうです、そして」
 マツは今度は自分が食べるおやつを出して話した。
「お餅最高です」
「ああ、日本のお餅はですか」
「最高ですか」
「マツさんそういえばよくお餅食べられてますね」
「おやつの時には」
「あんこと一緒に食べてもきな粉を付けて食べても」
 甘くしてもというのだ。
「お醤油とも大根おろしとも合って」
「辛口でもいいですよね」
「実際にお餅は」
「お雑煮にしても善哉やお汁粉にしても」
 汁ものにしてもというのだ。
「どれもいいので」
「だからですか」
「マツさんお餅も好きですか」
「それも大好きなんですね」
「はい」
 その通りだとだ、マツは大福餅を出しつつ日本人の同僚達に話した。彼女が食べる餅は今日はこちらだった。
「本当に。その柔らかさも」
「そうですか」
「それじゃあですね」
「その柔らかさも好きで」
「いつも召し上がられてるんですね」
「日本にある食べものの中で」
 それこそと言うのだった。
「お餅が一番好きです、そしておやつには」
「コーヒーとお餅」
「この二つですね」
「その組み合わせですね」
「これが一番ですね」
 実際にこう言ってだ、マツは笑顔でインスタントコーヒーを飲み大福餅を食べた。そうして午後の一時を楽しんだ。
 マツはよくコーヒーと餅を楽しんだ、それが日本にいる楽しみの一つになっていた。それで日本に来た兄にも話した。
「インスタントコーヒーもいいですが」
「すぐに出来てかい?」
「そして味もです」
 肝心のそれもというのだ。
「凄くいいのですよ」
「すぐに出来てそれだから」
「私はいつも飲んでいます」
 そうしていることを話すのだった。
「毎日」
「豆から煎れるよりもなんだ」
「ずっといいですよ」
「マツ的には」
「はい、そして」
 マツは兄を甘味屋に案内していた、日本の甘い菓子や楽しめるしかも純粋に和風の趣の店の中で話すのだった。
「お餅もです」
「日本の食べものもだね」
「これが最高なんです」
「あれだね、お餅は」
 兄も餅について話した。
「お米を練った」
「餅米をですね」
「先に臼とか杵でつくんだよね」
「そうして作ります」
「日本では新年に食べるんだよね」
「今は何時でも食べられて」
「マツもなんだね」
 いつも食べるているのだとだ、兄も理解した。
「何時も食べているんだね」
「お部屋に買い置きしています」
「そこまで好きなんだ」
「はい、そして」
「今からもだね」
「このお店コーヒーもあるんですよ」
「日本の甘いもののお店でもかい?」
 兄はここで店の中を見回した、客は多くどの客も団子や白玉や饅頭、羊羹といった日本のお菓子を食べてお茶を飲んでいる。
「コーヒー出るのかい」
「そしてお餅も。きな粉を付けますか?」
「きな粉ねえ」
「兄さんはご存知ないと思いますが」
 マツはそのきな粉のことも話した。
「大豆から作った黄色い粉で」
「甘いんだ」
「甘く味付けされていまして」
 それでというのだ。
「美味しいですよ」
「じゃあきな粉を付けたお餅とだね」
「コーヒーで」
 この二つの組み合わせでというのだ。
「楽しみましょう」
「それじゃあね」
 兄は妹の言葉に頷いた、そしてだった。
 マツはお店の人にコーヒーをきな粉を付けた餅の組み合わせを二組注文した、するとすぐにその注文が来た。
 まずはコーヒーを入れている椀を見てだ、兄は言った。
「しかしね」
「日本のお椀にコーヒーはですね」
「凄い組み合わせだね」
「はい、ですが美味しいですよ」
「そうなんだ」
「期待しておいて下さい」
「わかったよ、それと」
 今度はきな粉をかけて本当に黄色くなっている餅を見て言った。餅は二つある。
「これはまた」
「変わっていますか」
「何ていうかね」
 どうにもという返事だった。
「凄いね」
「外見は。ですが」
「美味しいんだね」
「はい」
 マツは兄に笑顔で答えた。
「ですから」
「食べてもだね」
「後悔しません」
 日本語で言う太鼓判を押した言葉だった、尚二人が今話しているのはフランス語である。兄妹なので砕けて話しているのだ。
「ですから」
「よし、じゃあね」
 兄は妹の言葉を受けてだった。
「今からね」
「召し上がってくれますね」
「そしてマツもだね」
「頂きます」
「そうか、じゃあ」
「一緒に食べましょう」
 こう話してだ、そしてだった。
 兄はマツと共にその餅とコーヒーを口にした、まずは餅を食べてそれからコーヒーを口に含んだが。
 一口ずつ食べてだ、妹に言った。
「確かに」
「美味しいですね」
「意外と以上に。まずは」
 兄はさらに話した。
「お餅だけれど」
「如何だったでしょうか」
「不思議な柔らかさだね」
「欧州、フランスにもですね」
「ちょっとない感じで」
 そうした柔らかさだというのだ。
「口触りが不思議でこの粉の甘さが」
「きな粉のですね」
「あっているね。餅自体はあっさりしているけれど」
 そうであってもというのだ。
「きな粉の甘さがあって」
「それで甘くて」
「それでね」
 餅の柔らかさ、きな粉の甘さがあってというのだ。
「いいね」
「そうですか」
「そう、そしてね」
 兄は言葉を続けた。
「コーヒーとね」
「合いますね」
「日本のお椀に入っていても」
 それでもというのだ。
「コーヒーはコーヒーでね」
「そうですね」
「しかもこのお餅と合う」
「日本のお菓子ですが」
「うん、それでもね」
 甘いがというのだ。
「合うね」
「全く合わない様に見えて」
 それでもというのだ。
「実はです」
「合う」
「日本のものと欧州の違いがあっても」 
 それでもというのだ。
「合うのです」
「それでだね」
「私も好きです」
「どうして好きかわかったよ」
「左様ですね、では」
「また日本に来る時があったら」
 兄は微笑んで妹に応えた。
「この組み合わせを楽しむよ」
「コーヒーとお餅を」
「絶対にね、こんな美味しい組み合わせはないから」
 それ故にというのだ。
「是非ね」
「そうされて下さい」
 マツも餅とコーヒーを口にして楽しんだ、そうしつつだった。
 彼女は兄と共に店を出てそれから彼女が案内できる範囲で日本の観光名所を案内していった、そのうえで兄との再会を誓って別れた。その次の日また餅とコーヒーを楽しんだ。


和洋の折衷   完


                   2018・9・26

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