純情ロボットガール
 花渚ロボは実はロボットである。
 このことは一緒に暮らしている博士だけが知っていることだが。
「別に隠すことはな」
「ないですか」
「疚しいところがあるか」
 戸籍上の父にもなっている博士はこう言うのだった。
「御前はロボットだ、確かにな」
「それでもですね」
「何が悪い」
 ロボットであることがというのだ。
「御前が誰かに迷惑をかけているか」
「ロボットであることでは」
 どうかとだ、ロボは博士に答えた。
「私の見ている限りです」
「ないな」
「はい、特に」
「それならだ」
「別にですか」
「御前がロボットでもだ」
 それでもというのだ。
「何の問題はない」
「そうなのですね」
「そうだ、だから隠すこともだ」
「私がロボットであることもですね」
「疚しいと思うことはない」
「堂々としていればいいのですね」
「そうだ、若し御前がロボットだからだということで文句を言ってくるなら」
 それならというのだ。
「気にするな」
「このことがいいのですね」
「そうだ、気にするな」
 一切と言うのだ、それでロボは誰にも自分がロボットであることは言わないが隠すこともしなかった。
 そしてその彼女にだ、ある日。
 声をかけてくる娘がいた、その娘はこう彼女に言ってきた。
「花渚さんって趣味何なの?」
「オリジナルティーシャツの作成です」
 ロボは彼女に即座に答えた。
「それが趣味です」
「そうなの」
「それが何か」
「いえ、よかったらね」
 オリジナルティーシャツの作成が得意ならとだ、少女は彼女にあらためて話した。
「うちの部活来てくれる?」
「部活ですか」
「そう、うち刺繍部だけれど」
「ティーシャツも作ってるのですか」
「衣装全体やってて」
 それでというのだ。
「ティーシャツも作ってるから」
「私に入部をですね」
「そうしてくれたら嬉しいけれど」
「下手ですが」
 趣味でもとだ、ロボは少女にこのことを断った。
「いいですか」
「いいわよ、下手とかじゃなくて」
「大事なことはですね」
「やる気だから」
 それ故にとだ、少女はロボに話した。
「部活に入ってくれたら」
「それでいいですか」
「ええ、どうかしら」
「少し考えさせて下さい」
 即答はしなかった、ロボはリュックサックの中のコンピューターも使ってそのうえで思考モードに入った。
 それで暫し考えてからだ、ロボは少女に答えた。
「宜しくお願いします」
「それじゃあね」
「刺繍部に入部させてもらいます」
 こうしてだった、ロボは通っている学校の刺繍部に入った。その部活は刺繍も行うがそれでもだった。
 実際にティーシャツも作っていた、ロボは刺繍も出来たが何よりもティーシャツの作成が特によくて。
 何着か作ってみせるとだ、部員達は口々に言った。
「いいじゃない」
「プリントのセンスいいし」
「デザインもいいし」
「色の組み合わせもね」
「全部いいわ」
「これ中々以上よ」
「これはいけてるわ」
 特に彼女に入部を誘った娘が笑顔で言ってきた。
「花渚さん本当にね」
「これでいいのですか」
「部で一番上手よ」
 そこまでだというのだ。
「もう商品になれるわ」
「そこまでとは」
 流石にだ、そこまで言われるとだった。
 ロボも驚いた、そして嬉しくてだ。
 その顔をついつい赤くさせた、それで少女に言った。
「あの、そう言われますと」
「どうしたの?」
「恥ずかしいです」
「いや、本当にね」
 少女はそのロボに当然という顔で述べた。
「上手だから」
「そう言われたのですか」
「そうよ」
 その通りという返事だった。
「だからこれからもね」
「作っていっていいですか」
「どんどん作っていって、刺繍も他のこともいけてるし」
 部の他の活動もというのだ。
「だからね」
「それで、ですか」
「これからもね」
「この部で活動していいですか」
「むしろどんどんいいの作ってね」
 こうロボに言うのだった。
「そうしてね」
「そう言って頂けるなら」
 顔を赤くさせたままでだ、ロボは少女に応えた。
「宜しくお願いします」
「それじゃあね」
 少女はロボに笑顔で応えた、ロボはその少女と部活を通じて仲良くなっていき他の部員達とも親睦を深めていき。
 自分がロボットであることも知られたが。
「何もなかったか」
「はい」
 家で博士にこのことを話した。
「見ればわかるとです」
「それで終わったんだな」
「そうでした」
「そうだな、御前がロボットであることなんてな」
「些細なことですか」
「人間でも屑はいるんだ」
 つまり性格の腐った輩がいるというのだ。
「そんな奴と比べたらな」
「私はですか」
「ずっといいからな、だからな」
「いつもですね」
「言ってるんだ、ロボットであることを隠すな」
 その必要はないというのだ。
「そしてその御前を受け入れてくれている人達はな」
「友達ですね」
「御前はいい友達を持ったな」
 博士はロボに笑顔でこうも言った。
「よかったな」
「そうですね、明日もです」
 ロボは博士の言葉を受けて微笑んで述べた。
「あの娘と。そして皆と」
「一緒にいたいか」
「是非」
 顔を少し赤くさせて微笑んでの言葉だ。
「そうしたいと考えています」
「そうか、ならな」
「明日もですね」
「楽しんでこい、いいな」
「そうさせてもらいます」
 やはり笑顔で言うロボだった、その顔には澄んだ微笑みがあった。そうして次の日も部活を楽しむのだった。友人達と共に。


純情ロボットガール   完


                  2018・10・18

作者の作品一覧 クリエイターページ ツイート 違反報告
{"id":"nov153982941541691","category":["cat0800","cat0006","cat0008","cat0018"],"title":"\u7d14\u60c5\u30ed\u30dc\u30c3\u30c8\u30ac\u30fc\u30eb","copy":"\u3000\u82b1\u6e1a\u30ed\u30dc\u304c\u901a\u3063\u3066\u3044\u308b\u5b66\u6821\u306e\u90e8\u6d3b\u306b\u8a98\u308f\u308c\u3066\u305d\u3053\u304b\u3089\u7d4c\u9a13\u3059\u308b\u3053\u3068\u306f\u3002","color":"#d8ff98"}