かえって減って
東雲梓は最近悩みがあった、それでその悩みを友人達に打ち明けた。
「体重増えたのよ」
「あれっ、そうなの?」
「スタイル変わってないけれど」
「そうなったの?」
「そうなの。昨日体重計ったらね」
どうだったかをだ、友人達にいささか沈んだ顔で話した。
「先月より二キロ増えたの」
「ああ、二キロね」
「それは結構以上ね」
「それじゃあね」
「太ったって言えるわね」
「どうしたものかしら」
その太った分をとだ、困った顔で言う梓だった。
「本当に」
「その場合答えは一つでしょ」
「ダイエットしかないでしょ」
「太ったならね」
「その時は」
「やっぱりそうよね。秋だから食べたら」
特に好きなお菓子をだ。
「それじゃあね」
「太ったのね」
「お約束の展開ね」
「じゃあダイエットもお約束の展開ね」
「そうなるわね」
「そうよね、これから毎朝走って」
ダイエットの一環としてジョギングをするというのだ。
「水泳もして」
「まずは身体を動かすことよ」
「そうしたら痩せるわよ」
「二キロ位じゃすぐじゃない?」
「すぐに痩せるでしょ」
「そうよね。二キロ位だと」
そしてとだ、また言った梓だった。
「痩せるわね」
「じゃあ頑張ってね」
「あとお菓子も控えてね」
「糖分も当然よくないから」
「そっちもよ」
「ええ、そっちもやっていくわ」
梓もわかっていた、それでだった。
早速ダイエットに入った、ジョギングに水泳に励みお菓子を食べることも量を減らした。すると次の月に体重を計った時に。
「えっ、二キロ減るどころかなの」
「さらに減ったの」
「合わせて四キロ?」
「そんなに減ったの」
「そうなの」
自分でこのことを言うのだった。
「これがね」
「よかったじゃない」
「かえって減るなんて」
「これっていい展開じゃない」
「前よりかえって痩せるとか」
「梓も満足してるでしょ」
「いや、これがね」
友人達にだ、梓はどうかという顔で答えた。
「よくないでしょ」
「何でよ」
「体重減ったんでしょ」
「それも二キロも」
「これっていいじゃない」
「違うの?」
「何か最近ね」
そのかえって体重が減ってというのだ。
「体力ない感じするのよ」
「ああ、体重減るとね」
「それと一緒に体力落ちるわよね」
「人間痩せ過ぎもよくないっていうけれど」
「それ実際にあるから」
「そう、だからね」
それでと言うのだった。
「私今それで困ってるのよ」
「体力が落ちて」
「それで」
「運動で体力ついたと思ったら」
それがというのだ。
「かえってね、二キロ減った分だけ」
「じゃあ太る?」
「今度はそうするの?」
「二キロ太るの」
「そうしたいの」
「だから運動は続けようと思ってるけれど」
ダイエットをはじめたついでにだ、体重が増えるのも嫌なのでそれでそれは続けるというのである。
「食べることはね」
「増やすのね」
「前みたいにするの」
「そうしたいの」
「ええ、お菓子も食べて」
好きなそれをだ。
「勿論他のものも食べるけれど」
「それでもなのね」
「しっかりと食べて」
「それでなの」
「体力戻すのね」
「そうするわ」
絶対にと言ってだ、実際にだった。
梓は食事は戻した、すると次の月には体重は彼女の標準のものになった。それでまたしても友人達に言ったが今度は笑顔で言えた。
「二キロ増えてね」
「体力戻ったのね」
「そうなったのね」
「そうなの。私の標準体重に戻って」
それでというのだ。
「体力もね」
「戻った」
「完全にそうなったのね」
「ええ。やっぱりあれよね」
こうも言った梓だった。
「人間太り過ぎもよくないけれど」
「痩せ過ぎもよくない」
「そっちもかえって」
「そうなのね」
「それがわかったわ」
まさに身を以てだった。
「二キロのプラスマイナスって小さい様でね」
「結構それがわかるのね」
「そうしたことが」
「太るとやっぱり色々出るしね」
「身体が変わるわ」
肥満が顔やスタイルに出て余計な肉がついて動きが鈍くなる、もっと言えば健康にも影響を与えてしまう。
しかしだとだ、友人達はさらに話した。
「痩せ過ぎもね」
「やっぱり身体が変わるわね」
こちらはこちらで顔やスタイルに出る、そしてやはり健康にも影響を与えてしまうのだ。太る場合と同じく。
「梓の言う通り体力もなくなって」
「かえってよくないわね」
「私昔ね」
ここでこうもだ、梓は友人達に話した。
「痩せれば痩せる程いい」
「そう考えてたのね」
「昔は」
「そうだったのね」
「お菓子の魅力に負けて痩せられなかったけれど」
それでもというのだ。
「今回ダイエットしてわかったわ」
「お菓子も我慢して運動したら」
「それでよね」
「身体も痩せて」
「それでよね」
「そう、体力が落ちて」
このことを実感してというのだ。
「よくわかったよ」
「そういうことね」
「人間痩せても駄目」
「太っても駄目で」
「そこはバランスね」
「標準がいいってことね」
「それがわかったわ、人間ってね」
まさにとだ、梓も言った。
「どっちもよくないのよ、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「いや、太ってるからどうかって言う人が太ったら」
その場合はというと。
「どう思うかしらね」
「自分もそうなったら」
「その時は」
「他人をデブって言って自分が太ったら」
その時はというのだ。
「どうなるかしらね」
「何も言えないでしょ」
「その時は」
「自分もそうなったらね」
「そうよね、じゃあそういうことは言うものじゃないわね」
梓は今回のダイエットからもそうしたことがわかったのだ。
「やっぱり」
「あと太ってて痩せてから太ってる人けなす人とかね」
「そういうのもよくないわよね」
「昔の自分をけなすみたいで」
「それも嫌よね」
「そう思ったら」
梓は彼女にしてはやや珍しいことにこう言った。
「太り過ぎ、痩せ過ぎもよくないけれど」
「そうしたことを他の人に言うこともね」
「よくないわね」
「自分もなるかも知れないし」
「気にしている人もいるからね」
「そこは気をつけないとね」
梓は友人達に考える顔で言った、そしてだった。
運動を続けそうして食事も楽しんだ。そうして彼女の標準体重を守った。すると非常に健康で快適な生活を送ることが出来た。
かえって減って 完
2018・10・21
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