毒の裏にある心
 アセビは森に入る人間達には好かれていない、それは彼女が彼等に毒を使った悪戯をするからである。
 しかしアセビ自身は人間達と仲良くしたいと思っている、それで彼女の友人達は彼女にこうアドバイスをした。
「その悪戯止めたらいいのよ」
「要するにね」
「あんた悪戯のせいで嫌われてるの」
「毒も使うし」
「ついついなのよ」
 アセビは彼女に困った顔で話した。
「悪戯してしまうのよ」
「何というかね」
「あんたのその悪戯好きは特別だからね」
「私達妖精の中でも」
「それでなのね」
「無意識のうちに」
 それでというのだ。
「悪戯してしまうのよ」
「そうなのね、けれどね」
「それが問題なのよ」
「あんたのその悪戯好きが」
「根は優しいのに」
「自分でもわかっているの」
 このことはだ。
「けれどね」
「どうしてもよね」
「悪戯をしてしまうのね」
「それも毒を使って」
「そうして」
「殺したり後遺症があることはしなくても」
 悪戯自体は些細な悪戯なのだ。
「それでもよね」
「その悪戯のせいで」
「森に入る人間達から嫌われる」
「それが困りものね」
「悪戯をしない様にするには」
 考える顔で言うアセビだった。
「どうすればいいかしら」
「それね」
「妖精は基本悪戯好きだしね」
「特にあんたは癖になってるから」
「止めたら禁断症状起こるかも」
「そこまでだし」
「本当にどうすればいいのか」
 真剣に悩む顔での言葉だった。
「困ってるわ」
「じゃあね」
 ここで友人の一人がこう提案した。
「もうね」
「もう?」
「人前には出来るだけね」
「出ないことなの」
「暫くね。それで」
 そのうえでというのだ。
「悪戯をする癖をね」
「それをなの」
「なおすべきね」
「そうすればいいの」
「アセビは本当にね」
 その悪戯はというのだ。
「悪戯好きが過ぎてるから」
「それでなのね」
「森の奥にいる隠者さんはね」
 人間ではなく妖精族の隠者である。
「しっかりと修行していて悪戯しないでしょ」
「ええ、あの人は」
「あの人のところに行って」
「どうしたら悪戯をしないで済むか」
「教えてもらって」
 そのうえでというのだ。
「修行をつけてもらえば」
「私もなのね」
「もうね」
 それでというのだ。
「悪戯もね」
「しなくなくなるの」
「そうなるんじゃないかしら」
 こう言うのだった。
「貴女もね」
「それじゃあ」
 アセビはその友人の言葉を受けてだった、そのうえで。
 実際に森の奥の隠者のところに行って相談してから彼のところで悪戯をしない為の方向それは自制心をつけることであると教えてもらってから自制心を身に着ける修行をつけてもらった。そうしているうちに。
 彼女は変わった、かなり落ち着いた性格になった。
 その彼女にだ、隠者は彼の家の中でこう言った。
「もうかなりな」
「自制心ついたの」
「大丈夫だと思う、前と比べれば」
 それこそというのだ。
「別人だ」
「それじゃあ」
「人を見てもだ」
「悪戯をしようって思わないのね」
「昔より遥かにな。むしろ」
「むしろっていうと」
「今の御前は助けたいと思う筈だ」
 悪戯をするよりはというのだ。
「ここで修行だけでなく本も読んだな」
「ええ。貴方の本を」
「そこにある思いやりや優しさについてどう思った」
「こうした心が欲しい」
 アセビは隠者に率直な答えた。
「そうね」
「思ったわ」
「今以上にね」
「御前は元々優しい」
 その根はとだ、隠者が見てもそうなのだ。
「だからな」
「もっと優しさを欲しいと思って」
「優しくなるとな」
 今以上にというのだ。
「悪戯心をだ」
「減ったそれを」
「抑えてくれる、困っている人を見れば」
 森の中でだ。
「助けたいと思えば」
「それでなの」
「御前は嫌われなくなる」
 こうアセビに話した。
「そうなる筈だ」
「それじゃあ」
「そうだ、これからはな」
「自分を抑えられるし」
「御前の優しい心を前に出してな」
 そのうえでというのだ。
「森に来る人間達に接することだ」
「わかったわ」
 確かな声でだ、アセビは隠者の言葉に頷いた、そうしてだった。
 アセビは実際に森に入って道に迷っている人がいれば正しい道を教えたり獣が近くにいると避ける方法を教えてだった。
 彼等を助けていった、そうしてだった。
 何時しか森の人気者人間達から見てもそうなっていた。それでこう言った。
「変われば変わるものね」
「悪戯者で嫌われていたのに」
「それがよね」
 友人達も彼女に応えて話した。
「今じゃね」
「あの人達からも人気で」
「感謝もされて」
「随分変わったわね」
「本当に」
「その変り方が」 
 まさにというのだ。
「私自身驚いてるわ」
「そうよね」
「けれど実際のことだしね」
「今のアセビが人気があるのは」
「森に入る人達からそうなのはね」
「あれね。悪戯をしないで」
 それでというのだ。
「親切にしたら」
「アセビの悪いところを抑えていいところを出した」
「それで人気者になったわね」
「そうね。じゃあこれからは」
 アセビ自身も言った。
「悪戯はしないで」
「もっと親切にしていく」
「そうしていくのね」
「これからも」
「そうしていくわ。その方が気持ちがいいから」
 好かれてというのだ、それでだった。
 アセビはもう悪戯はしなくなった、その代わりに親切にしていった森の人気者であり続けた。今の彼女を嫌う者は誰もいなかった。


毒の裏にある心   完


                 2018・10・19

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